19話:癒輝の鎧③
皇女がリビングに着いた時には、もうすでに全員が集まっていた。
「おぉー!ファムさんかっこいい!!なんか大人の女性って感じがするぅ〜!!」
「確かに…これは良いな。あぁ…羨ましい限りだ」
「二人ともありがとう。自分で言うのもなんだけど、結構似合ってるって思ってます!」
少し照れながらもそう返すと、
「おいおい、なんだよ。お前らも装備新しくしてんじゃん」
ソウマが割り込んできた。
「まさかそれ、神の鍛冶屋で?」
「はい、そうですよ。まさか、ソウマさんも?」
「そのまさかじゃんよ。やっぱり憧れってあるよな、はははっ…」
普段から武器や防具に興味がなく、金があれば、女と酒に注ぎ込むソウマ。
だが、意外にもミーハーだったことが分かった。
「ソウマって案外」
「そうだよ!ミーハーだよ!悪いかよ!あんな大金入ったんだからよ、良いもん着たくなるじゃん!昔から憧れてたんだよ!!」
「べっつに〜悪いとは言ってませんけどぉ〜?」
「くっそ!絶対思ってやがる!」
珍しく、マホがソウマを弄り、顔を真っ赤にしながら悪態をつく。
そんな様子を微笑ましく見る皇女と、歪んだ顔で見るマコト。
「俺もそこで変えたよ。ソウマがオススメの店って言って、連れていってくれたんだ。
凄くはしゃいでたのは、そういうことだったんだね」
「な!ちょやめろ勇人!恥ずかしいだろうが!」
勇人の天然な発言により、ソウマはトドメを刺される形となった。
こうして、勇者一行、全員が神の鍛冶屋の武防具へと一新し、次の試験の場所である仏閣へと向かうのであった。
@@@
「なんだよ、これ…?」
マホの風駆を使い、目的地に着いた一行。
到着してすぐ、その場を見て、勇人が言葉を発した。
「なんでこんなにボロボロなんだ?」
「風化して壊れたって感じじゃないな。これは、物理的に誰かが壊したに違いない。そうしない限り、こんな風にはならない」
「そんなの誰がやったっていうんだよ!?この場所を知ってるのは、王座の間にいた人たちとうちらだけなんだぞ!?」
「まさか…玉座の間に、スパイがいた?」
「ん?スパイ?ってなんだよ、勇人」
「あ、ごめん。スパイって言うのは、敵国に入り込み、バレないように味方に情報を渡すやつのことだよ」
「…なるほど。では、勇人さんの予想ですと、そのスパイなるものが敵に情報を流し、わたしたちが着くよりも早く、ここに到着し、仏閣を破壊した、と言うわけですか」
「うん、恐らくだけど。何か証拠になるようなものがあると、確実なんだけど…」
「よし、みんな!そうと決まれば、証拠を探すぞ!だが、敵がまだいるかもしれない!ぼくとマホ、ファムくんであちら側を探す!勇人とソウマには向こうを任せる!
時は一刻を争う!各自、散開!!」
動揺する一行だったが、すぐに考えをまとめ、行動へと移す。
身体を動かし何かをしていないと、落ち着かなかったのが、本音なわけだが。
一行が到着してすぐ、目の前に飛び込んできたのは、ボロボロに壊された仏閣だった。
本来であれば、古来の技術で作れられた歴史ある五重の塔が、年月の風化に負けず、立派に立っているはずだった。
普段は、森の近くに立っており、木々の葉はいつも紅く、年中、紅葉が楽しめる場所だ。
ラーサから事前にその情報を得ていたマホは、綺麗な風景が台無しになっているのが、残念で仕方なかった。
こんな事件が起きなければ、勇人と2人、紅葉デートが出来た、と心の中で悔やむ。
その恨みからか、マホは目を見開き、必ず証拠を見つけてやる、と意気込み、必死に探していると、それを見つけた。
壊れた仏閣の破片が散らばっている中、それだけが異質に見えた。
「マコト!ファムさん!こっち来て!何か見つけた!!」
マホの呼び声に応え、2人が集まってくる。
「どうした、マホ?何を見つけた?」
「あれだよあれ!あの黒いやつ!」
「あれは―――帽子?でしょうか?」
指差すマホ。その指の先にある真っ黒な帽子へと、視線を促す。
「そう!それ!やっぱり帽子に見えるよな!
よっし!うちが取りにいくから、2人は何か起きそうだったら、すぐに伝えて!お願い!」
「いや待て。ぼくが行こう」
「え?マコトが?」
「ああ。ぼくにはこの大楯がある。それにマホが前にいてはぼくは何もできない。だけど、その逆であれば、マホが助けてくれるだろ?」
「うん、まあ確かに…わかった!マコトに任せるぜ!何かあっても、それが起こる前に止めるから!大船に乗ったつもりでいてくれよな!」
「ああ、了承した。頼んだよ、マホ。それに、ファムさん」
「ええ、任せてください。
(わたしのほってけぼり感が否めないけどね!)」
マコトの説得により、マコトが大楯を構えながらゆっくりと向かい、マホが後方でステッキを構え、何が起こっても対応できるように気を張っている。
「(ヴァール、周囲に気配は?)」
「(何もないぜ、嬢ちゃん。人も動物も、魔法の気配すら無いね)」
「(そうか。ならば、ここまで警戒する必要もないか)」
「(いや、油断は禁物だ。この前の彷徨いの森の時のような、超遠距離射撃があるかもしれないからな)」
「(それは確かにな。前回同様、ここにも木が多いからの)」
心の中でヴァールと話ながら、新しい武器を両手で構え、2人同様に身構える。
じりじりと帽子らしき物へと近づいて行くマコト。
そして、帽子に触れた瞬間――――――周りにあった木をなぎ倒しながら、高圧力の風を纏った見えない砲弾が、3人を吹き飛ばし、マコト、マホは守りきれずに命を落とした。
―――なんてこともなく、何も起きずに、ただ、マコトが帽子を拾い上げた。
遠目で見た通り、黒の帽子だった。いや正確には、黒のベレー帽であった。
マコトはそれを持ち、後ろで身構えていた2人の元へと帰ってくる。
初めて見る2人に対し、どこか見覚えのある皇女。しかし、その疑問は、
「うっ、ううっ!うおぇぇぇ!!!」
壮絶な嘔吐音とともに、その発生源へと興味が移った。
音のする方へ、女性陣たちが向かうと、男性陣がそこにいた。
その内の1人、ソウマが、勇人から少し離れた距離で、なおも嘔吐している。
マホがすぐに駆け寄り、背中をさすり、介抱する。
残された皇女とマコトは、茫然と立ち尽くす勇人の側へ。
「どうした?勇人」
「あれ」
勇人が指を指す。そこには、崩れた仏閣が山積みになっており、所々から、血が滴っていた。
血は瓦礫の間から流れ落ち、地面に溜まっている。まるで水溜りのように。
「ま、まさか、あれって…?」
「うん、たぶん。テルムとムルテのだと思う」
「そうか。試験の番人だから、ここを離れられなかったのか。それと、ぼくたちが来ると分かっていたならば、なおさら」
「うん…。」
俯きながらうなづく勇人。伸びた髪が顔を隠し、表情を読み取れない。
勇人は、言葉を続ける。
「あの2人と会うのは、試験の時だけだったけど、俺、結構好きだったんだよなぁ。
しっかり者でポーカーフェイスのテルムと、荒くれ者だけどすこーしは優しさがあるムルテ。
今回が最後の試験って聞いてたから、それが終わったら聞きたいことな、って思ってたこと、いっぱいあったんだ。
なのに、なのに!こんな結末おかしいよ!しっかり働いてた2人が、こんな無残な死に方…っ!」
「勇人さん…」「勇人…」
立ち尽くしながら、涙を流しながら、怒りを込めた言葉を吐き出す。
涙を拭うことも忘れ、珍しく声を荒げ、感情を露わにしている。
心配する2人と対照的な勇人。
込み上げてくる怒りに、溢れ出してきた憎しみが混ざり合い、激しい憎悪へと変わっていく。
「許せない…絶対に、殺してやるっ!!
テルム、ムルテ。2人の仇、必ず取るから。相手にも同じ目に合わせるから。
まず、足の腱を切って動けなくして、上から少しずつものを乗せていって、徐々に重くなる苦しみを味わせながら、殺していく…!でもそれだけじゃ」
「あ、勇人…さっき、こんなの見つけたんだけど」
ソウマを介抱していたマホが、3人の様子を見て、助け舟を出してくれた。
勇人の常軌を逸した変わり様に、恐怖を感じたからだ。
マホは、さきほどマコトが拾い上げた後、受け取った黒のベレー帽を、勇人に渡す。
「なに、これ?」
「えっと、あっちの方で見つけたんだよ!3人で探しててさ!」
「うん、そっか。犯人に繋がる手掛かりになるかもね。…うん、そうと決まったら、すぐに王様のところに戻ろう。俺たちじゃ、これが何か分からないから」
犯人の特定をいそぐ勇人の指示通りに、今さっき来た道のりを、マホの風駆を使い戻って行く。
休みたがりのソウマも、流石に空気を読み、王都ガルステンに着いてすぐ、王様の元へと急ぎ足で駆け込む。
「どうしました!?勇者たちよ!?」
「王様、話があります…!」
勇人は、憎悪の宿る瞳で、仏閣であった事を素直に正確に伝え、マホから受け取った黒のベレー帽を見せた。
「それは、まさか!?」
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