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目撃現場
『来て』
受話器の玩具から声が聞こえて、あたしは家から飛び出した。
『こっち。早く』
裸の足裏に土が貼りつく。あたしは呼ばれてる場所へと走る。
『ね、早く、早くして……っ!』
受話器から吸い込む吐息と凄まじい悲鳴が聞こえた。あたしは大変と思ってまた走った。息が荒いまま呼ばれた場所へと向かうと、――そこにあったのは、見たことがないほど美しい光。
あたしの持っていた受話器から声が聞こえた。
『我……器……隠れ……時を……へへっ……』
あたしは急に眠くなった。
『アリガト! へへっ……! ……アリガトウ! ……へへへ!』
受話器から声が消えた。