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化物皇女と勇者?と魔王?  作者: 北田シヲン
第1章 勇者の旅
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9話:西の大国ウェルムボストン②

「表を上げなさい、勇者たちよ」


「「「「はっ!」」」」


 金と赤を基調とした色合いの煌びやかな服を纏った王様が、玉座から声を発する。


玉座の間にて、片膝をつき、待機していた勇者一行は、王様からのありがたいお言葉に従い、頭を上げる。

もちろん、皇女もその中に含まれている。


「今回の旅は長旅となったことでしょう。どうでしたか?成果の程は」


 王様とは思えないほどの優しい口調。

服装と同じく赤と金が混じった髪色と、煌びやからな服装の中、縁の細い黒の眼鏡が、王様を落ち着いた雰囲気に見せていた。


「確かに長い道のりだったけど、楽しかった。新しい仲間も増えたし、前より賑やかになって楽しい、です。あ、勇者の宝剣も、無事に確保できたよ。はい、これ」


 王様の労いの言葉に、気さくに話しかける勇人。


「(一昔前であれば、王への不敬として処刑されているところじゃぞ?)」


 内心ツッコミを入れながらも、勇人と王様の会話に耳を傾ける。


「おぉ…!まさに、宝剣と呼ぶに相応しい立派な剣!やりましたね!勇人殿!」


「うん、ありがとう。良かったら持ってみ、ます?雲みたいに軽いから、持ってて楽しくなるよ」


「え、いいんですか!?…いや、でも、辞めておきます。それは、勇人殿にしか持てない勇者の武器ですから。軽く感じるのは勇人殿だけで、私が持ったら恐らく、重すぎて、腕が壊れてしまいます…」


 勇人の言葉に一瞬、目を輝かせた王様だったが、すぐに現実を自らに言い聞かせ、しゅんとしてしまった。


しかし、すぐに気持ちを切り替え、王を守るように、玉座の間に集まっている複数の宮廷魔導士の内の一人を、呼び出した。


「宮廷魔導士ラーサ・ボトム。ここへ」


「はいはい、ちょっと待ってくださいね。歩くのが最近辛くてねぇー」


 王様に呼ばれた宮廷魔導士ラーサ・ボトムは、今年、92歳を迎えるご老体だ。

しかし、年寄りだからといって、侮るなかれ。

その実力はウェルムボストン王国、王都ガルステン直属宮廷魔導士の中でも1、2を争う。


 そんなご年配の女性魔導士は、杖をつきながら、ゆっくりと歩き、3分ほど経って、王様の御前へとたどり着いた。


「ふぅ、お待たせしました。初めての方もいらっしゃいますので、自己紹介を。ワシの名は、ラーサ・ボトム。王都ガルステンの直属宮廷魔導士ですが、最近は元気いっぱいの孫と遊んで、日々、癒されているだけのただのおばばです。あ、周りからそう呼ばれておりますが、好きにお呼びください。ちなみに、使える魔法は、火と占いです。今後ともよろしくお願いしますね」


「おばばさまってほんとに可愛い」


 ラーサの挨拶を聞き、にまにまと笑顔で、誰にも聞こえないように呟くマホ。

先程言っていた元気いっぱいの孫というのは、勇者一行であるマホのことだ。

ラーサ本人も、そんなマホの方を見て、優しく、笑顔で返す。


 ラーサの使用する2種類の魔法は、火と心。

人の心を読み取り、人柄などから未来を占う。

物に宿る心を感じ取り、水晶などの媒介を通し、探し物の場所を占う。


こころ属性の魔法は、そのような魔法が多い。


「では、挨拶も済んだところで、本題に移ろう。ラーサ、頼めるかい?」


「わかりましたよ、王様」


 そう言うと、ラーサは肩がけしている鞄から水晶を取り出し、魔力を込め始めた。


 待つこと3分。ずっと無言だったラーサが流暢に話し出した。


「見えました。次は、いかなる外敵からの攻撃にも耐えることが出来る盾、おうの盾でございます。場所は、ここより北の地。ウェルムボストン王国の北端、国境の街フロンティエーラと諸外国の間にある、彷徨いの森の中でございます。詳しいことは、また地図をお書きしますので、それを参考になさってくだ―――ごほっほばぼ!!!……ごめんなさいね、最近、魔力を使うとどうも咳が出るみたいで」


「ありがとう、ラーサ。今日はもう休むといい。医者も部屋に手配しておくから」


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて、そうさせていただきますね。地図は、後で他の者に届けさせますので、少し待っていてくださいね」


 そう言うと、ラーサは杖をつきながら、部屋から出ていった。

齢90を超えるご老体。それほど長く生きれば、身体の至る所に不備が出る。


「(人間とは、儚い生き物じゃな。我が道を極めれば極めるほどに、歳を食い、その先にある最高到達点にさえ、辿り着くことが出来ない…実に惜しい)」


 500年の時を生きる皇女にとって、100年ほどで死んでしまう普通の人間は、儚く、虚しい生き物だと思っている。


人は、いかなる才能、才覚を持ち合わせていようと、一つのことに己が人生の全ての歳月を注ぎ込むことで、ようやっと最高到達点に辿り着けるかどうかというもの。


 50歳の時に、戴冠式を迎え、皇女となったファムは、まず最初に、母親からヴァールを引き継いだ。


そして、ヴァールの力を使い、実の母親を喰い殺す。

それが、歴代の皇女となったものの宿命であった。


 歴代の皇女の記憶を持ち続けるヴァールを、次代の皇女が引き継ぎ、先代の皇女ごと取り込むことで、今までヴァールが仕えてきた全ての皇女の記憶、力が身体中を駆け巡る。

記憶が力の覚え方、使い方を思い起こさせ、眠っていた才能を呼び起こす。


 こうして、何千年も生きてきたヴァールから全てを受け取り、皇女となる。

多少の性格変動はあるが、駆け巡るものは所詮、情報の塊。


 記憶は、過去に起こった出来事であり、それを得たところで人としての根幹は変わらない。

そのため、現皇女マルファムル・ファン・バネルパークの性格は、皇女になる前からほとんど変わっていない。

唯一変わったとすれば、男と関係を持つことに嫌悪感を持たないようになったことぐらいだ。


 その後、皇女は、77年、バネルパーク皇国を治め、その間、1日たりとも、鍛錬をサボった日はない。


ヴァールのおかげで、睡眠時間は1時間もあれば充分に疲労を回復することができ、力の使い方を先代の記憶から理解することで、見る見るうちに、体術も拳術も槍術も剣術も、あらゆる武術を覚え、体得していき、魔法も先代たちが使っていたものを片っ端から習得していった。


 要は習っていないことなのに、コツが全てわかり、どう身体を動かせばよいか、感覚的に解るようになったのだ。

普通の人であれば、コツを掴むまで5年。それを身体に染み込ませ、難なく使えるようになるのに30年。さらにそこから、達人の域に到達するのに50年はかかる。


 その全てを、皇女は5年足らずで覚え、今ではもう達人の域を超え、最高到達点にまでたどり着いていた。

いわば、チートである。すごく分かりやすい攻略本を、無料で手渡しされたようなものだ。


 しかし、皇女も長生きとはいえ、人種であるため、2種類の縛りはあるが、ヴァールが取り込んできた歴代の皇女が扱っていた2種類の魔法は、継続して使うことが出来る。

そのため、全14種類中、12種類を扱うことが出来る。


 マホより一種類多く、げん属性の魔法を扱うことが出来る。

ちなみに、げん属性の魔法には、勇者の宝剣の試練で見せた武器特化型の創造魔法も含まれる。


 手を叩いた時に現れた極彩色の粒は、その一つ一つが原子であり、それを操り、原子同士を結合することで、武器を作り上げていた。


 皇女の強さは、こうやって作られた。

自分自身が持つ才能と歴代の皇女たちの力を使い、日々、努力を惜しまなかったからこそ、到達した強さ。


最強とは、10%の才能と90%の努力。それと、ほんの少しの運により、形成される。



 ラーサから話を聞いた後、ガルステン城内にある食堂で休憩していた勇人たちは、騎士から一枚の封筒を受け取り、中に入っている地図を参考に王都ガルステンを出立した。

もちろん入念な準備を済ませてから。



 一方、その頃、王都ガルステンから離れた街道に、多くの人が集まっていた。


「次は、彷徨いの森ねぇ。やっと、やぁーっと、皇女様を始末するのに、とっておきの場所に来たわぁ。ほらみんな、早く行くわよ」


 リーダーらしき、中性的を履き違えた口調の男が、集まっているメンバーにそう告げると、一糸乱れる動きで行進を始める。


マルファムル・ファン・バネルパークが、化け物であると知っている者たちが、まだ、ここにいた。

【作者からのお願い】

「面白い!」「楽しい!」「早く続きを読みたい!」と思っていただけたのなら、広告下にある【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

でも、どうしたら評価ポイントが増えるんだろ。やっぱり更新回数を増やすしか…?

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