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化物皇女と勇者?と魔王?  作者: 北田シヲン
第1章 勇者の旅
29/57

29話:勇者と魔王⑨

 夜が明け、朝を迎える。食料は底をつき、空腹とどうしようもない状況に、誰しもが苛ついていた。


 今日も何も進まない日が始まる。後方から近づいてくる軍団がいつ追いつくのか、それすらも分からない。


「この状況だからこそ思い出したのですが、昔、まだバネルパークがあった頃に、古文書を読んだのです。そこには、古の三柱 アイダ・ウェドを呼び出す方法が書かれていまして、今、その内容を思い出しました!この状況を、打破できるかもしれません!」


 少々強引ではあったが、今の状況だからこそ、勇人たちはそれを信じた。


思い出すように話しながら、皇女が指示を出す。


 皇女、マホ、マコトが正三角形を作るように、各辺の位置に立ち、呪文を唱える。


『世界を渡る白き竜よ。知恵を、恩恵を、力を、我ら小さき者に分け与えたまへ。境渡りの竜よ、今ここに、顕現せよ!』


 三角形の中心から光が漏れ出し、中からニュルっと、アイダ・ウェドが現れた。


神々しい光は、白き竜の鱗を照らし、紅蓮の瞳が勇者たちを捉える。


「我名はアイダ・ウェド。我に何ようか?小さき者たちよ」


 カッコ良く登場を決めたはいいが、頭がイカれているためか、無反応の勇者たち。実際、こんな畏まった召喚シーンはいらなかったのだが、アイダ・ウェドは昔から、どうもこういうのに憧れる節があるようで、皇女は仕方なく従ってあげたのだ。


 勇者たちの反応に、少ししょげたアイダ・ウェドだったが、そんな事はお構いなしに、話はとんとん拍子で進む。結果、竜の背中に乗り、勇者一行は崖を越えた。


 もちろん、怪しまれないように、無数の火の矢が飛んできたが、アイダ・ウェドにそんな攻撃が効くはずもなく、危なげなく、アセナ狼国へと到着したのであった。


 その後、アイダ・ウェドは飛び立った。勇者たちは、一切感謝することなく、前へ前へと目標に向かって、突き進む。


 目の前には、今まで蹂躙してきたどの国よりも大きな門がそびえ立っている。だが、いつもの光景とは違った。


 なんと、門が空いているのだ。それも全開に。まるで、勇者一行をもてなすかのように開かれている。


「空いテル…ナゼ?」


「ワナかも…気を、ツけロ」


 勇人たちの身体を蝕んでいた何かは、既に身体全身に回ったようで、全員が片言でしか話せなくなっていた。ちなみに、最初に話したのは勇人で、それに返事をしたのはマコト。


 門から入ると、真っ先に見えたのは城だ。遠目から見ても、その大きさはよく分かる。王都にあるガルステン城と大差ない大きさだ。


 門から城までは、一本道となっていて、左右には様々な店が立ち並ぶ。しかし、そこにはひとっこ1人いない。それもそのはず、住人たちの殆どが皇女の中に収納されているのだから。


「人ガいなイ…気配もカんジナい」


「オンな、おんナがいネェ…」


「(こいつはおかしくなってもまんまじゃの)」


 マホ、ソウマが言葉を発し、それにツッコミを入れる皇女。勇者一行は、城へと進むしか選択肢は無かった。


 大通りを進み、城の前へと到着。

今回のような非常事態の場合、本来であれば、城へと続く門は閉じられ、通りと門を繋ぐ可動橋も上がっている。この機会を狙って、賊が入らないようにするためだ。


更には、門の前には詰所があり、従者たちが常駐しているのだが、それももぬけの殻だ。


 橋は下げられ、門も盛大に開いている。まるで、勇者たちの侵入を歓迎するように。


 勇者たちは無言で進み、門を抜けると、そこは豪勢な中庭があった。


真ん中には盛大な噴水。変な銅像が所々に建っている。その周りには赤白黄青と色鮮やかな薔薇が咲き誇り、客人の目と鼻をもてなす。


「(綺麗じゃし、良い匂いじゃの〜そういや、正面から入ったことなかったな〜)」


 いつものマホとマコトであれば、皇女と一緒に薔薇を愛でるのだが、今の状況ではそうもいかない。


 勇者一行は、一切立ち止まることなく、スタスタと中庭を通り抜けていく。落ちている薔薇を踏みつけようとお構い無しに。


 中庭の先には、国の入り口で見た壮大な門とは比較にならないほど小さなーー通常サイズの門が待ち構えていた。門というより扉に近い。白木で作られたシンプルだが美しいデザイン。


「こノ先、イる」


「うン、イルイる」


「殺ソ!早グ殺ソっ!」


「魔王ォォ殺ズぅゥゥ!」


 勇人、ソウマ、マホ、マコト。おかしくなっているとはいえ、それぞれが扉の奥に、宿敵が待ち構えていることを察する。


「やット…オワる…」


 勇人はか細く呟きながら、扉を開ける。


「ふ、ふふふっははははは!!!待っていたぞぉ!勇者たちよぉ!!!」


 そこには、マルクス演じる、温度差凄まじい魔王が待っていた。


「(あちゃーあやつ、緊張して変な方向にいっておるのぉ。でもまあ、作戦通りではあるし、いっか)」


@@@


 アイダ・ウェドが現れ、会議室が手狭に感じ始めたその頃、勇者たちをアセナ狼国へと送り届けた後の話を、詰めていた。


「マクルス、其方は魔王じゃ。それらしく振る舞い、勇者たちとの激闘の末、やられよ。これは重大な任務じゃぞ?あまり弱いと裏ボスがいるんじゃないかと思われるし、強すぎても駄目じゃ。死なない程度に痛めつけながらも、自身も少しずつ攻撃をくらわなければならない」


「ゆ、勇者たちの実力が僕に近いとどうなるか分かりませんが、が、頑張ります!責任重大ですね…」


「うむ。最後のやられる間際は替わってやるから安心せい。じゃが、彼奴ら、魔王が極悪非道だと思っとるから、何かそれっぽいの考えといた方がいいかもな」


「――住民全てを喰らい、更なる力を得た、というのはどうでしょう?街に住民たちがいないのも、これで納得がつくかと」


 側近であるアルートが意見を述べる。


「ほぉ…なかなか良いアイディアではないか!それ、採用じゃ!」


「ありがとうございます」


 皇女からのお褒めの言葉にぺこりとお辞儀で返し、前を見ると、羨ましそうな目でこちらを見るマクルスと目が合った。心の中で「申し訳ございません」と述べ、軽く会釈をする。


「(やれやれ、王様には困ったものだ…それがまた愛らしいのですが)」


 内心毒づきながらも、先代から仕えているアルートにとって、マクルスはどこか自分の子どものような存在であった。


@@@


 アルートの提案した作戦に従い、マクルスは極悪非道な魔王役を演じていた。


「勇者たちよ、なぜ、街に誰もいないのか、気になっている事だろぉ…それはな?オレ様の腹の中にいるからだぁ!!!はっはっはっ!食ってやったぞ!自分の国の住人たちを、守るべき存在である住民たちを、自分の利益のために、食ってやったぞぉ!!!ほら、見ろぉオレ様の後ろを!!」


 大袈裟な身振り手振りを加えつつ、視線を自分の後ろに向ける。そこには、肉片と化した住民たちの亡骸が、山のように積まれていた。もちろん、ヴァールの贋作造で作った偽物ではあるが、出来栄えは本物の死体と遜色ない。


「オレは特殊な能力があってな?人の脳味噌を食う事で、自分を強化出来るんだぁ…どうだ、凄いだろぉ!?」


 マクルスが言った通り、偽死体の全てが首から上がない状態で放置されている。大量に出たであろう血が滴り、床を真っ赤に染めている。


「下衆ガァぁぁぁアアぁあァ!!!!!」


 起きてしまった残酷な現状に、正義感が最も強いマコトが一番に反応し、叫びながら盾を構え、魔王に向かって猪突猛進。


「かかってこい、勇者どもぉ…魔王の力、見せてやるぞぉ!!!」


 腕を広げ、身体を軽く後ろに仰け反り、強者のフリをする。魔王と勇者の戦いが、勃発した。

【作者からのお願い】

「面白い!」「楽しい!」「早く続きを読みたい」「ま、多少は楽しめたし応援してやるか」なんて思っていただけたのなら、広告下にある【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!序でに、ブックマークしてもらえたら嬉しいです!

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