第3章・第4章:ユヴラジ ― リアクター強奪作戦
時の線が壊れ、衝突し、絡み合う世界――混沌は敵ではない。
それこそが物語だ。
『マルチバース:ザ・ストーリー・オブ・カオス』は、無限の自分、砕けた記憶、そして選びきれない決断たちの物語。
これは英雄譚ではない。
これは壊れた現実を彷徨う旅だ。
宇宙の壁が崩れ落ちる時、一人の男が前に出る。
救い主となるためではなく、後悔をやり直すために。
混沌を止めるのではなく、それを理解するために。
狂気が科学となり、時間が不安定で、運命が危険な神話となる物語へようこそ。
マルチバースへ、ようこそ。
―― ダークロード・ユヴラジ
第3章・第4章:ユヴラジ ― リアクター強奪作戦
場所:アメリカ・ニューヨーク、マンハッタン → ドイツ・ミュンヘン → ロシア・カムチャツカ半島
マンハッタンの軍事基地の入口は、あまりにも静かだった。
夜の帳に隠れながら、"時のファントム"とささやかれる寡黙な戦士・ユヴラジは、側面のアクセスゲートから中へ足を踏み入れた。
その後ろを、狂気を纏う天才科学者——通称マッドサイエンティスト・ミーが追う。焦げた白衣、ひび割れたネオンのような眼をしていた。
「なあ、ロボットが原子炉と別れた理由、知ってるか? メルトダウンが怖かったんだってさ!」
彼はくすくすと笑いをこらえながら囁いた。
ユヴラジは冷めた目を向ける。
「……今のが笑うところか?」
彼らは影に紛れて廊下を進み、ロックを解除し、警報を静かに無効化していった。
やがてユヴラジは古びたファイルに手を伸ばす。それを開いた瞬間、時間が歪んだ。
中には5人の人物が写った写真があった。男4人、女1人。だが、その顔はぼやけ、現実が彼らの存在を拒絶しているかのようだった。
彼の脳裏に、何かが引っかかった。記憶にないはずの“記憶”。
――眩暈。
膝が崩れ、世界が傾いた。
警報が鳴り響く。
侵入がバレた。
兵士たちが雪崩のように基地へ殺到。
マッドサイエンティストが彼を引こうとするが、ユヴラジは意識を保てず、思考がブラックアウトしていた。
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彼が目を覚ましたのは、ドイツ・ミュンヘンの冷たい尋問室。
鎖に繋がれ、隣には例の科学者が戦時中の歌を鼻歌で歌っていた。
鋼鉄の扉が開き、将校が4人の兵士を連れて入ってきた。
「お前の兄か? 見た目は似てるが……そっちは筋肉と狂気のかたまりだな。」
ユヴラジは何も答えなかった。
ただ鋭く周囲を観察する。その息は静かで、視線は鋭かった。
彼らが立ち去ろうとした瞬間、ユヴラジは体重を移動させ、拳を握る。
――ガチャン。
武術による身体制御だけで、鎖を破った。
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脱出は、残酷でありながらも美しかった。
彼の一撃一撃は正確無比。アラームがまた鳴り響く。
科学者は狂ったように笑いながら走り、彼らはついに核心部——リアクター室へと到達する。
そこには、青白い光を放つネクサス・リアクターが存在していた。
軍はこれをただの動力源と認識していた。だが、ユヴラジには分かっていた。
これは時間線を書き換える“点火キー”だ。
その瞬間、特殊部隊が突入してきた。
激しい戦闘が勃発。
ユヴラジはまさにファントムのように動き、避け、打ち、敵を無力化していく。
科学者は煙幕弾を投げ、戦闘中にドアをハッキングしてサポート。
警報が最上級に達した時、科学者が叫んだ。
「やっべぇ!今の、最高だったぞ、タイム・ファントム!」
「……少し腕が鈍ったかもしれんな。」
装備を回収し、失われた物を取り戻すと、彼らは携帯型マルチバース・ポータルを起動する。
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閃光。
次に彼らが現れたのは、ロシア・カムチャツカ半島の凍てつく荒野だった。
雪が足元で砕ける。遠くには火山が連なり、かつてソ連軍の秘密実験施設だった地下バンカーがその中に眠っている。
科学者は迷わず、保管庫と端末へと走った。
ユヴラジは背後を見据え、こう呟いた。
「旅の準備をしろ……長くなるぞ。」
過去は歪み、未来は崩れ始めていた。
マルチバースが、今、破られた。
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――続く――
© 2025 ダークロード・ユヴラジ(Darklord Yuvraj)
無断転載・複製を禁ずる。全著作権所有。
親愛なる読者へ、
静かな潜入が、時間そのものとの戦いへと変わりました。
ユヴラジ――時のファントムは、兵士や警報だけでなく、彼の心を引き裂こうとする「思い出せない記憶」にも直面します。
彼の隣には、狂気の笑みと天才の頭脳を持つ“あの男”。
このエピソードは、アクション、謎、そして決して思い出してはならない記憶との葛藤に満ちています。
強奪劇は、ほんの始まりにすぎません。
今、マルチバース全体が燃え始めています。
狂気の旅に付き合ってくれてありがとう。
カムチャッカの風は、ただの雪ではありません――
それは、嵐の前触れです。
―― ダークロード・ユヴラジ