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27話 ショーグン、SNSデビュー

「ねえ、こんな感じだけどどう?」

「おお~、スゲー。めちゃくちゃカワイク撮れてるじゃない」


 今日はマイちゃんが家に来ている。

 彼女のスマホを見て、俺は素直に感心してしまった。


「ね、カワイイでしょ。こんな感じでいっぱいのせてみようかと思う」

「うん、ありがとうマイちゃん」


 画面に映っているのはショーグンの写真だ。

 カボチャを抱えたり、カゴに入れたジャガイモを背負ったりと、なかなか面白いショットにしあがっている。


 これらの画像をSNSにUPするのだ。

 うまくいったらバズってくれるかもしれない。


 とはいえ、この画像、ショーグンが主役ではない。

 あくまで野菜の宣伝なのだ。

 画像に特化したSNSサービスから、インターネット販売するサイトへと誘導するためにやるものだ。


 インターネット販売するホームページは俺が作った。

 だが、画像に特化したこのSNSはよく知らないし分からない。

 そこで、よく使っているというマイちゃんにお願いしたわけだ。


「まさか、ショーグンにこんな使い道があるとはなあ」


 ショーグンにはミノルファームのマスコット的存在になってもらう。

 こうして収穫した野菜を宣伝してもらうのだ。

 とはいえ、あくまでもマスコット。

 誰も本当にこのメカが作業しているとは思うまい。

 人の手でポージングさせたところを、うまい感じで撮ってると思うだろう。

 だが、実際は作業中のショーグンを撮影しただけだ。

 それゆえ、妙に躍動感のあるショットに仕上がっているのが、なんとも面白い。


「これはどう? ミノルくん」


 マイちゃんはまた違う画像を見せてくれた。


「ふはっ!」


 思わず笑ってしまう。

 ショーグンがチョコンと座って時代劇を見ていたからだ。

 それを後ろから抜いたワンショット。メカと古い畳との取り合わせも、これまた面白い。


「ね、カワイイでしょ」

「うん」


 たしかにカワイイ。


「これもUPしようと思うんだけど」

「野菜関係ないじゃん」


 完全に主役がショーグンになってしまっている。


「それが逆に面白いんじゃない?」

「たしかに」


 まあ、全部に野菜を入れる必要はないか。

 注目を浴びればそれでいいんだしな。


「あ~、でもこれはボツかなぁ」

「え~、なんで?」


「家の中が映ってるから」

「あー」


「まあ、俺の家ぐらいはいいんだけど、一番はテレビやらガラスやらに反射して撮影者が写っているかもってことだな」


 これを撮影したのはマイちゃんだ。

 俺が写りこむのはいいが、マイちゃんが特定されるのはよろしくない。

 世の中にはヒマなやつがいるからな。

 特定の肩書を持った女子に、並々ならぬ情念を燃やすやつだって少なくはないのだ。


 ささいな情報から人物と場所を特定する。

 野菜ごときでこんな田舎まで来ないだろうけど、美人女子高生とくれば別だ。

 変態ってのはエネルギーの注ぎ方がバグってるからな。


「え~、わたしだったら別にかまわないよ」

「いや、だめだよ。マイちゃんがよくても、俺はダメなの」


「そうなんだ。残念」

「ごめん」


 申し訳ないが、このあたりはしっかりラインを引きたいと思う。

 マイちゃんは表に出さない。

 社員になればまた別だけど、未成年のうちは特に注意していかないといけないよな。


「よし、じゃあショーグンが箱に梱包している写真を撮ろう」


 今度は俺から提案した。

 ちょうど一件注文があったんだ。

 とれた野菜を段ボールに詰めて送る予定がある。


「うん、わかった!」


 マイちゃんはすぐに切り替えて、ニコリと笑った。

 う~ん、いいねえ。こういうところがまた魅力的。


「どんな感じで撮るの?」


 マイちゃんが尋ねてくる。


「そうだなあ。わたしが責任を持って箱に詰めてます的に」

「ふふふ」


 考えるとちょっと面白い。

 これを見た人は、『いやアンタが詰めてるわけじゃないでしょ』みたいに思うけど、本当に詰めてるんだよね。

 それを俺たちだけが知ってるっていう。


「じゃあ、ミノルくん、ショーグンちゃん、行こ!」


 マイちゃんに手を引かれ、梱包作業をする倉庫へと向かう俺たちだった。

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