表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/46

6話 なぜか人気者に

「ちょっとお前はここで待ってろ」


 品種改良BOXにそう言うと、玄関の扉を開いて中へと入っていった。

 正直、母親になんて言うか決めかねている。

 宇宙人の話をするか、ただ拾っただけと言うか、それとも、このまま内緒にしておくか。


 現物を見せれば、本当のことを言っても信じてくれそうな気はしている。

 ここまで人の言葉に応対できるロボットは、まだ地球では開発されていないし。

 でもなあ。さすがにタコ星人はなあ……。


「ただいま~」


 そう俺が声をかけると、ドタドタドタと走ってくる音が聞こえた。

 慌てている感じである。

 そりゃまあ心配してるだろう。大丈夫だと電話でいちおう伝えてはいるけれども。


 ――あれ? でもなんか変だな?

 母親らしくないというか、足音が若いというか……。


「ミノルくん!」


 客間の障子が開いて姿を見せたのは、金髪の若い女だった。

 歳は十代なかばぐらい。ジャージを着て髪を後ろでまとめている。

 だれだ?

 いや、見覚えあるぞ。

 面影にというか、なんというか……。


「もしかして、マイちゃんか」

「そうだよ、久しぶりだね」


 びっくりした。マイちゃんはメチャメチャ可愛くなっていた。

 いっしょに遊んでいたのは、かれこれ十年前ぐらいか。

 彼女がまだ六歳のころだ。

 中学生のころに何度か挨拶したことがあるけど、反抗期らしくてあんまり顔見せなかったんだよな。

 金髪になってるから、まだ反抗期は終わってないかもだけど……。

 

「あの音を聞いて家に来たんだよ」


 マイちゃんの後ろから、母がひょっこり顔を出した。


「けっこう大きな音だったからね。マイちゃんの家まで聞こえてたみたい。それで心配してくれてさ」


 あ、なるほどね。


「結構うちには来てくれてるんだよ。東京へ行ったアンタのことも興味あるみたいでさ、こうして待っててくれたんだよ」

「え、ちょっとやめてよ。あの音がなんだったか、わたしも気になっただけだよ」


 母の言葉に対しマイちゃんは顔を赤らめて否定していた。

 うわっ、なにこれ。スゲー可愛いんですけど。

 これはひょっとして、ひょっとするのか?


 お互い無言になり、変な空気が流れる。

 ――が、その静寂をやぶって、誰かが声をだした。


「へ~、これがワカメ星人のメスなんですね」


 この声は。


「あ、どうも初めまして。品種改良BOXと申します」


 振り返ると、そこにいたのは、外で待っているハズの品種改良BOXだった。




――――――




「カワイイ~」


 チンチクリンの品種改良BOXを見て、マイちゃんがカワイイを連発している。

 ムカつく。なんかわからないけど、無性に腹が立つ。


「ええ、よく言われるんですよ。カッコイイ系じゃなくて、カワイイ系だねってね」

「ナニソレ、ウケる~」


 褒められてまんざらでもなさそうな品種改良BOXだ。

 そして、それの何が面白いのか俺には理解できない。


「ね、ね、もう一回やって。箱がプシューって割れるやつ」

「いや~、それがムリなんですよ。私に命令できるのは、最初に起動した人だけなんです」


 なんか勝手に盛り上がっている。

 一瞬で主役の座を奪われてしまった。

 なんてやつだ。この品種改良BOXは。


「え~、ケチ」

「すみません、規則でして」


 なんか楽しそうだな、おい!


「じゃあ、お願いは? 命令じゃなくて、ただのお願い。ね、いいでしょ。もっと見たいの」

「ふ~む、まあ、お願いということでしたら、規則には引っかからないですねえ」


 いいのかよ!

 コンプライアンス、ガバガバだな!!


「ねえ、ミノル。あれなんなの?」


 俺と同じく置いてけぼりになっていた母が俺に尋ねてきた。


「それがさ、落ちてきたのは隕石だって言ったけど、本当はUFOだったんだ」

「え!!」


「で、なんか積み荷を一個置いていってさ。それが、あのヘンテコリンなメカだったわけ」

「……ミノル、あんた大丈夫?」


 母は悲しそうな顔で俺を見る。


「いや、マジだって。そうじゃなきゃ、あんなメカなんて持って帰れるわけないじゃん」

「ん~、そう? 最近技術の発達すごいし……」


「いやいや、そんなレベルじゃないでしょ。あんな流暢(りゅうちょう)に喋る機械なんて、いまの技術じゃ不可能だって」

「そうかい?」


 だめだ。母親は機械にうとい。

 ぜんぜんピンときてないよ。


「とにかくホントだって」

「ん~、まあミノルがそう言うなら」


 とりあえずは納得してくれたようだ。

 逆に俺は、まったく納得してないが。


 おかしいな。なんで俺がこんな苦労をせにゃならんのか。

 会社でコキ使われて、宇宙人にもコキ使われて、本当のことを言っても信じてもらえない、モテ期がくると思った瞬間奪われる。

 いいことねえなあ。ほんとに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ