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化物皇女と勇者?と魔王?  作者: 北田シヲン
第2章 世界の始まり
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14話:各隊の結末②

近々最終話まで投稿予定

 皇女とマクルス含む第3部隊の戦闘は、こちら側の勝利で幕を閉じたが、ゴードンとマルネ含む第2部隊の戦闘は、まだ続いていた。


 圧倒的な数の差を、アーノルドとそれを支える妻子たちの実力が埋め、戦場(いくさば)は拮抗していた。こちら側の被害はどんどんと増していく。


 アネモネとカミーユ含むチームは、マコトの防御に足止めされ、他の相手への攻撃ができずにいた。


 ゴードンの読みが外れる。

アネモネの性格はあれとして、実力だけは買っているため、戦場を駆け巡りながら、相手に甚大な被害を与えてくれると予想していた。


「あの盾の子だけではないな…後ろにいる青年もなかなか良い動きをする」


 顎に手を置き、呟く。

ゴードンが誉めたのは、マコトの後ろに、常に付かず離れずの位置にする青年の男。離れれば矢、近づけば槍による刺突攻撃が来る。マコトの隙を上手く埋めていた。


「ふぅ…しょうがないか。

マルネ、私は前に出る。指揮は任せたぞ」


「…かしこまりました。お気をつけて」


 ゴードンは覚悟を決める。後ろにいるマルネに隊の指示を任せ、前線へと繰り出す。そして、一直線に、敵の大将であるアーノルドの元へ駆けつけた。


 片手で剣を振り上げ、落とす。すかさず、アーノルドも武器を振り上げ、金属音と火花を散らしながら、剣同士がぶつかる。


「ははっ!ようやくお出ましか!待っていたぞ!ゴードン殿!」


 鍔迫り合いの中、心底嬉しそうにアーノルドが叫ぶ。


「…アーノルド殿!一つ提案がある!聞いてくれるか!?」


 固唾を飲み、ゴードンは敵大将に提案する。アーノルドは不思議そうな顔をしつつも、頷く。


「大将同士の!一騎討ちを願う!!」


 ゴードンは、双方の被害を考え、一騎打ちを提案する。


「…ふっ、はははっ!実に面白い男だ!!戦力ではそちらの方が上だと言うのに!」


 このまま戦いが続けば、恐らく、ゴードンたちが勝つだろう。魔法があれど、皇女ほどの実力がなければ、そう易々と数の差は埋められない。


 それが、素人ではなく、日々訓練された兵士たちであれば、尚更だ。だが、勝てはすれど、こちら側の被害も甚大なものになる。


 この戦いに勝とうとも、ここで終わりではない。大幅な戦略ダウンは、次の戦いでの負けへの付箋となる。


「承った!!この戦い、一騎打ちでの決着としようではないか!!」


 アーノルドは相手の事情を理解した上で、了承した。アーノルドからしても、妻や子どもが傷付くのは見たくない…全て、杞憂に終わるとしても、だ。


 双方共に剣を離し、大声で、戦闘中止の声を上げる。両軍ともに少し離れたところに陣取り、自軍に一騎討ちで勝敗を決する旨を伝える。


 反発するアネモネを、副団長のマルネが収め、ゴードンを送り出す。


 アーノルドは、13人の妻たち、一人一人を抱きしめ、手を握る。妻たちは、夫を送り出す。


 そして、両軍の真ん中に出来たスペースに、ゴードンとアーノルドが歩み出る。


 鞘から剣を抜き、構える。

2人の間に、言葉はもう要らない。視線と視線がぶつかる中、2人の中で同時にゴングが鳴った。


 最初から凄まじい攻防。剣と盾がぶつかり合い、魔法が飛び交う。


 2人は、どこか似ていた。

鍛え上げられた片手で両手剣を持ち、空いた手で盾を持つ。フルプレートの鎧は、装飾と色が違えど、機能は似ている。


 唯一、絶対的に違うのは、妻子持ちかどうか…それだけだ。ゴードンは、王に結婚を命令されなかった世界線のアーノルドと言っても、過言ではない…かもしれない。


勇気の心(ブレイブハート)!!」


 ゴードンが魔法を唱える。ゴードンは、火と心の2種類を扱う。そして、心の魔法は、部下や自身を奮い立たせる魔法が多い。


 唱えた魔法もまさにそれだ。弱気になった心に熱を注ぎ込み、向上させる。


 気の迷いは心の弱さから。

ゴードンの座右の銘である。


 感情の高まりは、身体の動きに直結する。ゴードンの猛攻が増し、少しずつ、形勢が傾き始める。


 だが、アーノルドもただやられるわけにはいかない。長年、騎士団長として積み上げてきた実績と経験が、彼を支える。


 魔法と剣術、体術を駆使し、どうにか五分五分に戻す。どちらかに傾けば、戻り、またどちらかに傾けば、戻る。


 そんな状況を、ただ見守ることしかできない面々。妻たちはハラハラと心配そうに見つめ、中には手を合わせ、天に願う者もいる。


 一方、第2部隊の殆どは、その場に悠然と立ち、騎士団長の戦う様を見ていた。幾度となく見てきたその背中が、何度も助けられてきたその背中が、負けるはずがないと、確信していた。


 勝敗は、ゴードンの勝利で幕を閉じる。

体勢を崩され、座り込むアーノルド。ゴードンの大剣が、アーノルドの大剣と盾を弾き飛ばし、ガラ空きになった相手の首元に、そっと剣を添える。


「はぁはぁ…私の負けだ……殺せ」


「…生憎、無駄な殺傷は嫌いでね」


 ゴードンは首元に添えている大剣をずらし、背中の鞘へと収めると、片膝を地面につき、座り込むアーノルドへ片手を伸ばす。


「ははっ!つくづく面白い漢だ…完敗だよ」


 アーノルドは伸ばされた手をぐっと掴むと、ゴードンの力を借りながら、立ち上がった。


 これにて、第2部隊の戦闘は終了。

両部隊ともに負傷者を出しながらも、死傷者は0人。それぞれ、治療を行いながら、アーノルドとその妻たち、ゴードンとマルネやアネモネたちが、扉の前へと集まっていた。


「この度は、夫を殺さずに命を拾っていただいたこと、感謝いたします」


 妻の1人アリエスが、ゴードンへと頭を下げる。


「しかし」


「いい。ここは私が話そう」


 言葉を続けようとするアリエスに、アーノルドが割って入る。アーノルドと妻全員の顔色は悪く、まとう空気は重い。固唾を飲みながら、アーノルドは続ける。


「命を助けてもらったこと、感謝しかない。だがしかし、この門はーーー我々全員を殺さないと、開かないようになっている」


 アーノルドは、ゴードンから目線を逸らし、言い淀む。その残酷な仕様に、ゴードンの側にいるマルネの眉間に皺がよる。


 一方、表情の変わらないゴードンは、勢いよく、ドシンッとその場に座り込んだ。


「ならば仕方がない。我々第2部隊の進軍は、ここまでだな」


 あぐらをかきながら、両腕を前に組む。さも当然のように、自らが任された軍の進軍中止を決めた。


 マルネはそんなゴードンのことが、好きだ。

自分の仁義に反することには、決して、屈しない。それが、人命が関わることであれば尚更だ。


 マルネは、表情を変えず、内心ニコニコと微笑みながら、後続にいるアネモネや他のまとめ役に伝達する。ゴードンの判断に、異議を唱える者は一人もいなかった。


 だがそれは、味方だけの話。敵であるアーノルドは心底驚いた顔をしている。


「なっ…!?そ、それで良いのか!?ゴードン殿の強さは、私以上!ここで進軍を止めれば、そちらの軍に大きな被害が出るのではないか!?」


 殺される他ない。負けた自分は殺されても文句は言えない。力のない自分が悪い。不甲斐ない自分だから、妻と子どもを守れない。


 自責の念に囚われていたアーノルドは、ゴードンの発言を受け、少々パニックに陥っていた。


 殺さない、と言った相手に、本当にいいのか?と尋ねている。殺してほしくない、死にたくない、死なせたくない。そう思いながら、真逆のことを問う。


「私より強く、頼りになるお方がいるからな」


 どこか遠くを見ながら、達観したゴードンの返しに、アーノルドは不思議と納得した。


 それから、敵味方関係なく、全員が武装を解除し、各員魔法で椅子やソファーを作り出すと、団欒とした空気が流れ始める。


 だが、中には異質を放っている存在もいた。アーノルドの子どもたちーーマコトを含む面々だ。


 妻たちは自分の子を傍に置き、座らせようとするが、子どもたちは操り手がいなくなった手操人形(マリオネット)のように、呆然と立っている。話しかけようと応答はなく、目に光が灯っていない。


 そんな子どもたちを、アネモネが不思議そうに見ていた。


「気になるかい?いや、気にならない方がおかしいか」


 バツの悪そうに、手で頭をかきながら、アーノルドが問いかける。


「ゴードン殿…いや、貴方たち全員に聞いてほしいことがある。私たちの王、カルパス・バルト・ガルステン王についてのことだ」


 負けを認めたアーノルドにとって、もう何も隠し立てする事はなかった。自らの国が傾くことになろうと、カルパス王が行ってきた行為を、今吐露しなければならない。そう決意し、話を続けた。

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