月の内部とは
月の内部を見たマーリンは驚愕した。
それは、想像をはるかに越えた世界が広がっていたからだ。
地球にとって、月の役割りとは何か?
そして、宇宙の人の存在、暮らし方を垣間見たマーリンは、自分の中に今まで気が付かなかった世界があることを知っていくのである。
「さぁ、月の中に入ってみよう。」
お月様の側面は、緑色の光の精密機械のようなもので隙間なく覆われている。
アーリーさんが立つと、人が通れるくらいの穴が突然開いた。
当たり前のように入っていくアーリーさん。
私も急いで後をついていく。
中に入ると、ウイーーンと鳴ってその穴は跡形もなくなくなってしまった。
驚き、目を今までにないくらい丸くする私。
そして、目の前に写る光景を目にして言葉を失ったのだ。
月は、うさぎが餅つきするために、暮らしていると、小さい頃本気で思っていた。
しかし、今、目の前にあるのは、うさぎではなくて
丸い 天体。
そう、月の中には、天体がいくつか浮いていたのである。
それも普通の天体ではなく
サイズは小さめ
恐らく縮小されたものだろう。
見覚えのある、惑星もそこに浮かんでいた。
しかも、月の内部なのに、そこから見える景色は、まるで宇宙の星空にでも浮かんでいるかのようだった。
きっとここで星の状態を観察しているのだろう。
そして実際の天体と同じ動きをしているのであろう……
下には、何やら装置らしきものが置いてあった。
これで、いろんな操作をするのか…
月は宇宙の星の司令を司る場所なのかもしれない、外のお月様を囲うものといい普通ではないもの。きっとそうに違いない。
すると、アーリーさんは
「今、君が頭の中に浮かんだことは、全て正解だ。」
「月は他の天体とは存在意味が違っている。あらゆるテクノロジーが詰まっているのだ。」
「そして、月の仕事をする人は、特別な学びを受け、宇宙の試験に合格しなくてはなれない仕事なのだ。」
「地球でいう、超難関な国家試験のようなものがあるんだよ。」
「へー」と驚く
「こっちへ、おいで」
すると、今度はその天体のある場所の壁のほうへ歩いていく。
また扉が現れたので、中に入る。
今度は、円形の空間。
天井から壁面まで、蔦のようなものがびっしり生えていた。
なんだろう?
よく見ると、ぐるりと一周する壁に、大きなカプセルのようなものが、均等に配置されている。
そのカプセルは蔦のようなものと、うまい具合に密着している。
蔦はエネルギーを流すコードのようにも見えた。
「アーリーさんあれは何?」
するとアーリーさんは
「よく見てごらん」と答えた。
私は、カプセルの中に目を向けてみた。
すると
中に人のようなものが見えたのだ。
他のカプセルも見る。
やはり、人が入っている。
「これ どういうこと?」
するとアーリーさんはこう答えた。
「あのカプセルは他の星と繋がっている。カプセルに入りどこの星に行きたいかセットすると、意識と魂の姿はそこに行けて、その星を体験することができる。彼らは、任務でそれぞれの星に今まさに行って、情報を集めているのだよ。」
もう驚くことばかりで
またまた目を丸くする。
そして
「映画のような世界だ…」とつぶやいた。
しばらく見ていると、カプセルが1つ開いた。
装置を外し、中から人が現れた。
肌の白い金髪の宇宙の人
人間とは目が明らかに違う。
「アーリー、友達かい?」
そう言って彼はこちらにやってきた。
「はじめまして、地球からやってきたマーリンです。よろしくお願いいたします。」
「こちらこそよろしく。私はアレンです。アーリーと月で仕事をしている仲間です。」
「月の内部は地球視点から見ると、とても不思議でしょう?他の場所も案内してもらいなよ。」
私は好奇心剥き出しの目で、アーリーさんを見た。
アーリーさんは、笑いながら
「じゃぁ次はこっちにおいで」とまた違う場所へ案内してくれたのだ。
アレンさんにさよならを伝え
私はワクワクしながら後をついていく。
また違う入口から入ると、今度は少し薄暗い。
薄暗い森だ!樹木が生い茂る。
少し歩くと、小さな湖のようなものも見えた。
見上げると、白くてフワフワしたものがたくさん舞っていた。
「これは何?きれい。」
「明日は満月なんだ。満月になるとこの白いものがたくさん現れる。このエネルギーが地球にもたくさん注がれているんだよ。満月のエネルギーはこの白いものが関係してるんだよ。きれいだろ。」
「うんうん、とってもきれい。明日はこのフワフワのものがもっとたくさんここに現れるということなのかな?」
「そうだよ。かなりの量がここを飛び交っているよ。」
私は足を止めてしばらくこの様子を眺めていた。
地球では考えつかない景色やテクノロジーが、月に存在している不思議。
そして、アーリーさんをはじめ、宇宙には宇宙人が存在していて、地球や他の星を見守っていること。
マーリンは、壮大な宇宙のヒトカケラを、この目でしっかり見ることができたような気がして、とっても嬉しかったのとありがたい気持ちになっていた。
アーリーさんは、そこから少し歩いて樹木の前で止まった。
よく見ると、その一帯の樹木には扉がついていた。
なんだろう?と思っていると
アーリーさんは扉を開いたのだ。
「我が家へようこそ」
アーリーさんの家?
私は中に入った。
はじめは白い何もない、空間がそこにあった。
「アーリーさんのお部屋?」
すると笑いながら
「君はこんな雰囲気が好きたよね。」
と言うと、白い空間が歪みだしたのだ。
驚いて見ていると、歪みがやがて落ち着き、そこにキッチンと小さなダイニングテーブルが現れた。
「君はモダンな雰囲気が好きかな?」
と微笑むアーリンさん。
何が起こったかわからないでいると。
「空間は、自由に作り出すことができるんだ」
とそう言ったのだ。
「アーリーさん、私は地球しか知らないから、こんな魔法のような宇宙での出来事に、脳内がパニックを起こしてる。すごい、すごい、宇宙ってすごい。」と叫んだ。
そして、マーリンは地球での自分の暮らしと照らし合わせていた。
私は地球での暮らしが嫌いだ。
学校も嫌いだし、家だって…
そう感じたマーリンの目は少し悲し気であった。
アーリーさんは
「これから、君は君の世界を旅することになる。この宇宙でね。そこから地球での君の暮らしとは、どんな意味があるのか?を宇宙視点からじっくり眺めてみるとよいよ。君はこれから、どんなことを感じ、どんなことを理解し、そしてどのように動くか?私はそれがとても楽しみだ。」
「私は知ってるよ。君が赤いネイルをつけた時は、現実世界から離れた魔女になっていることをね。」
マーリンはとても驚いた。
赤いネイルを塗り終わると、何か違う自分になれた気分がしていたのだ。
はじめは、何気なしにネイルを塗ったのだが、赤いその色は、なんだかマーリンにとって特別な色に感じていた。
それは、メラメラと燃え盛る炎の色。普段隠し持っている、自分の心の熱い部分に似ているからなのかもしれない。
そして、その色を体の一部分に染めると、なんだか強くなった気分になったのだ。
学校で起こる、嫌なことも忘れることができた。
そして、それをマーリンは魔法の力であると信じていた。
ネイルの魔法。
「アーリーさんは、全部私のことを知ってるの?」
「ああ、私は君が地球で何をして、何を考えているかを全部知っているよ。学校が嫌いなこともね。」
月のテクノロジーを見せられたマーリンにとって、もうアーリーさんの言ってることに、嘘はないのだろうと感じるのであった。
つづく
宇宙での出来事から、マーリンは現実世界をどのように導こうとしていくのか。