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ふたり①

 緞帳の裏で足は竦んでいた。

「緊張しないおまじない、いる?」

 鉄の心臓。怖いもの知らず。そんな部長は左掌を見せて、右指をぴんとたてる。

「掌に人って書いて……」

 知ってる。誰だって知ってる。迷信だって。

 しかも。

「……入り」

「え?」

「いまの、入りです。人じゃなくて」

「ええ? 人だって。ほら」

「……違いますよ」

「見る方向が悪い」

 部長は隣に並び左手を上げると、視線でこちらにも真似るよう促した。莫迦げてる。そう思いながら手を掲げれば、なめらかな右指が掌に触れる。

「はい!?」

「まーる」

 円を描き終え、掌をぽん、と叩く。

「……よ、余計緊張しましたけど」

「先輩の誤字、指摘できれば余裕余裕」


 緞帳が上がる。


2020/5/2 第64回 #Twitter300字ss @Tw300ss お題 / 書く

タイトル / 緊張緩和

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