20話:戦争勃発
「東の大国のものです!それも、王を守護する部隊のもの!まさか、東の大国の王が、魔王だったとは…!
し、しかし、これは、明確な私の国への宣戦布告…例え、大国の王であろうと、許せませんね。
平和主義を願うウェルムボストン王国ですが、これは見過ごせません!
ここに集う全宮廷魔導士、騎士団員に告ぐ!我々は、東の大国より攻撃を受けた!!!
ここで引き下がっては、我らが国が廃る!!
国民の皆に伝えよ!―――――戦争だ!!!」
「「「おおおおおおおおおおー!!!」」」
王様の発言に感化され、玉座の間に集まっていた宮廷魔導士、騎士団員が一斉に声を上げる。
しかし、それだけではなく、勇者一行である勇人、マホ、マコト、ソウマも一緒に声を上げていた。
@@@
王様の発言は、すぐさま都中に広がり、瞬く間に、ウェルムボストン王国中へと広がっていった。
すぐさま、王様、側近、宮廷魔導士、騎士団の上層部、勇者一行は、会議室に集められ、作戦本部が開かれた。
進行は、王様自らが行う。
「皆さん、集まっていただきありがとうございます。早速ですが、今後の方針について話させてもらいます。
現状、魔王を倒せるのは、勇人殿が持つ勇者の宝剣のみ。ですので、勇者一行には先遣隊して、魔王討伐を担っていただきます。
よろしいですか?勇人殿」
「うん、大丈夫。それが俺の、いや俺たちの役目だって分かってるから。
みんなも異論ないよね?」
勇人の問いかけに、各々がうなづきで返す。
「では、勇者一行は、最短ルートで東の大国へ向かっていただきます。地図は、ラーサから受け取ってください。
私たちは、勇人殿の後を追うように進軍し、魔王を倒された後の帰り道の確保に力を尽くします。
では、これで作戦会議を終わうと思いますが、何か異論のある方は挙手を―――
いないようなので、これで終わります。
みなさん、相手は東の大国です。なにが起こるか分かりません。油断せずに、気を引き締めて行きましょう!」
@@@
勇者一行は、作戦会議が終わってすぐに、ラーサから地図を受け取った。
その後、回復アイテムなどの必要物資を買い足すと、家に帰ることも、酒屋で休憩することもなく、一切休まずに、王都を出た。
普段文句しか言わないソウマも、今回は、嫌な顔一つせずに、黙々と準備を進めていた。
それがどこか不気味で、皇女だけがその違和感を感じ取っていた。
一行は、マホの風駆を駆使し、最初の目的地へと向かう。
途中で最小限の休憩を取りながら、黙々と進んでいく。
3日ほど経ったある日、夜通し歩き続けていた疲れが出たようで、その日は宿屋で休むことになった。
全員がベットに入るやいなや、すぐに寝てしまったため、皇女は、宿屋から出て、近くにある丘の上で座り込み、ずっと疑問に思っていたことを呟いた。
もちろん、内なるヴァールに話しかけるために。
「なぁ、ヴァール。なぜあの帽子が落ちていただけで、東の大国の王が魔王だと分かったんじゃろう…わたしはそれに違和感しか感じないんだが、どう思う?」
「まあ、嬢ちゃんの言いたいことは、なんとなくわかるぜ。色々と考察はできる。
西と東、両国を戦わせるために、他の国がわざと落としていったって線もあるし、本当に東の大国がやったのかもしれない。
だけど、最も可能性が高いのは――戦争を始めるためのきっかけ作り、だ。
そうだろ、嬢ちゃん?」
「流石はヴァール、わたしの考えとぴったりじゃのぉ。
もちろん、この前の心大臣のようなどちらの国にも属さない連中は少なからずいるだろう。
バネルパーク皇国にいる時、そういった話を聞いたこともある。
でも、ほとんどの国が、西か東、どちらかの大国に属している」
「だけど、東の大国の王が変わってからというもの、半々だった勢力図は、徐々に東寄りに変わっていった」
「それを快く思わなかった西の王は、どうにかしようと、行動を起こしたんじゃな、きっと」
「そうか…それが、この戦争か。だとするならば、これから向かう場所は全て―――」
「ああ…全て、敵国。東の大国に属している国々、ということになるじゃろうな。
まあ、全て憶測でしかないが」
「まあそうだけど、その可能性が大いに高い気がするぜ、嬢ちゃん。
早く、勇者たちに言った方が」
「いや、それはダメだ。ヴァールもなんとなくは気付いておるじゃろ?
あやつら、おかしくなってるぞ」
「…やはり、そうか。嬢ちゃんの目線でしか見れないから気のせいかと思ってたんだけど。――確信を持ったのはいつだ?」
「確信を持ったのはつい最近。それも、この前の作戦会議の後のこと。あの薄っぺらい内容の、作戦会議と呼べるかすら怪しかったあれの後じゃ。
どんだけ緊迫した状態であろうと、休憩を促すのがソウマじゃ。それに釣られ、後押しするのが勇人。あの2人は、どんな状況であろうと、それを揺るがすことはない。正常な状態であればな」
「あの2人もそんなことで、確信を得られたとは思ってないだろうな。ダメな所が、功を成すとは、皮肉なもんだ」
「そう言ってやるなよ、ヴァール。そのおかげで助かったのは確かなんだから。まあ、他にも疑惑はあったがな」
「それは感じてたぜ。宝剣の時の捕虜に対する反応や盾の時のあの発言。もちろん、聞こえてたよな?」
「もちのろんさ!魔王の手下だと分かった後、勇人のやつ、コロスコロスコロス、って物騒なことを呟いておったの。おぉ〜怖い怖い!あの時は流石のわたしも、恐怖を感じたわ!」
「だよなぁー普段落ち着いているからこそ、あの変わり様はギャップが凄すぎて…」
「うむうむ、凄くわかる」
「でも待ってくれよ、嬢ちゃん。今怪しいのは、勇人とソウマだけで、女性陣は問題ないんじゃないのか?」
「いや、それが…2人も駄目みたいなんじゃ」
「何か、思い当たる点があるんだな?」
「うむ…あの2人とは、パーティに入ってからというもの、一緒にいる時間が長いじゃろ?だから、話の節々で探りを入れてたんじゃよ。
それで、分かったことがある」
「嬢ちゃん、それは?焦らさずに教えてくれよ。まあ、心が繋がってるから分かるんだけど、嬢ちゃんの口から聞きたいんだ」
「ヴァールのそういう所、好きじゃぞ、わたしは。
話を戻すと、あの2人と一緒にいる時、時たまにだが、わざと魔王の話を振ってみたんじゃよ。
魔王ってどんな存在なんでしょうかね?って、軽い感じで。
そしたら、あやつら―――――
「クズだ。人として、いや生物としてクズだろうな。紛れもなく。あぁ…早く殺してやりたいぃぃ!!!」
「わかるわかるわかる!うちの魔法全部使い切って、全身全霊で殺してやりたいぜ!!あっははははは!!!」
って具合で、随分とオムツが逝かれたように返しよってのぉー
それはそれで、恐怖を感じたものじゃ。
その時、ヴァールは寝とったから聞いておらんかったろうがの?」
「まさか、そんなことがあったとは…ちょっと待ってくれ、嬢ちゃん。時折言ってたってことは、他にも聞いてみたんだよな?」
「もちろんじゃ。だが、魔王のこととなると大抵は似たような返ししか言ってこんことが分かった。あやつらも、何かしらの魔法をかけられておるんじゃろうな」
「はぁ…じゃあ、勇者一行全員が、おかしくなってるってことか」
「ああ。非常に、数奇な物語じゃろ?普通、勇者と言えば、正義と世界のために戦う存在だと言うのに…西の大国め、ついに本性を曝け出してきよったの〜」
「嬢ちゃんはどう動く?この戦争、止めるのかい?」
「馬鹿を言うでない。分かっておろう、ヴァールよ。わたしは人の戦争には手を出さん。
長年生きてきて、人とは自己の利益のために他者を蔑ろにする存在と、理解しておるからの。
このまま、流れに乗ってついていくだけじゃよ。
だが、今までともに旅した経緯もあるし、こやつらだけは助けてやらんこともないがな」
「ははっ!あの冷酷非道な嬢ちゃんが、だいぶ人間臭くなったもんだ!」
「こやつらの影響じゃろうな。昔より、人を好きになった気がするよ…ってか、臭いってひどくない!?こんなんでも、ピチピチの乙女じゃぞ!?」
「酷くない酷くない。褒め言葉だぜ、嬢ちゃん?」
「うわぁー本当に褒め言葉だと思っとるぅーうわぁー」
「「ぷっ――あっははは!!」」
皇女とヴァールは語り合い、笑い合った。
今まで、全てを警戒し、面と向かって話すことを必要以上に避けていた。
その分、久しぶりの会話は、とても心地良いものとなった。
「いやぁ、久々にこんなに笑ったわ!ありがとうな、ヴァール」
「いいってことよ、嬢ちゃん。久々に笑って気分がいいのは、こっちも一緒だからよ」
「うむ、確かに!では、そろそろ戻ろうかの〜あんまり遅いと怪しまれそうじゃし」
「それと、眠いから、だろ?嬢ちゃん?」
「うっ、ヴァールには全てお見通しか」
こうして、皇女とヴァールは思考のすり合わせを終え、宿屋へと戻っていった。
三日月が夜を淡く照らし、宿屋から漏れ出る光が、人々に安心感を与える。そんな夜だった。
【作者からのお願い】
「面白い!」「楽しい!」「早く続きを読みたい」「ま、多少は楽しめたし応援してやるか」なんて思っていただけたのなら、広告下にある【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!
あと、ブックマークもしていただけますと、モチベーションが上がります!
よろしくお願いいたします!




