亡骸
二岡研究所のロビーは誰一人と姿は見えず閑散としていた。天童老師の結界は消え失せ、あれだけ居た職員がつくりだした活気もなくなった。
いや何らかの姿はあった。
天童老師の死体だ。
魂を吸いとられたようにロビーの奥、エレベーター付近で仰向けに倒れて息絶えていた。
あとは痕跡を残さずに人間が消えていた。五階建てのビルに詰める100人ばかりの人間達が消えた。
冗談じゃないぞ。冗談じゃない。
「なにが起きたんですの」
「わからないわ」
健だけは直感的に理解していた。
彼らは全員、空にいる、と。
どうしてこんなことができる!
待て、まだそうと決まったわけじゃない。いや、そうなんだ。くそ!
護衛車に乗ってきた者達だけが二岡研究所を出入りしていた。
皆一様に不安を感じていたときだ。健はケイに質問された。
「あなたは外のあれが何でできているか、わかるのでしょうね」
「確信はない。けどなんだって俺に聞くんだ」
「簡単ですわ。あなただけ怒っているんですもの。それでピンときましたわ。ここの職員達のこと」
「たぶん。そうだと思う」
「ねえ、なに? まさか」
「そのまさか、ですわ。してやられた、ということ」
「二人の手当てが終わったらでたほうがいいわね」
「賛成ですわ。こんな気味が悪いところ滞在出来ません。それに天童老師の遺体も笹山邸に移送して調査しませんと」
「俺は残るよ。感が当たるはずだ。フィズ、君もケイさんについていって」
「わかった。大事なことなのね。死なないで」
「うん」
「なんだかわかりませんけど、わかりましたわ」




