~リス顔系男子~
目の前に現れた運命の王子様がリスだった。そんな経験あなたにはありますか?ない?私はあります。だって現に目の前にリスがいるのだから。
私は栗野慧姫。紋舞高校に通う高校1年生よ。どちらかといえば、大人しい性格かなあ。ある日の放課後、学校で先生に頼まれていた荷物を体育倉庫に運んでいたの。頑張ったんだけど、荷物が重くて上手くそのダンボールを上の段に乗せることができずに荷物が落下してきた。
『きゃあっ!!』
私はマズい。死んじゃうと思った。怖くて反射的に両手を前に突き出す。でもそんな時、彼は私を助けてくれた。
『お怪我は無いリスか?お嬢ちゃん。』
瞑っていた目を開いて見上げると、前にはリス顔系男子の栗林リスおくんが箱を片手で受け止めていた。
『く、栗林くん!うん。大丈夫だよ。』
栗林リスおくん。学年で最も人気のある男の子。身長は169cm。足が早くてスポーツ万能。何でも運動ができて皆にモテモテ。都市伝説だと思っていたけど、本当に実在したんだ。かっこいいね。最近、雲梯の全国大会でも優勝したらしい。噂以上の怪力だった。栗林くんは余裕そうにダンボールを戻すと、振り向いてこう言ったの。
『何事も無くて良かったリス。』
頭をポンポンして、ニコッと笑い、颯爽と去っていった。
(栗林リスおくん...!)
私はお礼も言えずに立ち尽くしていた。ドクン。ドクン。心臓の鼓動が鳴り止まない。私は手を胸に当てる。ああ心地よい。彼は私の心を奪っていったのだ。
(栗林くん。また会いたいな。お礼言いそびれちゃった。)