苦節の果ての甘き報酬っ!
一発ネタです。
「どりゃぁっ!」
オレは、『竜殺し』のグレートソードをドラゴンの首に叩き込んだ!。
派手なエフェクトが飛んで、オレの攻撃がクリティカル・ヒットした事が示される。
やった!。
ズズズンン・・・・・
ゆっくりとドラゴンの首が落ち、それを追う様にゆっくりとドラゴンの体が崩折れる。
「ふう。」
オレは、重たい『竜殺し』のグレートソードの先を地面に置いて休み、大きなため息をついた。
期待に満ちた目で今倒したドラゴンを見守る。
その姿は光に包まれ、ゆっくりと輪郭が薄れていく。
「ごくり。」
オレは固唾を呑んで待つ。
すると・・・
チャーララララァーーー
『竜の五色の玉が出現しました!』
景気の良い効果音とともに、待ちに待ったメッセージが頭の中に響き渡り、竜の体があった場所に、光り輝く『竜の五色の玉』が出現した!。
オレは、震える手でそれを拾う。大事に大事にそっと壊れないように。壊れるはずもないゲーム内アイテムを。イベント『輝夜』最後のアイテムを。
オレの心に抑え切れない喜びがあふれた。
長かった・・・(退屈な苦労の描写なので次の切れ目まで飛ばす事推奨w)
天竺山に行って『仏の石』を手に入れ、それを『滴る水のノミ』でただひたすらに延々と削って『仏の石の鉢』を作り、
『金の山』に行って『鉱毒』に蝕まれながら『金の鉱石スライム』を延々と倒して『金の鉱石』を集め、『銀の山』に行って『鉱毒』に蝕まれながら『銀の鉱石スライム』を延々と倒して『銀の鉱石』を集め、『ミキモト海』に行って『酸欠』に体力を削られながら『アコヤ貝』を倒してドロップ率0.1%の『真珠』を集め、町に戻って『金の鉱石』と『銀の鉱石』を精錬して『金の塊』と『銀の塊』を作り、『真珠』と『金の塊』と『銀の塊』を持って『最高に腕の良い職人』に渡して『蓬莱の玉枝』を作ってもらい、請求された目の玉が飛び出そうな金額の加工代をこれまでに溜め込んだゴールドの半分を使って払い、
しょっちゅう溶岩が落ちて来たり足元が崩れたりする『ベスビアス山の迷宮』に潜って、その最深部にいるファイヤーラットを倒して『火ネズミの毛』を集め、それを織って『火ネズミの皮衣』を作り、
激ムズのアクションで、群がり襲い来るカイエンの攻撃をかわしながら『海燕の繁殖地』を回って『燕の子安貝』(取ると、つぶらな目のヒナがそれを守ろうとして悲しそうに泣くイベントつき。)を手に入れ、
そして、ワールドマップを北へ南へはたまた西へと駆け巡って長い会話イベントと討伐やらアイテム入手やらの小クエストをやって色々な称号をもらうお役所仕事のようなイベントをこなして、やっと『竜殺し候補』の称号をもらって、大神殿でグレートソードに『竜殺し』の祝福をかけてもらって、延々とモンスターを倒しながら『竜の山』に登って、ドラゴンとの激闘を繰り広げて、ついに最後のアイテム『竜の五色の玉』を・・・・・手に入れたっ!。
ふうーーー、疲っかれた。
VRだから、お菓子を片手にゲームをやるなんて事が出来ないからなぁ。
でも、それだけに、イベントをこなした後の充実感は格別・・・
いやダメだ!。オレはここで心を引き締める。まだイベントは終わったわけではない。
危険に満ちたこの『竜の山』を無事に降り、『カグヤ』の待つ東の町まで行かなければならないのだから。
『99歩をもって、道の半ばと成せ。』大昔の偉い人の格言を胸に、オレは慎重に『竜の山』を降って行った。
そして、無事、東の町に着いたオレは、沸き立つ心をこらえながら、『カグヤ』の屋敷に向かう。
さあ、この長いイベントのクライマックスだ!。『カグヤ』とのムフフなイベントっ!。
困難な試練の後の格別のご褒美っ!。
バーチャルリアリティーだからこその、触感つき匂いつきのこちらの行動に反応してくれる立体的でリアルな映像のNPCとのムフフっ!。
その体験はまさに本物の女の子とのムムフな体験だという。
オレは鼻息荒くもどかしく、集めたアイテムを屋敷の門のNPCに見せ、中に入れてもらって屋敷の中を進んだ。
と、正面の『カグヤ』の部屋の扉がバンと開き、あられもない姿をしたスーパーナイスバディな『カグヤ』がうれしそうに両手を広げてオレを迎えてくれる!。
オレは、ムフフな妄想に心をふくらませ、『カグヤ』に向かって足を速める!。
さあ、いよいよだ!。オレは手を伸ばし『カグヤ』と抱き合おうとした・・・・
その時だった。
いてぇーーーーっ!!!
オレは、股間に激痛を感じた。
そして、頭の中に響き渡るアナウンス。
「ビィービィービィー、緊急事態。緊急事態。プレイヤーの肉体にトラブルが発生しました。安全のため、強制ログアウト致します。5、4、・・・」
おい!、ちょっと待てっ!ここまで来て、そんな殺生な!ログアウトとかそんなぁーーーーーーっ!!!!!。
動かせなくなるゲーム内のオレの体。ぴたっと動かなくなる『カグヤ』。
・・・2、1、ログアウト」
「いってぇー・・・」
現実に戻ったオレはつぶやき、痛みの原因に目をやった。
カグヤイベントの最後で興奮し、勃起して大きくなったオレのムスコの根元に、採尿チューブの固定リングが、がっちりと食い込んでいた。
VRゲーム中は、感覚の混乱を防ぐため、痛覚等の危険を知らせる感覚を除いて、リアルの肉体の感覚は遮断され、肉体の維持は意思によらない反射に任される。だが、そうすると、おしっこなどはもらしてしまう事になる。そこで、その対策が必要になるわけだけれど。
方法は、おむつ、採尿器、尿道カテーテルの3つ。ただ、女性の場合は採尿器は固定が難しく、男性の場合は尿道カテーテルは苦痛と入れにくさのせいで、それぞれ使う人がほとんどいない。で、いい年をしておむつはさすがに恥ずかしいので、オレは採尿器を使っていたんだけど。
ムスコの大きさが最小5cmから最大15cmまで大きく変化するオレは、以前、プレイ中にこれが外れてシートをおしっこで汚した事があった。
それで、外れないようにとムスコが縮んだ時のサイズの固定リングを使ってたら・・・(泣っ!)。
根元をがっちりと締め付けられたムスコは紫色にうっ血して縮む気配を見せない。
このまま血行が止まってたら、腐り落ちてしまうのじゃないか?。
怖くなったオレは、よろよろとシートから体を起こし、机の上からスマホを取ると救急車を呼んだ。
多大な時間と苦労の末、やっとイベントを達成したのに、ご褒美イベントの直前でログアウトさせられ、下半身むき出しで採尿器をぶら下げたままのあられもない姿で病院に運ばれた傷心のオレは、同じ失敗を繰り返すまいと、恥ずかしさをこらえて『大人用おむつ』をポチるのだった。
ちゃんちゃん!
VRゲーム中のリアルの体にスポットを当ててみました。
柔らかくて小さいものは、入り口が大きいとちょっと動いただけで外れてしまうのです。