16話:国境の街
今日は早めに投稿できました。楽しんで読んでいただけると嬉しいです!
※後で、新規の別作品も投稿しようと思いますので、そちらもどうぞ、よろしくお願いします。
勇者一行は、たっぷり休憩した後、2人に挨拶をして、祭壇を後にし、洞窟から出た。
入る前はまだ日が出ており、多少はマシだった彷徨いの森も、いつもの間にか日が落ち、なお一層、不気味さを際立たせていた。
だがしかし、皇女、マホの音属性魔法を駆使し、行きよりも楽に、近くの街へとたどり着いた。
「今日はこの街で宿を取ろうよ。正直言って、もうくたくた」
「わかる、すっげーわかる。宿決まったら、酒飲みに行こうぜー」
男2人が、また肩を組みながら先を歩いていく。いつも通りの光景だ。
「はぁー…いつもながら情けない」
「今日ぐらい許してやれよ!前回の試験よりだいぶ頑張ってたんだしさ!」
「そうですよ、マコトさん。今回はわたしの命も救って頂いたのですから、大目に見てあげてください」
「…わかった。2人がそう言うのなら。
そうだ、僕たちもご飯を食べに行かないか?ここらへんの店には詳しいんだ。幼い頃のまま、変わってなければ、だがね」
2人に説得され、渋々了承するマコト。
一行は、街にいくつかある宿屋から、とんがり帽子を連想させる形の5階建ての宿屋へと入っていく。
男子2人が先に入り、続けて、マホ、皇女、マコトの順で中へ。
そうすると、エントランスがすぐ目に入るような構造になっており、そこへ向かう。
建物の中は吹き抜けになっており、照度を抑えた室内灯が、少し薄暗い印象を与える。
壁や窓には、複数の花や植物が飾られている。
例えるならば、お洒落な魔女の館、といったところだ。
エントランスにたどり着いた勇人たちは、いつも通り、男女別で部屋を取る。
「かしこまりました。では、お部屋までご案内致しますので、荷物はこちらへお預けください」
まず、最初に勇人、ソウマが案内された。
その次に、マコトたちが案内されるのだが、続けて、エントランスから現れた案内人が、マコトを見た途端、
「―――――マ、マコト?」
口をあんぐりと開け、声を震わせながら、涙を流した。
このまま泣き崩れ、仕事が出来なくなるのではと、そう思わせるほどの涙が頬を伝う。
しかし、流石はホテルマン。自己の感情よりも仕事を、お客様を優先する。
「――っ。見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ございませんでした。お部屋までご案内いたします」
声を震わせながらも、涙が出るのを必死に堪え、マコトたちを案内する。
困惑する皇女とマホ。
当の本人であるマコトは、感情を殺し、側から見ると落ち着いているように見えた。
3人が部屋に案内され、案内人がお辞儀を最後に戻っていくと、
「すまない、2人とも。今日の夕飯は、僕抜きで頼む。この埋め合わせは必ず」
それだけ言うと、マコトは部屋から飛び出していった。
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「マコト、近いうちに大変なことが起きる。やから、お母さんと一緒にどっか遠いとこに逃げよ?お願いや」
それは、突然の提案だった。
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部屋から飛び出したマコトは、先ほどのホテルマンを追いかけた。
幸いなことに、相手は、すぐ近くでマコトが来ることを信じ、待っていた。
「母上、お久しぶりです。まさか、こんなところで働いていらっしゃるとは…」
一眼見て気が付いた。このホテルマンが自分の母であることに。
「ほんまに久しぶりやね、マコト。その口調、やっぱり、この街のこと忘れたかったんやな」
「…。」
「ほんま、正直な子やなぁ〜…今でも、うちらのこと許してへんのやろ?」
「…はい。僕はそれを変えたくて、王国騎士団に入ったんです」
「ふふっ。その頑固なとこ、誰に似たんやろな〜。
そや、この後時間ある?久々にご飯食べにいかへん?」
「…。」
マコトは、無言で頷く。
その後、2人は近くにある店に入り、一緒に夕飯を食べた。
幼い頃、よく親子で行った店だ。
久しぶりの母子、水入らずの時間。
複雑に絡まっていた糸が、少しずつ解けていくように、マコトの心境に変化をもたらしていく。
その日は、月の無い新月の夜だった。
夕飯とともに、嗜む程度に酒を飲み、会話を続ける2人。
夜も更け始め、母子は店を出て、家へと向かう。
マコトにとって、10年ぶりの実家だ。
10歳の時に王都の学園に入り、そこからは寮生活。
学園卒業後も、騎士団の宿で寄宿していたため、ただの一度も帰省したことはなかった。
それもこれも、あの日に誓った目標を胸に、努力していたからだ。
馴染みの店から、実家まではそう遠くなかった。徒歩5分ぐらいの距離だ。
幼かったあの日、父の後をつけた道を遡り、家へとたどり着いた。
母が扉を開け、先に入るが、マコトは扉の前で、一度立ち止まった。
「ここに帰ってくるのは、もう少し、後だと思っていたのだがな」
そう呟き、閉まった扉を開ける。
「おかえり、マコト」
「―――ただいま、母さん」
満面の笑みで出迎えてくれた母の顔は、幼い頃と何も変わらず、ただただ優しく、暖かさを感じるそんな笑顔だった。
熱くなる目頭を必死で抑え、やっとの思いで言葉を返すマコトだった。
母子は久しぶりの実家で、温かい紅茶を飲みながら、話を続けていたが、少し母の雰囲気が変わり、これから、重要な話を始めることが、直感的に理解できた。
「マコト、近いうちに大変なことが起きる。やから、お母さんと一緒にどっか遠いとこに逃げよ?お願いや」
それは、突然の提案だった。
なぜそんなことをいきなり言い出したのか理解できず、固まるマコト。
そんな娘の様子を見て、母は優しく話しかける。
「詳しいことは言えへんのやけど、近々、大きな戦いが起こる。やから、それに巻き込まれへんように、ここじゃない別の国へ逃げようと思っとる。マコトがいたら、お母さん、安心や。一緒に来てくれへん?」
母の言葉から、マコトは理解した。
大きな戦いとは、勇者と魔王の戦いを指し、それにより、この国が波乱の時を迎えることを示唆しているのだろうと。
「…母さん、安心してください。脅威は、僕たちが取り除きます。
僕は今、王様に選ばれ、勇者のパーティに所属しています。僕たちであれば、必ずや、魔王を討ち取り、この国に平和をもたらすことでしょう!だから安心して、この国に、この街にいればいい!!」
話すにつれ、感情が昂れ、声が荒く、大きくなっていく。
目の前の母親を安心させるため、笑顔で話すが、興奮した笑顔ほど、不気味なものはない。
「そ、そうか…マコトがそこまで言うんやったら、大丈夫なんやろな…わかった、うちはこの街で、あんたらが帰ってくるのを待っとるわ。やから、気をつけてな」
少し引きつった笑顔でそう答える。
だが、母はそこで理解した。
マコトももう手遅れなのだと。
@@@
その後、マコトは母に別れを告げ、宿に戻った。
マホ、皇女からの質問責めに見事に対応し、その日は床に就いた。
次の日の朝。勇者一行は、マホの風駆を使い、城へと戻っていく。
物陰から見送る母の眼から涙が流れ、落ちていった。
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