リアル異世界の僧侶の実態【短編】
短編を書いて見たっす。
長編に出てくる、何処かの誰かの半生っす。
俺は、僧侶。
とある宗教の、とある宗派の神職である。
異常なまでに強い魔王が、世界を破滅に導いている時代でもなければ、
世界はそこそこ安定している。
魔族領と人類領に住み分け、その2つの地域の緩衝地帯としてある、
どちらの領地でも無いグレーゾーンの奪い合いが、
魔族と人類の間で行われている、それが普通の時代なのだ。
そんな、平和?な、普通の安定した時代に、
代々、宗教関係の家に生まれた俺は、
周りの勧めもあり、親や親族のツテを頼って、神職に就いた。
まぁ、神職は、人気の楽な仕事と言って良い。
僧侶などと言う者は、PTにおける回復と防御支援がメインの仕事。
前衛の後ろで、PTが崩壊しない様に見守るのが仕事だ。
極まれに、不浄な物が多く出るダンジョンなんかでは、
浄化攻撃が頼られる事もあるようだがね。
それにだ。
俺達神職者は、ダンジョンに潜って生活せねばならぬ訳じゃない。
ある程度レベルが上がれば、ダンジョン等で命を張って稼ぐ必要は無い。
毎日回復するMPを使って、聖水を作り売るのはもちろん、
町の治療師として治療院を経営しても、雇われてもいい。
神職者は気楽な家業と来たもんだ♪w
しかしそれさえも、神職者としては、下流。
我が家の様に、代々神職に就けるような家柄と言うのは、
貴族とほぼ変わらないのだ。
しかも、俺の生まれた国は、神聖国。
我が宗教、我が血族が支配する国である。
神も、無限に神職者を受け入れると言う訳にも、いかんのだろう。
神職に就くには、神の受け入れる枠に、空きが無ければなれない。
その枠を独占し管理するのが、貴族的神職者の血縁と言う訳だ。
代々神職を生業とする家に生まれた俺は、貴族的神職者の一員だ。
成人すると俺は、親族のツテを頼り、神職に就いた。
神職に就いただけで、親や親族の世話になり、
食って行く事も可能は可能だが、
最低限レベル上げをし、
自分で食って行ける程度になるのが普通のコースだった。
俺も、普通に最低限のレベル上げをする事となった。
俺達貴族的な神職者が行う、普通のコース、レベル上げと言うのは、
ツテのある実力派の冒険者クランに、レベル上げを依頼すると言うものである。
簡単に言えば、高レベル冒険者の後ろに付いて、ダンジョンに潜り、
後ろで何もせずに、魔物が倒されるのを眺める。
レベルが上がり、出来る様になれば、
前衛の一人に防御魔法を掛けてやる、その程度の事だ。
冒険者クランの方にも、これは悪い話ではない。
下流も下流、一生冒険者として前線に立つ、
教会の孤児院上がりの親無し神職を、冒険者クランに派遣するのだから。
孤児院上がりの神職者には、酷い話と思うかも知れないが、そんな事は無い。
孤児院で世話をしなければ、そんな親無しは、とっくにくたばっていたのだ。
幼き頃から世話をして、神職に就けてやり、
世の為人の為に働く神職者として、我々が道を準備してやったのだ。
文句を言うどころか、感謝して当たり前と言うものだろう。
ダンジョンのある地方に赴き、半年ほども冒険者の後ろについていけば、
何もせずともレベルは上がった。
俺は、高レベル冒険者達によって、中堅冒険者程度。
親や親族と同じ位のレベル。
まぁ何処に出ても、恥かしくないレベルとなったのだ。
その間、何度か魔物から攻撃をされ、手傷を負った。
冒険者達の働きが、悪かったのだ。
親族の話では、後衛たる俺達を守り切れぬ、
下手な冒険者も居るとの話だったが、まさにその通りだった。
特に、獣人共の態度は良くなかった。
獣人は下賎であると、子供の頃から知っては居たが、
獣人の冒険者どもは、下賎を通り越して、魔物に近いものどもである。
それでも、俺は我慢をし、レベル上げをやり遂げた。
俺は、地元に戻ると、両親や親族に連れられ、貴族的な集りに顔を出し、
近隣の地方を巡り、俺も成人し神職として一人前であると、挨拶して回った。
俺は、神職を生業とする血族の一員として、正式に認められたのだ。
それが終わるとしばらく、実家の治療院で、治療をしたり聖水を作って暮らす。
生まれ故郷は、首都に近い訳でもないが、魔物が出る地方でも無い。
のんびりとした、地方都市での生活だ。
数年そんな暮らしをしている俺に、
血族の有力者の娘との、縁組の話が舞い込んだ。
領主は神職者ではないが血族であり、地方領主の一人娘との縁談だ。
治める地方は、獣人国と接する田舎ではあるが、
領主ともなれば、出世である。
俺は、この話に飛びついた。
両親も親族も、喜んでくれた。
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私は、その地方領主の一人娘と結婚し、
神職の枠を空ける為、神職を辞し、血族に枠を返した。
そして次期領主として、領地に住み、領主の下で働いたのである。
世に知られてはならぬ、汚れ仕事もこなした。
そんな時は、血族ではあるが、下級の者共を使う。
神職にも就けず、かと言って、俗に落ちるでも無い下級な者は、
国の中枢をなす、我ら神職の血族にすがり、国の騎士団に巣食っている。
何が攻めて来るでも無い、平和な時代の騎士団など、こんなものだ。
私は、騎士団を上手く使い、政治の世界で上手く立ち回った。
私には、夢があった。
我が神聖なる国から、下賎なる獣人共を排除すると言う夢だ。
地理的に、獣人国に隣接する我が領地には、獣人共が出入りしていた。
私には、それが許せなかった。
親父殿とその件では、意見が合わなかったが、何も焦る必要は無い。
そう、親父殿は高齢だ、時を待てば良いのだ。
・・・そして親父殿は亡くなった。
私が何をしたでも無い、ただ時が過ぎ、機が熟しただけの話だ。
私は親父殿の葬儀を済ませ、地方領主となった。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
他の人の半生も書いてみようかな?w