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特訓初日を迎える魔法使い

 翌日、たっぷり眠ったためかとてつもなく気持ちよく起きることが出来た……たぶん……少しまだ疲れているかも? でも元気なのは間違いない。時計を見ると、七時を少し過ぎていた。


 ウォータールーさんの作った朝食をサニーちゃんとウォータールーさんと一緒に食べ終え、ウォータールーさんを手伝って皿を洗い終えた後、さっそく訓練に入った。


 訓練の内容はシンプルなものだった。ウォータールーさんが用意した鉄球を、宙に浮かすというものだ。


 鉄球か……難しそうだな、なんてぼんやり考えつつ、ウォータールーさんについて裏庭に案内された。


 そこには、僕の予想した以上の巨大な鉄球があった。


「でかいです!!」


 驚きのあまり思わず見たままを叫んでしまった。


 周囲が緑で覆われているために、その異質感というか、異物感が半端じゃない。存在そのものが、「僕は別の所から来ました!」と主張しているようだ。


 鉄球の下に目を向け、地面にめり込んでるのを見て、その重さもおおよそ察した。とりあえず一応全身こめて押してみた。


……まぁ当然動くはずもなく。必死に力を籠めて押すほどに、足が地面を後ろに滑っていき、そのまま俯けに倒れそうになる。鉄球から身体を離し、両手をプラプラさせる。


「この鉄球をだ……」


 そう言うと、ウォータールーさんは右手の人差し指の先を鉄球に軽く当てる。すると、ウォータールーさんの魔術に反応した鉄球が宙に浮かび上がり、結構な距離の所まで飛ばされた。


「あの鉄球をここから風の魔法を使って、この場所まで運ぶんだ」


「えっ!?」


 ここから!? そう思って、僕は改めて鉄球の方に目を向ける。最初見た時も遠く感じたけど、今はもっと遠くにあるように見えてしまう。


「不安に思っているだろう」


「……」


 顔に出ていたんだろうか、そう指摘された僕はウォータールーさんの方を向いた。


「メードレとしては分からんかもしれんが、君の力は既に鉄球を動かすだけの力は備わっている。「この鉄球を浮かせよ」というような特訓は、今回あえて外させての今回の特訓だ。近くにある物を動かすより、遠くにある物に向けて使用する方が、魔力向上には特に効率が良い。発生した魔法は弓矢や銃弾と同じで、起こした所から遠のけば遠のくほど、その力もだんだん減っていく。逆を言えば、遠くのものに対してすら凄まじい力をもって効果を発揮することが出来るなら、近い物に対してそれ以上に強い力で利用できることになるだろう?」


「……」


 な、なるほど。確かに。


「何より、魔法は常に目の前のものに対してばかり使うんじゃない。時には距離の離れたものに対して使う必要性も出てくる。助けを求める誰かは、常に目の前にいてくれるわけじゃない。人命救助を最も安全に遂行できる風の魔法を使いこなしたいなら、是非とも力をつけた方が良いだろう」


 ……ウォータールーさんの言葉を聞いていると、何だかやる気が出てきた。そうだ。ここに来たのはそもそも力をつけるためだ。


 課せられた特訓が出来利用になるか否かももちろん大切だ。でも、何よりも全力を尽くすことが大切だ。


「分かりました。頑張ります」


 その言葉は、口から自然と出てきた。


「ちなみに、俺の見通しでは、メードレは通常五日もあればあれを浮かせるぐらいになるはずだ」


「五日!!?」


 またビックリしてしまった。い、五日……そんな短い期日で本当にできるだろうか。もし出来なかった場合は……


「しかもだ」ウォータールーさんは更に言葉を付け足す。「これは飽くまで、普通にやっていたらだ。当然よりやる気を出せば、それだけ早く動かせるようにもなる」


 考えてる途中でそう言われた僕は、


「……早くとは、だいたいどれくらいですか?」


 と尋ねる。


「そうだな……だいたい三日ぐらいか」


「……」


 五日……三日……やろうと思えばできると……そんな短い期間で……?


 いや、出来ると言われたんだ。


「やります!!」僕は拳を握って言った。「やって見せます全力で!! もうクビなったんです!! 怖いこともありません!! すんごく全力で頑張ります!!」


 僕は半ばやけになって、両手を真っ直ぐ挙げて声を上げた。いや、もちろん全力でやるのは本当だ。ウォータールーさんに期待をかけられるのも凄く嬉しい。


 半面、プレッシャーを感じていないわけじゃない。五日だ三日だと、自分の想定以上の早い期日で出来るはずだと言われたんだ。正直凄く緊張してる。


 そんな不安をぶっ飛ばして、やる気を一気に増大するなら、叫んで背筋伸ばしてワッて勢い半分で盛り上がった方が良い。なんかで書いてあった……気がする。


 そんな僕の事を分かってか否か、ウォータールーさんはやっぱり朗らかに笑いながら、


「ま、しっかり頑張んな」

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