43話 問い詰める
ショーグンはこうなることを知っていたのか?
だから、シェルターを作ることにこだわっていたんじゃないのか?
そうだ。考えれば行動がおかしかった。
発電機を欲しがったり、工具をそろえようとしたり。
どれも隕石が墜落すると仮定した行動ばかりじゃないか。
あのヤロウ。問い詰めてやる。
車を走らせると、自宅へと向かう。
やがて家へと到着。庭や畑には、ショーグンの姿は見えない。
どこにいやがる。
家の中か?
そっと玄関の扉を開く。
「オペレーション、ショーグン。コンプリート!!」
なにやら聞こえた。
居間の方だ。
ガラリと障子を開けると、テレビの前にチョコンと座るショーグンがいた。
「ここにいやがったか、ショーグン」
「あ、旦那様。ちょうどよかっ――」
ツカツカっと歩いていくと、ショーグンの頭をコブシではさんで、グリグリした。
「アダダダダダ!」
「オペレーション、ショーグンてなんだよ! おまえ、なにを企んでるんだ!!」
さては、おまえ宇宙人から指令を受けていたな。今のセリフが動かぬ証拠だぞ!
「イタイイタイイタイ。なんですか企んでるって? なんのことかわかりません!!」
ショーグンはなにやらトボけている。
コノヤロウ。この期におよんでシラを切ろうというのか。
「隕石が墜落することを知っていただろ、おまえ!」
「いやまあ、知っていたというか、さっき知ったというか……」
やっぱりか!
さらに頭をグリグリする。
「イタタタ。やめてください! わたしにも痛覚があるんですよ」
知ってるよ。だからグリグリやってるんだよ。
ムダ機能満載のおまえだからな。
「だったら吐け、ぜんぶ吐いちまえ」
「いたい、いたい、いたい。そんなことしなくても、いま言おうと……」
ここでやっと、ショーグンの頭からコブシを離した。
よろしい。
言うというのならば、聞いてやろうじゃないか。
納得のいく内容でなければ、またグリグリしてやるけどな!
「よし、話せ!」
「わかりましたよ。もう、乱暴だなぁ。実はですね……」
――――――
ショーグンから、ことのあらましを聞いた。
にわかに信じがたいが、いちおう辻褄は合っている。
まったく。言うのが遅せえんだよ。
こういうのは問い詰められてからでは、言い逃れにしか聞こえなくなるからな。
まあ、いい。
いくつか気になることもあるしな。
ちょっと、質問してみるか。
「で、その緊急回路とやらはいつ開いたんだ?」
ショーグンがここを境に変わったって印象がないんだよね。
そんなスゲー回路なら、解放された瞬間にわかりそうなものなのに。
「テレビを見ていた時ですね。ワカメ星人のオスが二人、宇宙人について話していて……」
なるほど。あそこか。
たしか漫才だったか、宇宙人のネタをやっていた。
考えてみれば俺がSNSについて気にし始めた切っ掛けでもある。
納得といえば納得か。
でも、ショーグンはそこから変わったか?
そんな感じしなかったけどな。
もう少しつっこんで聞いてみるか。
「でも緊急回路が解放されたにしては、アホのまんまじゃない?」
「辛辣ぅ! やめてくださいそういう風に言うの。言ったじゃないですか、回路もデーターも損傷してて、取り出せなかったって」
うん、たしかに言ってたね。
「じゃあ、知能はこれまで通りってこと?」
なんか残念のような、変わらずで安心のような……。
「いちおう、賢くなってますよ。迂回するよう設計された回路は解放されましたし」
ふ~ん。言われてみれば確かにレスポンスが良くなっているような気がしなくもない。
そういや、ちょうど学習して作業効率なんかも良くなっていると思っていたしなあ。
学習したからではなく回路が解放されたからってことか。
とはいえ、学習じたいはしていると思うんだよなあ。
それを考えると正直、誤差の範囲のような気がしなくもないが。
――ま、いいか。
「よし、わかった。小学校低学年から中二ぐらいに知能があがったと認めよう」
中二病を発症してたしな。オペレーション、ショーグンとか言っちゃって。
「それ、褒めてます?」
「もちろんだ」
褒めてる褒めてる。
中二病は誰もが通る道だから。
「じゃあ、この話はこのぐらいにして、隕石衝突にどう対処するか考えるとするか」




