夜会
インターフォンを押すとメイドが笹山邸に迎え入れてくれた。
ロビーに勢揃いする魔術師が6人とも健達を無遠慮に眺める。
「ちっ、女か」
「ふぉっふぉっふぉ。賭けはワシの勝ちじゃな」
「こんなときに賭けか。悪趣味でよかったよ」と健はいった。
女声の練習の成果か魔術師達も女装とは気づかなかった。雑魚はともかく魔術師達の誤解はいちいち解かないほうが良いだろう。まじないを掛けられる場合、そういった齟齬が魔術の成功率を著しく落としてしまうものだ。
「やあ、これで声をかけた全員だねえ。よろしく頼むよ。今日は洞爺信大についての処分に続いて、彼の人類惑星化計画についてだ」
「その前に魔術師協会をも襲撃した洞爺信大には処刑執行命令が世界各地で承認されたわ」
小さなサラマンダーを足元に這わせる女魔術師が捕捉するように健達を見ながら話した。
「ふん。新人研修か。それもいいだろう」
「なるほどな」
脳筋、ジジイ、眼鏡、サラマンダー、根暗リーマン、ロリっ子。と健は彼ら6人にあだ名をつけた。
「続けて」とフィズはいった。
眼鏡が人類惑星化計画について再び話す。
「洞爺信大は我らの敵になったねえ。彼の人類惑星化計画はホムンクルスをクリーチャー化させ、ホムンクルスに感染したMウィルスを人類にも感染させること。終局的にはMウィルスでできたねえ、肉の月を産み出し、地球規模でホムンクルスとクリーチャーを自由に操ることなのよ」
ロリっ子はワンピース姿に似合わず腕組みをすると呟いた。
「洞爺め、過去に囚われおって」
「ふぉっふぉっふぉ。過去だけは誰しもが捨てられぬモノよ」
ジジイが喋ると脳筋は巻くしたてる。
「なんだ? 昔話か? なにがあったか知らねーが。倒しゃいいんだよ! 倒しゃ!」
根暗リーマンとサラマンダーが続く。
「Mウィルスのワクチンはロンドンから空輸されるようだ」
「まずは菜畑空港を防衛しましょう。ワクチンは最重要よ」
「うむ。わかった。ワシは魔術師協会系列の培養施設、二岡研究所を防衛しよう」
「よし! これで終わりか? なら俺は好きにやらせてもらうぜ!!」
脳筋はそういって笹山邸を出ていく。
「さーてねえ。安賀多家はどう動くかねえ」
「俺達は洞爺信大の魔術工房を探すさ。なに合間に手伝いをするから心配ないぜ」
「ええ、お任せ下さいな」