洞爺信大の影
フィズの記憶と情報を頼りに洞爺信大の魔術工房を直接叩きに向かった健達は空振りにあう。すでにクリーチャーの巣となり、突然変異した怪物達しか居なかったのだ。
「螺旋の獄炎!! もういっちょ、獄炎!!」
「霊槍トラチオンに貫かれたいようね!」
南野下水処理場のエアタン屋根付近でクリーチャー達との戦闘を終える。そこでエレメンタルが1人現れた。
「ナンバー471。どうして洞爺様の邪魔をするの」
「私はフィズ・エランドール。自我を持った同じホムンクルスの友人は悪事というものを嫌い、洞爺を止めるために私に名前をくれたのちに死んだ」
「ホムンクルスに名前など無意味」
「あの子は魔力供給を自ら断ってね。戦う力がなかったから、今思えば、Mウィルス計画を阻止するための自死」
「そんな理由? 私達は洞爺様に仕えて死ぬためのホムンクルス。計画のために死んで当たり前よ」
「違う! 断じて違うわ! まだ答えはないけれどホムンクルスは生物よ。生きていい! 生きていいはずよ。だけどエレメンタル! 邪魔をするならあなたを殺すことになる!」
「死など恐れない。ファイヤーボール!」
「はああああ!」
ボシュン。
狙われた健は右手で払うだけで火球を掻き消してしまう。
魔力が余りにも弱い。魔術を発動させるので精一杯に見えた。
「ナンバー165、使イナサイ。キミノチカラハソンナモノジャナイ!」
突如、カラスの使い魔が主人の声をつむぎ出す。エレメンタルはうっとりとその命令を聞く。
「洞爺様! ああ、仰せのままに!」
「洞爺だって!?」
健達の前でナンバー165は懐を探り短針銃を取り出すと自分の首にカチリと打ち込んだ。
「ぐあああああ!!」
「変異!? そんなのさせない! トラチオン!」
「遅イ!」
ドン!!
エレメンタルは向かって来たフィズを巨大化した右手で殴りつけた。
吹っ飛んだフィズはごろごろと転がりエアタンから終沈という浄水場のフェンスまで飛ばされてしまう。
すでに全身を巨大化させ終えたナンバー165は肉体が灰色に変わってしまう。
「グルウウウアアアア!」
ドンドンドンドンドン!!
化け物の左右のパンチを腕をクロスさせてガードする。
「螺旋の獄炎!!」
「グアアアア、ギャァァア!!」
ナンバー165はよろめいてパタリと倒れたまま動かなくなる。次第に身体が塵となって消えていく。
「倒した、みたいね
「あぁ、傷は?」
「大丈夫」
「安賀多シスベシ、安賀多シスベシ、カァ!」
「ファイヤーボルト! ファイヤーボルト!」
健は火の矢を次々とはなってカラスを追い払った。