作文
「じゃぁ咲ちゃん気をつけてね。」
「うん、あきちゃん広美さん、じゃぁね。」
2人に手を振って広美さんの家を出る。買ってもらったばかりのランドセルの少し重い感覚が背中にある。自分で選んだ、お兄ちゃんたちがいっしょうけんめいに働いたお金で買った、だれかのお下がりの黒いランドセル。新しいランドセルじゃないけど、私はとてもうれしかった。
「ただいま。」
家に帰るともう明かりがついていておいしそうなにおいがしている。
「咲ちゃん、おかえり。」
響お兄ちゃんがリビングから出てくる。慶人お兄ちゃんはまだバイトらしい。
教科書を入れ変えて明日の用意をしておふろに入っていると慶人お兄ちゃんも帰ってきた。3人でイスにすわって夜ごはんを食べる。お母さんたちの家の時はプロの人が作ってくれていたけれど、お兄ちゃんたちの作るご飯もおいしい。私もいっしょに作ったときはもっとおいしい。
食べ終わったらお皿を洗ってテレビを見る。まずはいつもの時間のニュース。分からないことも多いけど、お兄ちゃんたちが教えてくれる。その後に好きなクイズ番組やドラマ、アニメ。私の見たいテレビをお兄ちゃんたちも見てくれる。
眠くなったらたたみの部屋で自分のふとんを広げてねる。お兄ちゃんたちのふとんより少し小さい私のためのふとんだ。まいにちシーツを出して、お兄ちゃんたちが洗ってくれる。洗いたてで気持ちいい。
「はるちゃんおはよう。」
慶人お兄ちゃんといっしょに朝ごはんを作って3人で食べたら私は学校だ。あきちゃんと、他にも家が近い友だちといっしょに歩いて行く。少し遠いけどおしゃべりしていたらすぐだ。
先生と友だちにあいさつをしておべんきょうが始まる。学校はまだ始まったばかりで文字をかいたり、1から100まで数えたりかんたんなべんきょうをする。私はあきちゃんのお兄ちゃんやお兄ちゃんたちにいろいろ教えてもらっているからかんたんだ。
「それじゃぁ、これは宿題にします。来週までに先生に出してください。」
先生が終わりの会で明日の時間割としゅくだいを言う。今日のしゅくだいはドリルと日記。来週までに調べて出すプリントが1枚。
みんなであいさつをして、私はあきちゃんの机に行く。
「さきちゃん、いこうか。」
帰りは他の子は学童で私とあきちゃんだけで帰る。
あきちゃんの家はお料理のお店でとってもおいしい。お休みの日はいつもここでお昼ごはんを食べる。
「ねぇさきちゃん。こくごのしゅくだいどうするの。」
あきちゃんの家についたらまずはしゅくだいをする。私はいつも30分くらいで終わって、あきちゃんはもう少しかかる。
あきちゃんのとなりであきちゃんが終わるのを待っていると、あきちゃんがそう言う。
「もうおわった。」
こくごの時間でしゅくだいはもう終わっている。
「あれ、今日はどんな宿題があったの。」
服を洗い終わった広美さんがリビングに入ってくる。
「あのね、じぶんのなまえのいみをしらべるんだって。」
あきちゃんはお家ではよくしゃべる。
「うん、ありがとう。これでかけるよ。」
自分の名前のいみを知って咲ちゃんはうれしそうにプリントを書いている。
「ねぇ、さきちゃんは。さきちゃんのなまえはどんないみ?」
「えっと、発表のときまでないしょ。」
このプリントは来週のじゅぎょうさんかんで発表する。そのときまでナイショだと言ったら分かってくれた。
あきちゃんのしゅくだいが終わったころにあきちゃんのお兄ちゃんも帰ってきていっしょに遊ぶ。そして夕方になったら帰る。
「それじゃぁ名前の順番で発表してください。」
先生が黒板の前に立ち、1人ずつ名前を呼んでみんな発表する。
今日はじゅぎょうさんかんだ。教室の後ろにはみんなのお母さんやお父さんがいる。その中で1番お兄ちゃんたちが目立っている。
だれのお兄ちゃんかなとみんなソワソワ後ろを見ている。私もうれしくなってソワソワしていると名前が呼ばれる。
返事をして立って、1度だけお兄ちゃんの方を見る。
「私の名前は、私のいとこの一樹お兄ちゃんがつけてくれました。さくらの花のようにいつも笑顔でいてくれますように、という意味があります。」
プリントを読むとはくしゅが返ってきて座る。他のみんなも順番に読んでいる。みんなそれぞれいろんな意味の名前を持っている。
先生の言葉で6時間目が終わり帰りの会がある。その間お兄ちゃんたちは待っていて今日だけはいっしょに帰る。
「名前の意味、なんで知ってたの。」
慶人お兄ちゃんがそういう。
「一樹お兄ちゃんが教えてくれたの。」
よく一樹お兄ちゃんがいろいろ教えてくれた。慶人お兄ちゃんのこともよくしゃべっていた。私はその時間が楽しかった。できればまた会いたいけど、今はお兄ちゃんたちとの時間も楽しい。
「そっか。」
慶人お兄ちゃんがそううなずく。
お兄ちゃんたちの笑顔を見て私もうれしくなる。
おにいちゃんたちは私のために色々とがんばってくれている。お母さんたちと会えない私のためにお兄ちゃんたちはこうやって学校に来てくれている。
できないことも多いけど、今はいつかのために色々習っていたい。