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ひんやり⑥

 その呪は橋の上で行う。

 橋はあちらとこちらの境目。

 境目にはちからがあるらしい。


 逢魔が時、橋の真ん中で「さようなら」

 逆方向に進み、相手が橋を渡り切る前に後足で砂を三度かけ、振りかえらない。それで縁切り。


 お呪いにさえ頼りたかった。

 傍にいるだけで惨めになる。

 どうしてこんなに違うの。

 同じ日に同じお腹から生まれて。

 

 忘れ物。

 橋の中央で引きかえすつもりで。

「あ、忘れ物」

 言ったのは彼女。

「先帰ってて。さようなら」

「さよなら」

 これ幸いと私も背を向け――ざ、ざ、ざと三度聞いた。砂を駆ける音を。

 

 さようなら?


 思わず振りかえった。


 あちらで彼女も振りかえっていた。

 唇を固く、固く結んで。


 境目にはちからがあるらしい/三塚日月


2020/7/4 第66回 #Twitter300字ss @Tw300ss お題/橋

//架空のお呪いです。ひとが出かけた/帰ったあとは、そのかたが川を越えるまで玄関を掃いてはいけない(縁切りになってしまう?)――というのがベースです。

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