18話:癒輝の鎧②
あぁーやっと書けたぁー疲れたぁーでもやりきったぞー!!!
楽しみにして下さっていたそこのお方よ…待たせてしまい、すまなかったのぉー
どうか楽しんで読んでいただけますと、とてもとても嬉しいです。
皇女・マコトは、マホを元気付けるため、色々なところに訪れた。
普段は行かない値段帯が高めのお洒落なカフェ。
鞄やネックレス、靴や服などの高級ブランド店。
そして、最後に、王都にある伝説の工房に立ち寄った。
「ここが、神の鍛冶屋。値段の高さから今まで立ち寄ったことは無かったが」
「憧れの武器・防具ランキング毎年1位。
人生で一度はつけてみたいと思ってたけど、まさか、今日、うちの手に…!」
「神の鍛冶屋。ここがかの有名な…
(毎年毎年、わたしのバネルパーク皇国を凌ぎ、ランキング1位であり続ける憎き店…ついに出会えたのぉ)」
各々が緊張する中、工房の扉を開ける。
「いらっしゃい」
薄い紫の髪。片側にのみ伸びた毛が、顔半分を覆っている。
明るめの室内灯が、店内にいる主人の瞳をより輝かせる。
艶かしい紅蓮の瞳が、入ってきた3人を見定めるように動く。
「初めてのお客さんだね?」
「え、ええ。ずっと来たいとは思っていたんですが」
「敷居が高い、とでも思っていたんじゃない?図星?」
「ず、図星です。ぼくにはまだ早く、実力が伴っていないかと」
「早いかどうかは、君が決めるものじゃないよ。ここにいる子たちが決めることさ。
けど、実力が必要なのは確か。まあ、君なら、問題はないと思うけどね」
「そう、ですか?」
「うん、この眼に誓うよ。それで、他の二人も実力は十分なようだね。
店の中を自由に歩くといい。君たちのことを気に入った子の方から、呼びかけてくれるからさ」
がちがちに緊張するマコト。珍しく敬語で話しながら、主人の言った言葉通りに、店の中を歩き出した。
マホも皇女もそれに従うように歩き出す。
主人は女性だ。胸や下半身といった露出してはいけない最低部分だけを覆い隠し、それ以外は隠すことを忘れたかのような服装。何ぶん、布面積が少ない。
女主人は座っていた椅子から立ち上がり、3人の様子を観ている。
座っていて見えなかったが、バキバキに割れた美しい腹筋が、露わになっていた。
3人が店に入ってきた直後、紅蓮の瞳を輝かせ、大まかな実力を読み取り、自らの店に、我が子である武防具たちに、相応しい相手かどうか確認していた。
生まれた時から特殊な眼を持った女主人だからこそ出来る手法である。
その後、1人ずつ、事細かに念入りに観ていく。
マコト、マホが終わり、皇女へと視線を移してすぐ、その紅蓮の瞳が大きく見開かれた。
「き、君はまさか!?清廉潔白の乙女か!?」
「え?あ、はい!そうですけど…
(びっくりしたのぉ!いきなり大声を出すでないわ!てっきり、西の大国側では、その二つ名は知られていないのかと思っていたが、知っとるもんもいるんじゃの)」
「(その分、要警戒だぜ、嬢ちゃん)」
「(うむ、わかっとるよ。マコトとマホもおる。下手なことは言えんの)」
「生きていたのね、よかったぁ…バネルパーク皇国が滅んだという噂は、やっぱりデマだったんだー本当によかったぁー!本当に」
「いえ、それは嘘じゃありません。
バネルパーク皇国は、滅びました。わたしを除く全ての国民が、死にました」
「―――――そんな…噂は、本当だったの…君には、いえ、貴方には本当に感謝してる。
いきなりこんなことを言われても動揺すると思うんだけど、我が神の鍛冶屋がここまで成長してこれたのは、貴方の国の存在があったからなんだ。
敬意を込めて、最大の感謝を」
突然のお辞儀。深く、ただ深く。
90度を超える深々としたお辞儀と心からの感謝の言葉を前に、どういう事か理解できない様子の皇女。
お辞儀から戻り、相手の様子を見た女主人は、説明するように言葉を続ける。
「神の鍛冶屋が、毎年1位を貰えているのは、貴方の国がいたからなんだよ。さっきも言ったけど。
常に努力をし、新しいものを生み出さなければ、抜かされるという明確な恐怖心。
年々腕を上げ、まぐれではなく、実力で毎年2位の座を勝ち取り、去年は僅差で勝てはしたけど、今年であれば、どちらが勝っていたか分からなかった。
それほどまでに、貴方の国は脅威だったの。
だからこそ、非常に残念だよ。
―――貴方には、感謝の印を込めて、全身全霊でお礼がしたい。
貴方専用の武器と防具を、作らせて貰えないでしょうか?」
「え、あの、それはどういう―――?」
「ファムくん!これはとてつもなく名誉な事だ…!かの有名な神の鍛冶屋のご主人が、オーダーメイドで作ってくれるのだから!それもあちら側からお願いされる形なんて!!!」
皇女からすれば、武器は自分で作れるし、多少の守備力さえあれば、防具は何でもいい。なぜなら、本当に危険な場合はヴァールが喰ってくれるから。
だからこそ、武防具に対する愛がないのだ。
一方、皇女とは正反対に興奮した様子のマコトは、それがとても珍しく、素晴らしいものなのだと、必死で伝えようとしていた。
「そ、そんなに凄いことなんですか?でもわたし、武器は作れますし、防具もまだこのままで良いのですが…?」
「ダメだ!こんなチャンスはめったにない!ぼくにそのチャンスが貰えるというのであれば、土下座しながらお願いするぐらい凄いことなんだ!わかるかい!?ファムくん!!?」
「は、はあ」
キスしてしまいそうな近さ。とてつもない熱量。
少し引き気味の皇女との温度差は、誰が見ても確かだ。
「おいこら落ち着けよ、マコト!温度差凄いから!気付けー!」
「え!?はっ!す、すまない、ファムくん。あまりの出来事に、つい興奮してしまった」
「はぁー本当に………
ファムさん、マコトがここまで興奮するのには理由があるんだよ」
「理由、ですか?」
「神の鍛冶屋の女主人が、気に入った相手にのみ造る完全オーダーメイドのそれは、神器と呼ばれるほど強力なものなんだぜ!」
「マホ。後は、ぼくに引き継がせてくれ―――その武器は、手に持った瞬間、身に纏った瞬間、まるで生まれた時からこの感覚を知っているかのような錯覚を覚える。
それほどまでによく馴染み、自らの成長とともに強く、丈夫になる、と言われている」
「ま、そう噂されてるだけだけど!実際、自分と一緒に成長するとか、デマだと思ってるけどな!」
助けに入ってくれたマホと落ち着きを取り戻した武防具オタクのマコトの話から、今起こっていることが、驚異的な出来事だというのは理解した。
「なるほど、確かにそれはとても名誉で素晴らしいことなのですね…2人の言葉を聞いて、よく分かりました。
ご主人さん、して頂けると言うのであれば、お願いしても宜しいですか?」
「うん、わかった!よしキター!!こっち来て!普段使っている武器と今つけている防具を見せてもらってもいいかな!?」
先ほどまでクールで少しお茶目な感じだったのが、皇女のお願いにより、急にエンジンがかかったようで、仕事モードへと移行。
完璧主義者の女主人による、自分史上最高の武防具造りが、始まろうとしていた。
@@@
次の日の早朝。みんなが家のリビングへ集合する前に、皇女はお店へと訪れていた。
「いらっしゃい。よく来たね。もう出来てるけど、どうする?」
「もちろん、試着させていただきます」
「では、こちらへどうぞ」
女主人に店の奥へと案内されると、そこにあったのは、超近接戦闘を生業とする自分に合った防具と二振りの湾曲刀だった。
煌びやかな装飾は一切なく、黒と白のみで構成された防具。その下地は、今までのどの生地よりも薄く、それでいて強固な生地を使っていた。
この世界で、その生地を加工できる者は、片手で数えられるほどしかいない。
その1人が、神の鍛冶屋の女主人である。
白金で使った鎖帷子よりも強固で、殆どの武器を通さず、それでいて軽い。
その上に、アダマンタイトと呼ばれる、ダイヤモンドを超える硬度を持つ鉱石を加工した、胸当てや腕当てがあしらわれている。
プレートアーマーのように身体全身を覆う鎧とは違い、必要な部分にだけ、それがあしらわれている。
超近距離戦闘において、防御力も大切だが、それと同等にスピードも重要だ。
相手の行動を予測し、相手よりも早く動くことで、先手を取る。そんな皇女の戦い方に合った防具。
手先から腕、肘、肩を通って、胸まで。
下半身は、足先から脛、膝の辺りまで。
腹部から腰、ももにかけては黒の生地のみで構成されている。
純白というよりは銀や灰色に近いくすんだ白の中に、とても淡い水色が入り込むことで、言葉では上手く言い表せられない絶妙な色を表現していた。
皇女は、その防具に一目惚れ。今まで、こんなに心惹かれる防具を見たことがなかった。
「凄い…でも、こんなに素晴らしい物であれば、お値段も」
「お金はいらない。我が見込んだ相手にそんな無粋な物頂くわけにはいかない。むしろ、こっちがお金払ってでも造らせて欲しいぐらいさ!
それに、昨日、貴方の連れの2人が、武器も防具も一新してくれたからね。お店としては、それだけで十分な利益になってるよ」
「で、でも、それだとわたしの気が…」
「はあー珍しいことを言う子もいたもんだ!今まで造ってきた相手は、申し訳なさなんぞ微塵も感じずに、無料でもらえるラッキーって感じだったけど…
うーん、じゃーわかった。こうしよう。
今後、王都ガルステンに寄る度に、ここに寄ってちょうだい。
我が子たちの活躍を見せてほしい。こちらもこれ以上は引けないよ!」
「わ、わかりました。そちらがそれで宜しいのであれば…」
こうして、皇女は女主人から武防具を受け取り、全てを装備した。
恐ろしいほど肌になじみ、生まれた時から使っていたかのような感覚に襲われる。
両腰に湾曲刀をセットし、鞘から抜き出し、次は刀身へと視線を移す。
「右手は白、左手は黒にしてみた。ぱっと見でわかるようにね」
女主人の説明を片耳で聞きつつ、皇女は、実用性重視の無駄のない刀に、釘付けとなっていた。
「素材は、防具と同じアダマンタイトを使っていてどっちも一緒だから、強度や使い方の面では遜色ないよ。ただ、表面に纏わせる鉱石を変えたけどね。
それだけでこんなにもはっきりと色が変わるんだから、面白いもんさ!
それと、白は防具と同じ淡い水色を、黒は淡い深緑を織り込んでいるから、お店を出たらすぐにわかると思うよ。太陽に当たると、ね。
さあ、帰った帰った!そろそろ、勇者さまたちのところに行った方がいいんじゃない?」
「あ、はい!この武器も防具も、大事に使います!本当にありがとうございました!」
皇女は深々とお辞儀をすると、少し急ぎ足で店から出た。
差し込んできた陽光が、白き防具に当たり、淡い水色が白い砂浜の上を泳ぐ青い魚のように、ゆらゆらと映し出される。
「うわぁぁぁー…綺麗…」
心の底から、初めて本心から出た言葉だった。
皇女は自分の変化に少し驚きながらも、勇者たちが待つ家へと急ぐのだった。
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