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季節の香り  作者: 善田
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2人でホラーゲーム5

下のリビングに降りて、冷蔵庫の中を見てみると野菜やベーコンなどはあったが、レンジでチンすればすぐに食べられるような惣菜の残り物はなかった。

一応冷凍庫の中も見てみると、たらこの冷凍パスタとラップに包まれた冷凍ご飯を見つけた。

「パスタでいいか?」

俺は横で同じように冷凍庫を覗き込む柑奈に聞く。

柑奈は顎に人差し指をつけて首を横に傾けながら、う〜んと少し悩み、それからもう一度冷蔵庫を開けると「卵は‥ある、ネギも‥‥ある。卵はある。よしっ」

と呟いた。

そして俺の方に向き直ると、

「食材もあるしどうせならお昼ご飯作っちゃおうか」と太陽のような眩しい笑顔を俺に向けてくる。

まじで?美少女の料理食べれんの⁉︎それって誰得?もちろん俺得!!

おっと待て待て落ち着くのだ。

内心ウッヒョ〜と喜びを爆発させている俺だが、顔に出ないようにしっかりとキリッと顔を維持する。

なぜならその方がかっこいいと、テレビで自分はモテて仕方ないって言ってたミュージシャンが何かの胡散臭い雑誌で言っていたから。

普段はいけ好かない野郎だと思っていたが今日からはモテ方教えてくれるナイスガイな師匠、略して「モテない師匠」と呼ぶことにしよう。

あれ、なんか意味変わっちまった?まあええか。

それにあれだ、なんか恥ずかしいしな。

「おうそうだな」

そういう訳で、俺は柑奈にいたってクールに返答する。

まあ、別に俺はなんでもいいけど、お前が作りたいなら付き合ってあげてもいいよ的なニュアンスをこの7文字に含めた事を今ここに読者にだけ打ち明けよう。

「ふーん」

しかし、俺の完璧でクールな返事に対して唇を曲げる柑奈。

「なんだよ?」

「うーん?私の手料理喜んでもらえるって思ったんだけどなー。孝明が乗り気じゃないならやっぱり冷凍パスタにしよっか。最近は冷凍食品も美味しくなってるし、私の手料理より美味しいかもしれないもんね」

柑奈はそういうと、冷蔵庫をしめ冷凍庫から冷凍のたらこパスタを取り出す。

ガッデム!

師匠話が違うじゃないですか。

「いやいや、いくら最近の冷凍食品は美味いと言ってもやっぱり1番美味しいのは作りたてっていうかね、なんやかんや作ってもらった方が嬉しいかなーなんて」

「孝明は手料理なら私のじゃなくてもいいんだ?」

「いや、まあ‥そりゃ、ここにいるのは俺とお前しかいないし、俺は料理なんてさっぱりだからさ‥‥だから‥な?」

「私の手料理が食べたいんだ?」

「‥‥‥‥」

ふむ、ここで素直に食べたいというのは簡単だ。

しかしここで素直に「食べたい!」なんて言ったらなんか負けたような気がする。

‥‥何かないか⁉︎柑奈に料理を作らせる方法は!

俺は 決して良くない頭をフルに回転させる。しかし思いつくのは5歳児が考えたような幼稚な考えばかりだ。

「そ、そういえば、あれだぞ?男が結婚相手に求める条件に料理上手ってのがあったぞ。将来の旦那に食わせる前に仕方ないから俺が毒見になってやってもいいぞ」

「私料理得意だから大丈夫」

「あ、そういえばそのパスタ、カロリー高かった!」

「じゃあ、夜ご飯で調整するよ」

「そういえば、お前ってたらこ嫌いじゃなかった?」

「うんうん。大好きだよ?孝明は知ってるでしょ?私嫌いな食べ物ないって」

そうなんだよな。こいつ嫌いな食べ物ないんだよ。なんでも幸せそうに食いやがって。でもそういうところが可愛いんだよな。こんちくしょう!!

いやいや、そんなことよりも、やばい、もう何も浮かばん。

「はぁ‥‥じゃあもうあと5秒でどっちにするか決めてね。ごーお、よーん」

「ちょ、待っ」

「待ちませーん。さーん、にー」

ふむ、ここで普通の男なら折れてしまうんだろうな。

しかし!俺はこんなところで折れる男ではない。

見ていろ。

必ず柑奈から作らせて欲しいと言わせてやる!

「いーち」

と尖っていた時代が俺にもありました。

「ごめんなさい。柑奈様の手料理が食べたいです」

と言うと俺は心誠意頭を下げて柑奈にお願いをする。

お願いする時は腰の角度を90度に、これが今まで生きてきた中で1番役に立った父さんからの教えだ。

実際に父さんが小遣いアップを母さんにお願いするときは綺麗な90度なんだよなぁ。まあ、成功の確率はフィフティフィフティだけど。

俺の返答に柑奈は満足したのかふふんと胸をはって「全く初めから素直にいえばいいのにー」と言った。

「いや、なんか恥ずかしくてな。それじゃ、料理よろしく」

俺はくるりと反転して、ソファへgoした。

が、「ふふふ、だが断る!」と柑奈。

「いやなんでだよ!」と、俺は腰を後ろに曲げ、華麗なイナバウアーツッコミをかましてしまった。





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