32話:決着
「ふははははは!!ラスボスと言うのは、どこの世界でも、二段階目があるってことを知らぬようだな!!」
総攻撃を受け、霧散したはずの魔王の声。何も無い空間が突如として歪む。光を捉えて離さないブラックホールの様に、黒く、ただただ黒く。
「これが、オレ様の…いいや、我が本来の姿。満身創痍の貴様らでは、荷が重いだろう?」
身体の大きさが膨れ上がり、その体積が数倍に増す。全身を黒い何かが覆い包み、その異形の姿はシルエットだけとなってもよく分かる。
人の姿は既になく、フロアを埋め尽くすほど大きな大蛇へと変わる。
「あレハ、マサか…カノ伝説ノ最果テの蛇?実在シタの!?」
この世界に住む者であれば、誰もが知っている空想上の生き物、それが最果ての蛇だ。地球で言うところの、ドラゴンに近い。
ただ、日本の様に神や精霊のような上位の存在ではなく、海外の様な神の敵、怪物、悪の象徴といったイメージが強い。
この世界にいる子どもたちであれば、幼い頃、両親から御伽噺で聞かされていることだろう。
『最果ての蛇は世界に対する悪である』。これが、子どもたちの共通認識だ。
「ほぉ…人の子でありながら、我が存在を知っておるとは。感心感心」
「ゆ、勇人!コイツはヤばイ!今のウチらで勝テル相手じゃ」
「…皆ンナは、逃ゲロ。俺ガ時間をカセグ」
「勇人…」
「ソレヲ言うノデアレバ、勇者でアる君が逃げルベキだ」
「マコト?」
「珍シク意見が合ッタじゃン?ココは、オレらに任セて、一旦帰りナ!」
「貴様と意見ガ合うナド…今日は雪ガ降るカモしれナイな」
「ハッ!酷い言イ様じゃン?デモ今は許シテやルヨ!マホ、勇人ノコと頼ムじゃン?」
「…クッ、分カっタゼ!」
マコト、ソウマの心意気を汲み、マホは涙目で、勇人の手を引く。
「待ッテ!マホ!ーーーカはッ」
勇人が、マホの方へ視線を移す。その隙を狙い、勇人の首筋にマコトが手刀を入れ、気絶させた。
「後ハ頼ンダよ、マホ」
「ウん…」
マホは、勇人を風に乗せ、入ってきた扉へと駆けていく。
「勇者を逃す、か…ふっ、実に良い仲間を持ったものだな。だが、我は手加減せんぞ?かかってこい!!」
「行くゾ!ソウマ!」
「あア!マコト!」
魔王対マコト、ソウマ。先ほどの総攻撃でほとんどの魔力を失った2人は、それでも必死に立ち向かう。
勇者を逃すため、最後の戦いが始まる。
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「(なんちゃって。そんな事しても、こやつらではまず勝てんじゃろうし、やるだけ無駄だな)」
今までの話は、全て、皇女の妄想である。実際は、勇者たちの総攻撃により、魔王は打ち倒され、勇人は皇女が作った偽物の側で膝をつき、涙を流している。
勇人たちの前で見せる皇女の姿は、勇人の姉と似ても似つかないが、素の皇女の姿は、とてもよく似ていた。それを、無意識に感じ取ったのか、勇人は心の隅っこで、皇女と姉を重ねていた。
種明かしをしよう。まず、皇女がどのタイミングで魔王と入れ替わったのか。それは、勇人に無数の土杭が襲いかかろうとしたあの時である。
青狼の攻撃を受け止め、魔王役のマクルスは、既に虫の息。魔法が使える様な状態ではなかった。だから、皇女は手助けを実施。
パーティ全員が魔王と青狼との戦いに注目している中、バレない様に、土杭を勇人の周り360度にセット。
その後、ヴァールの特殊能力:闇影と贋作造と変体を使う。
周りから見て死角となる自分の後ろに、贋作造を作り出し、機を見て、闇影を使い姿を隠して入れ替わり、マクルスの元へ。
そして、贋作に勇人を突き飛ばさせ、闇影で隠れた皇女が土杭を動かした。まさに、自作自演。だが、これで、勇人たちの中では皇女は死んで、思い出となり、パーティを抜ける良いきっかけとなった。
勇者パーティが偽皇女の死に、目を奪われている間に、簡易的な変体を使い、マクルスの姿と声だけを真似て、登場。似たような入れ替わり方法を使い、マクルスをヴァールの中へ収納し、入れ替わり完了。
ちなみに、完全なる変体をするには相手を喰わなければ駄目だが、簡易的なものであれば、真似る相手の一部を喰うことで可能になる。今回は、マクルスの髪を何本か頂戴した。
そして、勇者たちを煽り、魔王は倒され、一件落着というわけだ。めでたしめでたし。
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