第1章:9033KTの影
時空を越えるカオスな物語が、今ここから始まる。
謎の科学者ユヴラジと、闇に包まれた戦士——
二人の出会いが、すべての運命を変える。
アーク1 – ユニバース9033KT
第1章:9033KTの影
場所:ドイツ・ミュンヘン
崩壊寸前の雨に濡れたユニバース。雷雲の下で腐敗するネオン都市、冷たいコンクリートの中に埋もれた秘密。
朽ち果てた高層ビルとデジタル幻影の裏に存在する、地図には載っていない三階建ての歪んだ建物。錆びた金属と回収された技術で組み立てられた私設ラボが、奇妙なエネルギーを放ちながら唸っていた。
その中にいたのは裸足の男。ゴーグルをかけ、誰も知らないジョークのオチを知っているかのようにニヤリと笑っていた。
ユヴラジ博士。
あるいは、彼自身が名乗った――クロノロード・ユヴラジ。
「タイムループの破壊者」「官僚主義の粉砕者」「無限渦動の使い手」。
妄想狂か? たぶん。
天才か? 間違いない。
黒髪は重力を無視したように逆立ち、インクと溶けた回路の粒が混ざる。割れたレンズの奥で黄金の目が燃えていた。彼はホログラムに浮かぶ歯車とマルチバースノードを微調整していた。
「よし…バージョン7のクロノエッグなら、パラドックスの反動0.05%に耐えられるはずだ…。つまり破壊されるタイムラインは一つか二つ。許容範囲、フフ…完璧だ。」
ボロボロの白衣のポケットから彼が取り出したのは――チョコバー。
「報酬タイムだな。」
ガアアアアアアアンッ――
空が裂けた。
サイレンが鳴り響き、スポットライトが窓を照らす――まるで審判の日のように。
彼は一瞬止まり、そして――笑った。
「来たな…組織が。」
ドアが爆発した。
黒いアーマーに身を包んだ兵士たちがラボに突入する。
「両手を挙げろ! 次元操作の違法行為で逮捕する!」
ユヴラジは両手を大げさに上げた。
「フハハ! 闇の番犬どもがついに牙を剥いたか。しかしもう遅い! 私のバックアップ人格は“禁断クラウド”にすでにアップロード済みだ!」
――そして三秒後、スタンバトンの電撃により地面に転がっていた。
---
その頃、近くのビルの屋上では一人の男が見下ろしていた。
黒いマントに包まれ、嵐の中に佇む影。未来技術で編まれたアーマーの下、筋肉が鋭く引き締まり、フードの下の目が光る。冷静で計算された視線。
彼は――科学者を救いに来た。
---
牢獄は地下に作られていた。暗く、反響し、残酷な空間。
取調室でユヴラジは手錠をかけられ、あざだらけになりながらも涼しい顔で座っていた。
「フフ…これが終焉か。エントロピーに裏切られたが…まだ敗れてはいない。」
彼は前のめりになって囁いた。
「この匂い、感じるか? 時間が解けていく匂いだ。」
「こいつは狂ってるな」と兵士。
「違うね」とユヴラジはニヤリ。
「私は目覚めている唯一の存在さ。宇宙のタペストリーを見た。歯ブラシの魂のバックアップと会話した。君たちの直線的な脳じゃ理解できな――」
ドスッ!
腹に一発食らい、黙った。
兵士たちが距離を取る。
――その瞬間、廊下の照明がチカチカと揺れ、全てが暗くなる。
静かに現れる影一つ。無音。冷徹。危険。
兵士たちは銃を向けるが――遅すぎた。
一人、また一人と倒れていく。
青い閃光、物理法則を無視する動き。
黒マントの男が現れた。
手に持つ武器が低く唸る。
彼は科学者を見つめる。
ユヴラジは目を見開いた。
「…うわ。俺、死んだのか? それとも…これは、俺自身か?」
黒マントの男は手首の一振りで手錠を斬った。
「立て。」
「マジでかっこいい…!」科学者がつぶやく。
「やっぱり自分の中にクールなバージョンが隠れてたんだ! もしかして、未来で忍者オーバーロードになって、サイボーグの腕つけてる俺?」
黒マントはただ言った。
「時間がない。行くぞ。」
燃える廊下を二人で駆け抜ける。
ユヴラジは笑い続けた。狂人のように。
---
外は再び雨。ヘリが空を照らす。
黒マントの男が手首のボタンを押すと、紫の雷が空間を裂くポータルが出現。
科学者はその縁で立ち止まる。
「…自分に助けられるのってもっと変な気分になるかと思ったけど…いや、これはこれで…感動的だな。」
黒マントは振り返り、フードを下ろす。
黄金の目が、黄金の目と交差する。
「…全員が狂ってるわけじゃない。」男が言った。
科学者はクスリと笑う。
「自分のこと言ってるのか? タイムファントムさん。」
二人はポータルへと飛び込んだ。
――消えた。
---
――つづく。
© 2025 ダークロード・ユヴラジ。All Rights Reserved.
「Multiverse: The Story of Chaos」は、ダークロード・ユヴラジによる完全オリジナル作品です。
登場人物、世界観、出来事すべての著作権は作者に帰属します。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
この物語は多元宇宙を舞台にした、混沌と運命の冒険です。
次回もぜひお楽しみに!感想や応援、待ってます!