表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化物皇女と勇者?と魔王?  作者: 北田シヲン
第1章 勇者の旅
21/57

21話:勇者と魔王①

 宿屋でぐっすりと睡眠を取った勇者たちは、移動しながらパンなどを食べ、なおも移動を続ける。

昼、夜も軽食と言っていい食事で済ませ、ただひたすらに目的地へと向かう。


 驚異の速度で、本来であれば、10日はかかる道のりを1週間に短縮することができた。


「あれが、最初の街…ごくりっ。

(こやつら、おかしくなっておるとはいえ、いきなり切りかかったりせんじゃろうな?)」


 内心ヒヤヒヤの皇女を他所に、勇人が先頭に立ち、街にある門の方へ向かう。

普段であれば、堂々と開かれているであろう門も、今は、人1人がやっと入れるほどしか空いていない。


 更に、その門の前には門番が立っており、街に入ろうとする者に検問をかけていた。

先客は数人。全員街の者だったらしく、すぐに門をくぐり、中へと入っていく。


「我は、リュース国 国立騎士団 団長アルバ・バイロンである。名を聞かせては貰えないか?」


「俺の名前は、嘉者熊勇人。ウェルムボストン王国で召喚された勇者だよ」


「ほぉ、貴殿が…」


 両者挨拶を済ます。

相手は、身長190を優に超え、ガタイの良さは、ボディビルダーを彷彿とさせる。

違う点をあげるとするならば、トレーニングでついた綺麗な筋肉ではなく、実戦で鍛えられた無骨な筋肉だということ。


「あのさ、一つ質問なんだけど。この国って西と東、どっちについてる?」


「ここに来たということは、もうわかっているのだろう?

―――我が国は!東の大国を支持する!!

西の大国の奴隷である貴殿らを、通すわけには行くまい!!」


 外見から想像できる、イメージ通りの野太い声が、大音量となって、勇人たちの行く手を阻む。


「そっか、入れないのか。じゃ、無理やり入るよ――――死ね…!」


 突如感情の糸が切れたように、殺意を剥き出しにする勇人は、普段では考えられない、驚異的な速度で宝剣を振り上げ、相手目掛けて振り下ろした。


 既に、抜剣していた相手は上段に構える。

だが、それは悪手としか言いようがなかった。


「きひっ!無駄無用無利益ぃぃ!!」


 突如、宝剣から青い炎が迸る。

一瞬にして、宝剣の温度は800度を超え、剣同士が触れた瞬間、相手の刀身は赤くなり、グニャリと曲がって、切断された。


 バックステップで避けていれば、こんなことにならなかったはずだ。

宝剣は、守りのなくなった相手の身体を、脳天から縦半分、真っ二つに切り裂いた。

 断面から血は一滴も出ない。

なぜなら、切られた瞬間から、高温により皮膚が焼け、止血されているためだ。


「魔王の手下ごときが!!俺に指図するなよ!!」


 グチャッと音を立てながら、地面に倒れ込む二つの身体。

勇人は、悪態をつきながら、相手の亡骸に蹴りを入れる。


「ふぅーみんな、行くよ…楽しい楽しい残党狩りダぁー!!!」


「「「オオぉーーー!!!」」」


 その国最強である騎士団長を、流れるような速さで殺した勇人。

仲間たちは、その状況に歓喜し、雄叫びを上げ、少し開かれた門へと近付いていく。


「うそだっ…団長が、そんな…」


「馬鹿かお前!団長の指示を忘れたのか!早く門を閉じるぞ!!!」


「くっ…!団長…!」


 団長は、部下である団員たちに指示を出していた。

万が一、自分に何かあった場合、すぐに門を閉め、我が国だけは守れ、と。


 門は、毎日、宮廷魔道士が魔力を込め、強度は並みの魔法では傷ひとつ付かないほどに、強固だ。

更に、街の周りには大きな塀が立ち並び、街へ入るには、東西南北の門から入るしかない。


 そして、今空いているのは西の門のみ。

すなわち、勇人たちの目の前にある門だけだ。

この門さえ閉めれば、敵は容易に攻め込めなくなる。


 もちろん、相手が塀を飛び越え、襲ってくることを考慮し、守護魔法で光の壁を上空に展開している。

これで、地面と上空、双方の侵入経路を断ったわけだ。


 そんなリュース国には、2人のお抱え宮廷魔道士がいる。

宮廷魔道士が多くいる国ほど強く、豊かである証明なのだが、リュース国はあえて、2人だけにしている。


 その理由は、この2人が圧倒的な強さを兼ね備えており、なおかつ、超がつくほどのわがままだからである!

自分たち以外の宮廷魔道士を認めず、過去、何度か雇った者は、次々と、嫌がらせを受け、辞めていった。


 そうこの2人――双子の宮廷魔道士の名前は、クルルとマルル。

幼く、可愛い外見のイメージとは裏腹に、心の中はどす黒い。


 そんな双子が今現在どうしているかというと、街の中央にそびえ立つ城から門を観察していた。

城下を一望できる屋上テラスから。


「あ〜あ、やられちゃったね、マル」


「うん、やられちゃったね、クル」


「あの剣やっかいだね〜どうする?どうやって殺そっか?」


「うーん、後で考えよ!とりあえず、下降りようよ!」


「うん!よし!じゃー、くるっと♪」

「まるっと♪」


「「ぶっ殺しちゃうぞ♪」」


 双子は、きゃっきゃっとはしゃぎながら、城の階段を降りていく。

迫りくる相手に恐怖など微塵も感じず、どうやれば殺せるか、それだけを楽しみにしながら。


@@@


 一方その頃、勇人たちはというと、目の前の門が直前で閉まってしまい、どうしようもない、八方塞がりの状況に陥っていた。


 だが、誰も何も話さない。

どうやって中に入るのか、作戦はどうするのか、聞くべきことは山ほどあるはずなのに、誰も何も話さず、ただ、門の方を見ている。


 異質な空気。

皇女だけが「なんじゃこいつら、きもっ」と内心思いはしたが、周りに合わせ、喋らず、その場で立ち尽くしていた。


 最初に動き出したのは、勇人だった。

ゆっくりとした足取りで、門へと近付いていく。


 腕を伸ばせば、門に触れられるほどの距離まで近付き、また、宝剣を振りかぶる。


「喰らえ、宝剣ぇんん!!!無慈悲の強奪(ルーツレスラブリー)ぃぃ!!!


 前回、マホが説明したように、勇者の宝剣は、剣の腹で触れた物を3つまで吸収することが出来る。

 だが、その物質が魔力を帯びていなければ、吸収することは出来ない。


 勇人は、それをなぜか理解していた。

だからこそ、閉じられている門に向かって、宝剣を振り下ろしているのだ。


 そして、宝剣の腹が、門に触れた直後、試験の時と同様、跡形もなく消失した。

その代わりに、宝剣に嵌め込まれている水晶に灯りが灯る。


「きひっ!こんなもんで、俺らを止められると思ってんのぉ?きひひひっ!」


「「「がっはははは!!!!!」」」


 勇人の不気味な笑いに、ソウマ、マホ、マコトも下品な笑いで答える。

一行は、堂々と、門から街の中へと入っていく。

皇女も遅れないように、付いていく。

少し、距離を置きながら。


 ここからの戦況は、一方的なものとなった。

団長なき後を継ぎ、副団長が指示を飛ばすが、勇者一行の力量は凄まじく、国民を守るために奮闘するも、無残に殺されていった。


 一人、また一人と次々に命を落とし、街中に血の花が咲き乱れ、血生臭い匂いが充満していく。


「なに、これ。おかしくなってるとはいえ、こんなの……残酷すぎる」


 目の前で行われている惨状に、皇女は何もできず、突っ立っている他なかった。

人を助けようと手を出せば、疑われ、自分も殺されるかもしれない―――なんてことは微塵も思っておらず、皇女はただ、仲間たちのことを心配していた。


「操られているとしても、心の中には自我が残っているはず…マコトさんは武人だし、ソウマさんやマホさんもこの世界で、死と隣り合わせの戦いを経験しているから、だから、どうにか耐えられるかもしれないけど、勇人さんは、恐らく耐えられない…」


 平和な日本で、戦場からかけ離れた平和な世界で、勇人は生きてきた。

人を殺したことは、もちろんない。

ゲーム内であれば、別だが、ゲームと現実では、重みが明らかに違う。


 仲間たちの心を救うため、どうすればいいのか、そう考えていた矢先、それは起こった。


「ボコボコボコ!!」


 石畳の道路が盛り上がり、まるで意思を持ったかのように動き出し、勇人たちと騎士団の間に、高い壁を作り出した。


「あぁ、クルル様とマルル様だ!お二人が、我々を助けてくださったのだ…!!」


「感謝いたします―――皆のもの、下がれー!!退却だー!!」


 団員たちが予想した通り、あの双子の仕業である。

副団長は声を上げ、団員たち全員を下がらせた。


 なおも動き続けている道路は、勇人たちを中心に、螺旋状に壁を作り出す。

不気味な笑いをあげながら、各々、壁を壊し始める。


 だがそこに、皇女はいない。壁の中に囚われていなかった。


 それはなぜか?

あまりの不気味さを前に、勇人たちから距離を取っていたからだ。

皇女が一人も殺していないのも該当していたが。


 その後、壁と道路は無数の螺旋を生み出しながらも、ゆっくりと動き出し、外からでは中の様子が分からないようになっていた。


「これでは、どこに皆さんがいるのか分かりませんね…あの壁より高いところから見れれば」


 皇女は辺りを確認しながら、高いところから見渡せる場所を探す。


「あった!あそこなら見えるはず!」


 見つけたのは、街の中心にそびえ立つ城だ。

双子が先ほどまでいた城を目指し、皇女は走り出した。


「かかったかかった!」


「予想通り予想通り!」


 それをどこからか見ていた双子が、不敵な笑みを浮かべながら、嬉しそうにはしゃぐ。


 勇者一行に、最大のピンチが訪れようとしていた。

【作者からのお願い】

「面白い!」「楽しい!」「早く続きを読みたい」「ま、多少は楽しめたし応援してやるか」なんて思っていただけたのなら、広告下にある【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

あと、ブックマークもしていただけますと、モチベーションが上がります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ