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傷心休暇

作者: 市樺チカ

プルルルルル、ガチャ

会社の電話が鳴って事務の橋本が取る。朝の8時半。こんな時間に電話が鳴るのは珍しい。

「もしもし」

不思議に思いつつ電話の応対をした。

「もしもし、鈴代(すずしろ)です」

「鈴代さん!?どうしましたか?」

珍しいことがまた起きた。電話の相手はこの会社に勤める鈴代であった。彼は真面目という言葉がよく似合う青年で仕事をそつなくこなす。そんな彼からの電話に驚く橋本。電話をしてきた理由を問う。

「すみません、朝起きたら頭痛と吐き気があり、とても会社に行ける状態ではないのでお休みをいただきたくお電話をしました」

「わかりました。社長にお伝えしておきます。今日はゆっくり休んでください」

「ありがとうございます。それでは失礼します」

鈴代は電話を切り、叫んだ。

「はるにゃん!どうして結婚したんだよ!」

先程の電話対応の真面目なのと違いスゴく自分の心の中身を晒す気色悪さがそこにいた。

鈴代はアイドルオタクで彼が推してるアイドル、常磐春名(ときわはるな)は昨日、結婚を発表した。まさか嘘だろ、嘘だと言ってくれ!鈴代は願う。一生のお願いというカードをここで使ってもいいほどに。しかし、現実である。願いは叶わずショックを受けた鈴代は近くのコンビニで酒を大量に買い、やけ酒した。その結果、鈴代は本日の勤務が出来ないほどの二日酔いになり休むことになった。

「どうして結婚をしちゃったんだよ~。まだアイドルでいてよ~。俺に元気をちょーうーだーいーよー!」

昨日からこの調子でおもちゃを買ってもらえない子供のように駄々をこねている。

「うっ!気持ち悪い・・・トイレ」

トイレで吐き再びリビングに戻る。壁に貼ってある常磐春名のポスターをボーッと見つめ涙を流す。鈴代にとって常磐春名は神である。その神が降臨(ライブ)をすれば必ず赴き、グッズが出ればお布施(ゲット)し、その魅力を伝えるために布教活動(SNS投稿)をした。これほどまでに尽くしてきた。別に見返りは求めてはいないが彼女を多くの人に知ってほしい。その一心だった。その結果が結婚だ。

「はるにゃん、どんな奴と結婚したんだよ?」

不意にそう思い「常磐春名 結婚相手」と携帯で検索する。

「なにも書かれてないな」

それは無理もない。常磐春名はアイドルと言っても地下アイドル。ファンは100人いるかいないかというくらいの地下アイドル。知名度もそれほど無い。検索で出てくるのはそのファンの憶測ばかりでどんな相手かはわからなかった。

「シャワー・・・いっか」

鈴代を形成してた【常磐春名】が崩壊してるため無気力となってる。

「これから何を糧に生きればいいのだろう?」

この問いに対する答えが見つからない。

傷心した状態ではわからない。

常磐春名の穴を埋める新しい(アイドル)はいない。

いや、いないわけがない!いるはずなのだ!鈴代が見つけていないだけで探せばいるのだ。

しかしながら鈴代にその気力はない。

脱け殻のようなこの状態では探すことはできない。

鈴代は壁に貼ってあるポスターを泣きながら見つめその日を過ごした。


それから1週間

鈴代は仮病を使って会社を休んだ。あまりに休むので会社が心配し鈴代の家に人が訪れる。部屋に入ると無気力となった鈴代がいて、休んでいた理由を会社の人に話す。少しあきられながら鈴代の無事を確認して鈴代に明日から会社に来るよう伝えて帰っていった。


次の日

鈴代は会社に来ていた。まだ心の傷は残るがみんなに迷惑をかけた分、仕事をしようと心に誓い黙々と仕事をするのであった。

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