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化物皇女と勇者?と魔王?  作者: 北田シヲン
第1章 勇者の旅
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28話:魔王と勇者⑧

「わたしは勇者たちと行動しなければならん。じゃから、後のことはマクルス、其方に任せるぞ?」


「はい、お任せください。マルファムル様の作戦を信じ、僕らは僕らの国を護ります!」


「うむ、よくぞ言った。クルルとマルルよ、そちらもマクルスに力を貸してやれ」


「「うん、わかったの!お姉様、ご武運を!」」


 皇女が勇者一行の元へ戻るほんの少し前、王であるマクルスに、アセナ狼国のことを任せ、旅立っていた。


 マクルスたちは、任された事を従順にこなしていた。




 西の大国アセナ狼国の周りは、断崖絶壁。

覗き込もうと底は見えず、崖の幅は1キロを優に超える。ジャンプで飛び越えることは不可能であり、魔法を使う他ない。


 普段は、大陸のどこからでも通れるよう、無数の橋が架けられているが、今回ばかりは、その全てが破壊され、魔法で飛んでいく以外の方法を絶たれている。


 ただ、方法はそれしか無いと分かっているのだが、勇者たちは、橋の前で立ち往生していた。


「クッソがぁァぁ!!!魔王ドもメ!!」


 怒り、怒鳴り散らす勇人。その風貌は、普段のおっとりとした性格からは想像できない。


「うちにマかセロ!灯レ!光ノ爆弾!シャイニング・ブラストォぉ!!」


 マホの杖より放たれたのは、光の爆弾。緩やかな軌道を描きながら、橋の向こうへ飛んでいく。


―――瞬間、赤と白の火線が宙を走る。狙いは確実。光の爆弾へと火の矢が命中する。


『ドゴォォォオオオオ!!!』


 凄まじい爆発音とともに、爆弾が破裂。夜の帳を晴らすように、光が拡散する。大きな塊だった光は、破裂するとともに、小さな隕石群へと姿を変える。やられてもタダではやれない、ど根性精神である。


「マダまだ!!シャイニング・ブラストぉぉ!!」


 続け様に光の爆弾が飛んでいき、またも爆裂し、小隕石が夜空を照らす。


 無数の隕石群が、橋を越え、アセナ狼国へ降り注ぐ。今後は、火線は走らない。ゆっくりと確実に迫りくる攻撃を前に、何も起きない。


 それもそのはず。アセナ狼国には、クルルとマルルの他に100を超える宮廷魔道士がおり、街単位ではなく、国土全土に、守護魔法をかけている。小さな隕石ごときでは、崩されるはずがないのだ。


 それを証明するように、無数の隕石群が守護魔法と衝突するも、無傷。ヒビ一つすら入ってない。


「クッそ!!ドうすンダよぉ!!」


 勇者たちは万策尽きていた。橋についた直後、マホが空駆を使い、向こうの様子を探ろうとしたが、すぐさま、火の矢の攻撃にあい、探索は中止。


 マホの魔法が効かないのであれば、前衛である勇人とマコトは使い物にならず、中距離のソウマの弓ではそもそも届かない。


「(ふむ、上手くやったものじゃな。流石は東の大国を束ねる王、といったところかの)」


「(だけどよ、嬢ちゃん。このままどうするつもりだ?こいつら、意地でも帰らないだろ?)」


「(まあ、そうじゃろうな。さて、どうしたもんかのぉー)」


 勇人たちは、橋の側にある森の中に、テントを設置し、とりあえず、休むことにした。向こう側から敵が空駆を使い、飛んでくる事を警戒し、常に見張りを立てながら。


 皇女に見張りの順番が回ってきた。


「(これは好機(チャンス)じゃの。ヴァール、頼む)」


「(あいよ、嬢ちゃん)」


 ヴァールは贋作造を使い、皇女の偽物を見張りに立たせた。皇女は、姿を消すため、闇影(やみかげ)を使った上で、空駆を使用し、マクルスの元へと向かうのであった。


@@@


「予想通りじゃが、彼奴ら、帰らんわ。諦めてはよ帰ってほしい」


「やはりそうですか…」


 アセナ狼国中央都市に戻ってきたはいいが、少し愚痴をこぼす皇女。


「ここからは持久戦でしょうか?」


「うむ。とりあえず、1週間ほど様子を見てみるか。食料も数少なくなっとるし、1週間は持たんじゃろうしな」


「分かりました。こちらも、警戒を緩めず、待ち続けます。よろしくお願いします、マルファムル様」


「こちらこそよろしく頼むぞ、マクルス。じゃそろそろ帰ろっかな。あ、そういや、マルクル姉妹はどうしてる?」


「2人なら疲れて寝てますよ。寝顔、見ていきますか?」


「うん見てく」


 食い気味にそう答え、豪華な客室で眠る姉妹の元へ、忍び足で向かう。手を繋ぎながら、顔を寄せ合い、安らかな顔で眠るクルルとマルルが、そこにいた。


「子どもって言うのは、どうしてこうも可愛いんじゃろなぁー」


「ほんとですねぇー可愛くてほっぺにキスしたくなっちゃいますねぇー」


「うむうむ、わかるわかるー…じゃが、マルクル姉妹の邪魔をするのも悪いし、名残惜しいが、本当にそろそろ帰ろうかな」


「か、かしこまりました。お気をつけて」


 姉妹の寝顔を覗き込みながら、ボソボソと呟く2人。皇女は満足したようで、空駆を使い、勇人たちの元へと帰っていった。


「マルファムル様のお子さんは、きっと可愛いんだろうなぁ…はぁー」


 マクルスは、大窓のある部屋の椅子に座り、恋に恋する乙女のように、空に浮かぶ月を眺め、ため息を吐く。


@@@


 それから1週間が過ぎた。


「はぁぁぁーーーーー何も出来んのに、なぜ帰らんのじゃぁぁぁーーー」


 作戦本部が行われている会議室に、壮大なため息とともに、皇女が押し掛けてきた。


 勇人たちは飽きもせず、マホが同じ魔法を放ち、破壊され、苛ついては遠吠えをする、そんな毎日を繰り返していた。


 狂った連中と1週間ずっと一緒にいるのは、皇女にとって苦痛でしかない。


「うーん、何か策はないでしょうか…」


「何もないじゃろー彼奴らは、魔王である其方とこの国にいる人々を皆殺しにするまで、いつまでも待ち続けるじゃろうしなーはぁーやっかいじゃー」


 どうしようもない状況に、対抗策が思いつかない皇女たちだったが、それを見かねた誰かが、いきなり、声をかけてきた。


「(ならばいっそのこと、勇者たちを呼んでみるというのは如何かな?)」


「ん?今誰が喋った?」


 突如聞こえてきた声。皇女は周りに視線を送るが、マクルスは不思議そうな顔をしている。


「あの、誰も何も言っておりませんが…」


「は?じゃあ、誰が?」


「(待て、嬢ちゃん。この感じは、中からだ)」


「(中じゃと?ヴァール以外、誰がいるんじゃ)」


「(この(かしこ)ぶった話し方は、まさか…)」


「(はっはっはっ!そのまさかだとも。久しいな、ヴァールよ)」


「(やっぱりか…いつの間に入り込んだ?ウェド)」


「(かの最果ての蛇さまが気付かなかったとは。我も上達したものだ)」


「(相変わらず、煩いやつ……いや待て。まさか、インティグル竜国を飲み込んだ時、妙な胸焼けがあったのは、貴様が原因か!?)」


「(はっはっはっ!その通りだとも。君に悟られぬよう上手く隠蔽できたと、我ながら思っているさ)」


「(はぁー相変わらずだな、ウェド)」


「(珍しいのぉ、ヴァールがこれほどまでに感情を表に出すなんて。それで、わたしの内に勝手に居候しているこやつは誰だ?)」


「(これはこれは。大変申し訳ございません。我名は、アイダ・ウェド。又の名を、(さかい)渡りの竜と申します。以後、お見知り置きを)」


 皇女の中、自分とヴァールとそれ以外の存在。自分よりも遥かに大きな竜の姿が、ハッキリと映し出される。


「(もしかして、古の三柱だったり?)」


「(いかにも。我、ヴァール、アセナが、世界を守護せし、古の三柱でございますな)」


「(おぉ!ずっと会いたいとは思ってたんじゃが、まさか、わたしの中にいたなんて!)」


 ヴァールから旧友がいることは聞いていたが、まさかこんな形で会うとは思っていなかった。皇女は驚きが隠せない。


 だが、外からみれば、皇女は、その場に突っ伏したまま動かなくなったので、若干の不気味さが拭えずにいた。


「あ、貴方、大丈夫なの?お、おーい」


 その場にいたパルムが、硬直している皇女へと話しかけるが、返事はない。


「む、無視しないでくださる?お〜い、聞こえてますか〜」


 にじり寄りながら、話しかけるが、声からは動揺の色が隠せない。さらに近付いていき、肩に触れようとした瞬間、


「うるさいのぉー今、話し込んどるんじゃ。邪魔するでないわ」


「はぁ!?こっちは貴方のことを心配して話しかけてあげてたのに!って聞きなさいよぉ!!」


 パルムを睨めつけ、言葉を返すが、すぐに視線は戻り、またも硬直。


「もうなんなのよ!」


 プンプンと怒りながら、パルムは、皇女から離れ、元にいた椅子に座る。


 それから少しして、皇女はやっと動き出した。


「今からヴァールの古き友人をここに出す。驚くだろうが、切りかかったりせぬようにな」


 突拍子のないことを言い出したかと思えば、皇女の影がヴァールへと変わり、ヴァールはその口を大きく開いた。蛇が食べた獲物を吐き出すように、大きな塊が飛び出す。


 アセナ狼国中央都市は、アセナ狼国全土で最も発展した都市である。そこにある作戦本部は、相当の広さを有している。しかし、ヴァールから吐き出されたそれが、起き上がると、途端、部屋が窮屈に思える。


「我名は、アイダ・ウェド。又の名を、(さかい)渡りの竜と言う。訳あって、皇女殿の中に居候しておったしがない竜だ。

アセナの血を引く獣人たちよ、数千年に渡り、よくぞこの地を守り通したものだ。はっはっはっ!アセナとの賭けは、我の負けのようですな」


 光を反射する美しい鱗を持った白き竜。陽気に話してはいるが、節々より漏れ出る力が、絶対的高位な存在であることを示していた。


 皇女を除く、その場にいる全員が、片膝をつき、最高位の礼をもって相対する。


「我が友であるヴァールが困ってるようなので、力を貸そうと思い、出てきた次第」


 アイダ・ウェドを含め、現状を突破する作戦を話す皇女。先ほど、心の中でまとめた話を、簡単にまとめて話す。


 その場にいる者は、頷くしかなかった。

自分たちが尊敬する神 アセナと同格の存在を前に、反論など出来るはずもない。


 作戦の内容は、至って簡単。

勇者たちを乗せ、アイダ・ウェドは断崖絶壁を渡る。その後、わざと魔王を討伐させ、アセナ狼国にいる住人たちを殺させることで、この戦争を終わらせる、というものだ。


 ただ、どうやって、アイダ・ウェドを召喚するのか、それが一番悩ましい所であった。


「我に秘策あり、ですな」


アイダ・ウェドは、どこか楽しそうに、そう言った。

【作者からのお願い】

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