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化物皇女と勇者?と魔王?  作者: 北田シヲン
第2章 世界の始まり
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1話:平和にさす影

「ん〜今日もいい天気じゃの〜」


「うん、本当にね。おはよう、ファン」


「もう起きておったのか!おはよう、マクルス」


雲ひとつない快晴の空。

皇女は寝室のベットで目を覚ます。


ソファーに座り、紅茶を飲むマクルスは、目覚めた皇女に、笑顔で声をかける。


戦争が終わり、半年が過ぎようとしていた。


 夫婦となった2人。

半年も経てば、畏まった話し方もなくなり、今ではもう随分と夫婦らしくなってきた。


「それじゃーわたしは、街の方を見てくるかの」


「いってらっしゃい」


 マクルスが見送り、皇女は城下町の方へ向かう。


「おっす!皇女様!ここでもアッガル、とれるようになったんだぜ?食べていくかい?」


「うむ!実に美味そうじゃ!」


 商店の男から赤と黄色のグラデーションが綺麗な果物を渡される。

皇女は、服の袖で果物の表面を拭き、豪快に喰らい付く。


「ん〜!美味い!バネルパークの頃より美味くなったんじゃないか?」


 シャクッと綺麗な音を立てながら、口の中で果汁が溢れ出す。

爽やかな甘味と程よい硬さ。その中で、皮の食感がアクセントを加えている。


「そうですかい?そう言ってもらえると嬉しくて、ニヤけちまうぜ!」


「な〜に、謙遜するでない!わたしは本当に美味いものにしか美味いと言わんぞ?今度、マクルスに内緒で城に届けといてくれんか?」


「まーた食べすぎかい?こっちも王様に注意されとるんで、駄目ですぜ?」


「ちっ、マクルスのやつめ。おっちゃんにまで手を広げておるとは…」


 悔しがりながら、商店を後にする皇女。


「あっ!おはようございます!皇女様!本日は〜これです!」


露天の少女から毎日のように渡されているアクセサリー。

今日は、ルビーがあしらわれたブレスレットだ。


「いつもいつもすまんの。其方のアクセサリーは他の者とは違う美しさがある。今日もありがとう」


「っ!!こ、こちらこそ、ありがとうございます!そんな言葉をもらえるなんて…っ」


「なんじゃ、泣くほど嬉しかったのか?よしよーし」


 不意の感謝の言葉に、驚き涙を流す少女。

皇女は優しく抱きしめ、頭を撫でる。


落ち着くのを待って、皇女は町のメインストリートへと向かう。


「あら〜皇女様じゃない!ねえ、聞いてよーうちの旦那がねー最近、家事を手伝うようになったのよぉ!」


「それはあれじゃ、いつも其方がしてくれていた有り難みを感じたんじゃろうな。彼なりの恩返しじゃろ」


「えーほんとかしら。でも、男ってやましい事があると、普段しないことしたりするじゃない?」


「ふむ、それは確かに。ちょっと怪しいかも」


「でっしょ〜それでそれでね、他にもあって……」


「ふむ、ふむ……」


 おばちゃんからの旦那の話を聞きながら、女子トークに花を咲かせる。


キリが良い所で話を切り上げ、皇女はメインストリートを進む。


「あ!こうじょ様〜!聞いて聞いて〜!」


「おはようございます、皇女さま。実は昨日」


「皇女様!」「皇女さま!」「こうじょ様!」


 皇女が町に降りれば、出会う人全員が振り返り、話しかけてくる。

その全てに皇女は答え、笑い合いながら、町の様子を確認する。日々の日課である。



 皇女たちが無人島に引っ越し、街を作り上げた後、ヴァールは、バネルパーク皇国の住民全員を、吐き出した。


 あの日、ヴァールは皇女の命令を受けたフリをして、住民たちを喰い殺さずに、収納していた。


住民たちは、皇女の中から、皇女の生活や戦いを見ていた。

人に対する思いやりなど微塵もなかった性格が少しずつ変わっていき、多くの人を救おうとした行動に、心を打たれた。


 住民たちの心は、変わっていた。

皇女を化け物と罵った自分たちの愚かさを悔い改め、贖罪のチャンスを待っていた。


 ヴァールは、それを知っていた。そうなる事を願っていた。

だからこそ、収納した後、皇女にバレないように、体内で上映を開始。

皇女の目から映像を、耳から音声を、心の声をセリフにし、大画面の映画館を作り出していた。


 最初は喰べられた恐怖と憤りから見ない者もいたが、徐々に見る人は増え、最後には全員が固唾を飲みながら、見ていた。


 元々、住民たちは皇女が大好きだ。

だからこそ、全員が心変わりすることが出来たのだろう。


 皇女も最初こそ驚いたものの、すぐに受け入れた。

あの旅で、受け入れることができる器量が出来ていたからだ。


 こうして、街にはバネルパークの職人たちの手が加わり、爆発的に成長を遂げた。

今では、バネルパークに勝るとも劣らない美しい都市となっている。


だが、そんな平和な日々に…影が差し込もうとしていた。

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