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化物皇女と勇者?と魔王?  作者: 北田シヲン
第2章 世界の始まり
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15話:各隊の結末③

近々最終話まで投稿予定

「あっははは!!おもしろーい!!」

「あっははは!!そうかーい!」


 舞台は、第1部隊の戦場へと移る。

部屋にこだまするのは、マルクル姉妹の笑い声。まるで、無邪気な子どもが虫を潰すように、残酷な笑い声が響く。


 マクルス姉妹はたった2人で、100人を超える量産型マホシリーズを、圧倒していた。


 時は少し遡り、ゴードンとアーノルドが戦っているちょうどその頃、第1部隊がいる部屋の奥から、ぞろぞろと出てきたギッラギラの子どもたち。そして、口角を上げ、「ひゃっひゃっ!」と笑う老婆。


 数の差を埋められ、アルートの額に冷や汗がにじむ。やっかいだな、これは。そう思った矢先、軍の真ん中ぐらいにいたマルクル姉妹が、前線に現れた。


「ねぇ。あれって、全部殺していいの?」


 マルルが相手を指差しながら、アルートに尋ねる。子どもから殺すなどという残酷な言葉が出てくるのに、少しばかりの戸惑いを感じながらも、許可する。


「ああ。問題ない」


「ほんと!?じゃーさっそく始めないと!ねっ♪」

「うん!やろやろっ!!そして、お姉さまに褒めてもらうんだ〜♪」


「くるっと♪上位魔法♪太陽の紅炎(サン・プロミネンス)♪」

「まるっと♪上位魔法♪絶対零度の吐息(コキュートスブレス)♪」


 マルルは、太陽から漏れ出る紅炎を彷彿とさせる高火力の火属性魔法を、前に伸ばした両腕の手のひらから放出。元々、身体全体で発していたのだが、皇女から、出力を絞った方が良いとアドバイスされ、その結果、ホースの先端を指で押すと水圧が強くなるように、火の圧力:火圧が増し、威力が増した。


 クルルは、万物を凍らせる吹雪をイメージさせる極低温の氷属性魔法を、口から放出。元々大きく開きっぱなしだった口を、こちらも皇女からアドバイスを受け、口の動きを変え、開いたり、閉じたりすることで、風の動きが変化し、さまざまな角度から風が当たることで、より効果的に凍らせることが出来るようになった。


 炎と氷。対局の力を前に、量産型マホシリーズは、10人ほどが束になり、防御する形で魔法を発動する。


 だが、まるで意味をなさなかった。アライグマが、貰った綿菓子を洗おうと水に漬けると、一瞬にして溶けてなくなるように、マルクルの上位魔法に当たった瞬間、一方は燃えて灰に、一方は氷像へと姿を変えた。


 そして、現在に至る。

甲高い笑い声とともに、灰が舞い、氷像が出来ては、熱とともに溶け、砕けていく。


 100人を超える数の人が、15分足らずで、全滅した。


「ば…バカな…あ、あ、ありえんのじゃ…」


 目の前で起こっていた事実を受け止めきれない様子の老婆。片手で持っていた杖を、両手に持ち替え、力無く寄りかかる。


「ありえない?いや…ありえるでしょ!」

「あっはは!なにそれ!クルルおもしろいっ!!」


 上位魔法を止め、変な手振りと変顔で、クルルは老婆を煽る。マルルはツボにハマったらしく、笑い転げている。


「く、くそぉー!!!もうこうなったらやけじぁー!!まだ未完成じゃが、ここで使わずしてどこで使うというんじゃ!」


 情緒不安定のラーサ・ボトム。落ち込んでいたかと思えば、怒り出し、自暴自棄に次の行動を起こす。更年期特有のそれだ。


「姉たちの仇を取るんじゃ!ミホ!!」


 量産型が出てきた部屋の奥から、プシューと空気が抜ける音と何か水のようなものが流れ出る音が聞こえてくる。


 そして、足音を響かせながら、老婆の言う〝ミホ〟が姿を現した。


 先ほどまでの子どもたちとは違い、少し成長した姿のそれは、灰色の長い髪を束ねることなく、すとんとおろし、虚な目で歩いていた。


 服は着ておらず、全裸なのだが、男とも女ともとれない身体つきで、無駄なもの(生殖器)は除去されていた。


「きゃっきゃっきゃっ!!此奴は、先ほどまでの量産型とは違うぅ!完全なオリジナルじゃ!そう簡単に倒せると思うでないぞぉ!!!」


「ふーん」

「…で?」


 マルルとクルルの冷ややかな目が、老婆に向けられる。姉妹は、先ほどまでと同じ、上位魔法を唱えようとした。だが、ミホの背後から、長い髪を靡かせながら、颯爽と歩く絶世の美女が現れた。


「あ、貴方様は…!?なぜここに!?」


「ふふっ。ラーサ、貴方にあの子たちは重荷でしかないわ。マルル、クルル。いらっしゃい」


 マルルとクルルは、美女に呼ばれた途端、糸の切れた操り人形のように力なくうなだれ、「はい」とだけ返事をすると、光を失った目で美女を捉え、その方へと歩き出す。


「なっ!?どこにいくの!?マルクル!!」


 パルムの呼び掛けに、振り向きもせず、マルルとクルルは美女の両手へと収まる。


「後はお願い…出来るかしら?」


「お、お任せください。この老体に鞭打ってでも、こやつらを足止めしてみせますとも、はいぃ」


「ふふっ。期待してるわ」


 美女は老婆に優しく笑いかけると、マルルとクルルの腰に腕を回し、来た道を戻って行った。


 完全に美女がいなくなった後、老婆は、持っている杖を振り上げ、力強く、地面へと叩きつけた。


「くそ!くそ!!くそぉ!!あの女!!王を誑かす悪女めっ!!!何様のつもりじゃあ!!!」


 何度も地面を叩き、地団駄を踏みながら、悪態を吐く。鼻息荒く、アルートたちがいるにも関わらず、怒りを隠そうともしない。


「あぁ〜イライラするのぉ〜!!!それもこれもぜーんぶこやつらのせいじゃ!!ミホー!!全員、ぶちコロセー!!」


「イェス、マム」


 ラーサの雑な指示を受け、ミホは、半開きだった目を開き、魔法を唱える。


「上位魔法―――」


 ミホは、マホと同じ種類の魔法を使うことが出来る。そして、長年、人間には到達することが出来ないと言われてきた上位魔法を扱う領域まで、発展していた。


 だからこその、後継機。1人2種の魔法原則を破るために造られたマホは、今やもう用済みであった。


炎神(えんじん)(かいな)


 魔法を唱えると同時に、ミホは片腕を上げる。そして、それに呼応するように、ミホの上空に、紅蓮に燃える炎の腕が出現。腕には、溶岩のような岩が纏わりついており、その全てを炎が包み込んでいた。まるで、マグマが人の腕の形を成した様だ。


 ミホは無表情のまま、上げた腕を横薙ぎに振り払うように動かす。ロスは無い。ミホの腕と完璧に同期した炎の腕が、アルートたちを薙ぎ払おうと動く。


 アルートは、マクルスと皇女から上位魔法のことを聞かされていた。自分たちが扱う魔法の上位互換品であり、纏う魔力量もその比ではないことも。


 そして、もし、上位魔法を扱う者に出逢った時は、すぐさま逃げろ、と指示されていた。


「こんな状況じゃなければ、すぐさま、逃げますよ。王様、皇女様」


 後ろにいるパルムにぎりぎり聞こえる声で呟くと、隊員に指示を飛ばす。


「各員!最大魔力で防御魔法を展開!側にいる相手と合わせろ!!」


 1人で太刀打ち出来ないなら、2人または複数人で対処するのみ。アルートは、パルムにアイコンタクトで指示を飛ばし、1人、颯爽と前に出る。


 先ほどのマルクル姉妹の無双を見ていた面々だ。上位魔法の恐ろしさは身をもって感じていた。


 隊員各々が、周りの人たちと手を取り合い、精一杯の防御魔法を展開する中、アルートは自身に雷魔法を唱え、強化(バフ)する。


 マクルスと皇女が前に使った雷帝よりも、何ランクか下の雷強化魔法:雷人(らいじん)。高ランクの魔法ほど、威力は絶大だが、魔力消費量も増える。次の戦いを見据えるアルートにとって、ここで魔力を使い果たすわけにはいかなかった。


 アルートは、強化した身体で地を蹴り、壁伝いに走る。炎神の腕と、各隊員の複合防御魔法が、激突。防御魔法は一瞬で溶けて、蒸発し、中にいる隊員たちを焦がしていく。パルムたちが唱えた防御魔法は、どうにか耐えることが出来た。


 だが、部隊の7割近くのヴァールバンドが起動し、戦線を離脱。上位魔法の恐ろしさを、残った者たちは改めて理解する。敵に回すとこれほどまでに恐ろしいものなのか、と。


 ―――ミホの腕が、動き始める。

薙ぎ払った腕を反転し、再度、薙ぎ払いが来る。

早すぎる攻撃のスパンに、戸惑う中、連続で防御魔法を唱える。ミホにとっては、ただ腕を動かしただけだ。


 だが、ミホの腕が動くより早く、アルートの飛び蹴りが炸裂。炎の腕を操る腕とは反対の腕で、防がれはしたものの、どうにか、薙ぎ払いを止めることが出来た。アルートはすぐさま相手との距離を取る。


 防御魔法の隙間からそれを見ていたパルム。


「各員、魔法を解除!私の元に集まれ!」


 指示を飛ばし、残った隊員たちを自分の元に集める。もし、また、薙ぎ払いが来たとしても、この人数であれば、守り切れると判断したためだ。アルートが飛び出した以上、相手との戦いはアルートに任せ、隊員たちの安全確保を優先する。


 それを横目で見ていたアルートは、心の中でパルムを褒める。だが、目の前の相手が、自分の太刀打ちできる相手でないことを、今の攻防で深く理解していた。


「(…マクルス様、申し訳ございません。私は、ここまでかもしれません。あなた様の元には、当分行けそうにない)」


 アルートは決心した。

全魔力を使い果たすことになろうとも、この相手をここで倒す、と。


 ミホが、再度、動き出す。


「上位魔法―――炎神(えんじん)(かいな)


 アルートの蹴りを受け止めた腕の上空にも、炎の腕が出現。両腕と同期(リンク)する炎の腕が、ミホの動きに合わせ、アルートを襲う。


 幸いなことに、ミホが振る腕の速度は決して早いわけではない。生まれたての子鹿がうまく歩けない様に、まだ腕の動かし方がぎこちない。


 アルートは、炎の腕を見ながら、回避する。


「ふふっ、ガラ空きだね―――水砲(スプライショット)


 微笑を浮かべるミホの開かれた手の中から、水の砲弾が発射され、アルートの身体に当たる。威力は弱いが、誰かに押された様な衝撃が伝わってくる。

――体勢を崩すには、それで十分だった。


「しまっ」


 炎の腕が、体勢を崩されたアルートに直撃。どうにか両腕を畳み、胸の前に手を組んだアルート。炎の腕は、そんなアルートの腕ごと強引に、吹き飛ばした。


 アルートは決して、油断していたわけではない。だがしかし、上位魔法以外の何かを使ってくるとは微塵も思っていなかった。上位魔法というのは、それ程までに、存在感と威圧感を感じさせるものであり、扱いの難しさと魔力消費量も一級品だからだ。


 たどたどしい体の動きと、皇女と遜色ないほどの魔法の熟練度。ちぐはぐの違和感が、より一層、アルートの勘を鈍らせ、結果―――両腕が犠牲となった。


@@@@@@@


 アイダ・ウェドが仲間になったとはいえ、皇女とマクルスだけになった第3部隊。マクルスの怪我を治し、疲労を回復するため、幾ばくかの休憩を取っていた。


 体内にいる島民から、焼き菓子と紅茶を貰い、ソファーと丸テーブルに形を変えたヴァールの上で食す。ゆったりとした時間が流れていた。


 我々が侵入していることは、とっくの昔に相手にバレている。なのに、一向に敵が攻めてこないのは、この城の作りと待ち構えている者に全幅の信頼を寄せているからだろう。


 急いだ所で事態が変わるわけではない。

相手が攻めてくる心配はなく、我々が帰る場所、守るべき場所は皇女の中にある。

ならば、ここで休憩していてもどうということはない。

皇女がそう判断し、マクルスはそれに従った。


 そんな中、第2部隊に動きが見られた。

ゴードンがアーノルドを(くだ)し、全員が門の前で座り込む中、アーノルドがカルパス王に関することを話し始めた。


「私たちの王、カルパス王は、普段は陽気で優しいお方なのだが、いざ(いくさ)になるとその性格は反転する。

ゴードン殿たちも知っているだろうが、この国は元々、多くの小国が集まる連合国家だった。だが、カルパス王の手によって、強引に統一されたのだ。

その手段として…人質として連れてこられたのが、今ここにいる私の妻たち。彼女たちは全員、小国の姫君なんだ」


 アーノルドの視線は、終始、下を向いている。


「今でこそ、仲は良いが最初は酷いものだった。作りの同じ家に住まわせ、私は日替わりか週替わりで帰る家を変える。妻との会話は少なく、作ってくれた飯を食い、寝るだけの生活だった。

私自身、王命だから仕方ない、そう諦めていた節もある。

そんな日々が1年近く続いたある日、新しい王命が発令された」


〝妻と子を成せ〟


「当然と言えば、当然だ。子が出来れば、より強く、この地に縛ることが出来る。妻への人質にすることも出来る。そしてなにより、小国への人質としての効果が上がる…

王命は絶対であり、背くことは出来ない。私たちは意を決し、1人ずつ子を設けた。その子ども達が、今そこにぼーっと立っている子たちだ。

…全員、操られている。そう―――カルパス王の〝月〟魔法によって」


@@@@@@@


「ありがとう。もう回復したよ。そろそろ行こう」


 マクルスはソファーから立ち上がり、まだ座っている皇女に述べる。


「…そうか。旦那様が良いと言うならいいんじゃろ。よし!気合い入れて行くかのっ!」


 皇女も立ち上がり、ソファーと丸テーブルだったヴァールも皇女の影へ戻る。


 2人は、歩き出す。

この戦争に、終止符を打つために。

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