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化物皇女と勇者?と魔王?  作者: 北田シヲン
第2章 世界の始まり
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4話:騎士団総督 その2

 アルートの案が採用され、瞬く間に会場の準備が進む。

土魔法を扱うマクルスを筆頭に、石畳の床に、大理石に似た模様の柱と観客席が作られる。


 天井はなく、青空の下、試合が行われる。

騎士団主体の総督決定戦は、皇女が出ると言う事もあり、初日から満員御礼。

観客席には、住民全員分の席が用意され、馴染みの顔が並ぶ。


「司会を務めるマルルと」

「クルルです」


 翡翠の目、太眉、茶髪の双子姉妹が壇上に上がる。

タキシードに似た正装に袖を通し、首元の蝶ネクタイが可愛らしさを強調していた。


「くるっと♪」

「まるっと♪ルールの説明をするね」


 音魔法を穴の空いた箱に詰め込み、マイクのように音を拡散。


「ルールはすごーくシンプル」

「降参するか、相手が起きあがれなくなるまでぶっ倒したら勝ち」

「「簡単でしょ?」」


 幼く可愛い顔で、司会を続ける。


「もし死にそうになってもクルルと」

「マルルとお姉様が絶対に直してあげるから」

「「安心して殴り合ってね♡」」


 双子はウィンク。可愛らしさと狂気が混じり合っている。


「「それじゃー開幕だよー!」」


 両手をあげ、開幕を宣言する。

観客の歓声を浴びながら、1回戦の参加者が舞台の端から登場。


 1回戦は、バネルパーク皇国の三番隊隊長とアセナ狼国のアルートの対戦だ。


 バネルパーク皇国は六番隊全ての隊長、副隊長と副団長が参加を表明。

この時、団長はまだ復活していない。


 アセナ狼国は、王を筆頭にアルート率いる近衛騎士、パルムが所属する索敵部隊、国の防衛機関の守護大使しゅごたいしに分かれており、それぞれの指揮系統者と腕に自信のある者たちが参加。


 残りのマルルとクルルがいたリュース国や他に吸収した国々からは、代表者が参加。

ここで勝ち残れば残るほど、自分の評価が上げると信じ、参加する者も少なくない。



 アルートの提案の中に、観客たちを楽しませるもう一つの工夫があった。


 参加する観客たちは試合前にどちらが勝つか予想し、投票。

勝った側にはハンコの押された投票用紙が返され、それを大会終了後に景品と交換することができる。


 押印された用紙が多いほど良い景品と交換することができる。

金銭をかけるギャンブルと似ているが、出資額がないため、気軽に楽しむことが出来る。


 それにより、試合前に観客たちによる下馬票が出来上がる。


 一回戦の下馬票は、バネルパーク皇国三番隊隊長に傾いた。


 1点注意事項がある。

それは、自国の選手が出る試合には投票できない、というものだ。

自国民ならば、選手の力量をおおよそ把握しているため、下馬票の意図的な操作ができてしまうからだ。


 もし、アセナ狼国の自国民が投票することが出来たなら、下馬票は大きくアルートに傾いたことだろう。


 なぜならーーー


「試合開始!」


 アルートは今でこそマクルスの執事兼近衛兵として大人しいが、昔はバリバリの格闘派だった。

大人であっても相当な実力者でない限り、アルートに太刀打ち出来なかった。


 その結果、天狗になり、グレた。

自分が最強だと思い込み、文句ある者を暴力で従わせていたが、ある日、街に来ていたマクルスと出会い、ケンカを吹っかけた。


 アルートは強かった。

だが、それ以上に、マクルスが強すぎた。


 自分より年下の子に太刀打ち出来ないほどの圧倒的な強さを見せられ、アルートは改心。

マクルスに忠誠を誓い、紆余曲折あって近衛騎士団に入団した。


 そして、マクルスが王になるまでは、先代の王に仕えた。



 そんなアルートが得意とするのが、雷魔法だ。


 自らの身体に微弱の電気を流し、身体能力を向上させる。


 地面を蹴る。たった一歩で相手の前に。

一瞬の出来事に驚き、対応が遅れた三番隊隊長。

守りに入ろうと盾を正面に回そうとするが、アルートの拳の方が早かった。


 鎧の真ん中、鳩尾辺りにクリーンヒット。

声にならない声を吐き出し、倒れ込んだ。


 アルートは笑みをこぼす。笑うと、大きな犬歯がちらりと見えた。


「アセナ狼国近衛騎士団代表アルートの勝利〜!」


 司会のマルルが勝利を宣言。

一回戦は、下馬票を大きく覆す結果となった。


 アルートは、始祖であるアセナの血が他の者より濃い。そういった者は、似たような特徴が出る。


 獣耳が大きいものや、手の形や顔の形が違うもの、誰もが狼に似通った形になる。

そういった者ほど、魔力や腕力が強い。


 この現象は、アセナ狼国内でのみ発生。

近隣国では、獣耳が生えている者さえ、見たことがなかった。

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