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最強無敵のお父さん 最強過ぎて勇者(娘)パーティから追放される  作者: 日之浦 拓
本編(完結済み)

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63/800

父、疑われる

本日より拙作「威圧感◎」の番外編その2の更新も再開しております。良ければそちらもお読みいただければ嬉しいです。

「陛下のお言葉に異を唱えるなど、何様のつもりだ!」

「あれしきの功で図に乗るか、平民風情が!」

「不敬罪だ! 今すぐその男の首を刎ねよ!」


 ジョバンノ王の決定に異を唱えたニックに、これまでとは比較にならないほどの罵声が飛んでくる。だがそれを受けるニックは周囲の雑音など意に介することなく王の姿を見据え続ける。


「静まれ! 静まるのだ!」


 騒ぎ立てる貴族達を、大臣の声が諌める。そうして謁見の間に静寂が戻ったところで、ジョバンノ王が口を開いた。


「ふむ。余の決定を不服と申すか……ハラガよ、どうすればいいと思う?」


「そうですな。陛下の賢明なご判断に異を唱えるとなれば、相応の考えがあるのではないでしょうか? まずはそれを聞いてみるのが宜しいかと」


「そうか。そうだな。ではニックとやら、そちの考えを語って聞かせよ。直答を許す」


「ハッ」


 王の言葉を受け、ニックは一度頭を下げて礼をしてから再び顔をあげその口を開いた。


「私は為さねばならぬ目的のため、世界を回る旅をしております。今はまだその道半ば。故にこそこの国に留まることは出来ぬのです。


 なので、報奨をいただけるのであれば金銭などの持ち運びできるものですとありがたいのですが……」


 ニックの言葉に、再び謁見の間にざわめきが広がる。先ほどと違って大きな声でこそないが、その内容は「たかが旅如きで陛下のお言葉を無下にするなど」とか「安定した地位よりも目先の金とは、やはり下賎の民は心根まで下賎だな」などといったニックを非難、あるいは見下すものばかりであり、中途半端に声を潜めているだけに却って耳に触る。


 だが、ニックの言葉が何かの琴線に触れたのか、ジョバンノ王の表情は穏やかだ。


「ふむ、旅か。確かに旅は良いものだ……そういうことなら金銭でも構わぬと思うが、どうだハラガよ」


「陛下がそう仰るのであれば、無論私めに否やはありませんが……ですがその前に、ひとつ確認したいことがございます」


「む? 何だ?」


 王の言葉にハラガ大臣はニックの方へと顔を向け、粘り着くような声でニックに問う。


「なあニックとやら。その方が兵士になるのを固辞したのは、ひょっとして王女殿下を助けた功績そのものが嘘だからではないのか?」


「む?」


『ほう、そう来たか』


 大臣の言葉に、ニックとオーゼンが揃って反応する。確かに常識で考えれば、ニックの戦果はあまりにも胡散臭い。


『だが、そんなものを今更指摘してどうするつもりだ? ニックが自分で戦果を喧伝したならともかく、王女が報告したのであれば責められるのは王女になるのではないか?』


「どういうことだハラガ? それはキレーナが嘘をついたと言うことか?」


 オーゼンの呟きと同じ内容をジョバンノ王に咎められ、ハラガは慌てた様子で……あくまで見た目だけだが……否定する。


「いえいえ、そのようなことはありません。護衛の者だけならまだしも、王女殿下がそのような嘘をつく理由などありませんからな……普通ならば」


「何なのだハラガ? もっとはっきり言わぬか!」


「……これはあくまで噂なのですが、どうも王女殿下はその男にたぶらかされた可能性があるのです」


 いきり立つ王から目を反らし、言いづらそうにハラガが答える。だが反らされた視線はニックを捕らえており、うつむいた口元はニヤリと笑っている。


「……どういうことだ?」


「これはあくまでメイド達からの報告なのですが、どうも王女殿下はその……その男に純潔を散らされたという話が……」


「はぁ!?」


 あまりに予想外の報告に、ジョバンノ王が王らしくない間抜けな声をあげる。それは周囲の貴族のみならずニックにとっても同じことで、ビクッと体を震わせて今日初めてその心を動揺させた。それを見て内心ほくそ笑むハラガだったが、すぐにジョバンノ王がハラガを問い詰めてくる。


「ど、どういうことだハラガ!? そのような戯れ言をこの場で言うとは――」


「勿論、真実かどうかはわかりません。ですがその……メイド達が王女殿下が部屋でお話になられていることを立ち聞きしたようなのです。曰く『自分を助けてくれた男に寄り添われ、手取り足取り初めてのことを教えられた』『ぷつりと衝撃を感じると奥から血が流れてきた』『ヌルヌルして生臭い』『でも上手くできると気持ちいい』など……」


「もういい! やめよ!」


 生々しいハラガの言葉に、ジョバンノ王が猛然と首を振って語気も荒く命令する。そうしてニックの方をこれまでの凡庸さからは想像も出来ないほどの鋭い視線で睨み付けると、すぐに大臣の方に顔を向け直す。


「細かい描写はもういい。それで結局何がどうなって今に至るというのだ? 要点だけを簡潔に述べよ」


「ハハッ。つまるところ、王女殿下はこの男と姦通……ゴホン。内通し、それを口止めするために手柄を与える取引をしたのではないかと」


「……何ということだ」


「いやいや、待っていただきたい! 流石にそのような荒唐無稽な話、到底受け入れられませんぞ!?」


 ガックリと肩を落とすジョバンノ王の姿に、流石にこれ以上は我慢できぬとニックが声をあげる。だがそれを受けて立つハラガ大臣の余裕は崩れない。


「ほほぅ。ならば貴様はワシが嘘をついていると?」


「それは……」


 大臣の言葉に、ニックは「そうだ」と断言は出来ない。大臣はあくまで「そういう話を聞いた」と言っているだけで、きちんと前置きに「真実かどうかわからない」と逃げ道も用意している。


 そして実際、それは正しい。話の大本はキレーナが部屋でこっそりマモリアとワイバーンの解体をした時の話をしていたのをメイドが立ち聞きしたことであり、ハラガはその内容をわざと誤解しやすいように編纂して子飼いのメイドに食堂や休憩室で話をするように仕向けたのだ。


 その結果意図的に歪められた噂が広がり、然りとて王族の痴情など堂々と語ればあっさりと首が飛ぶことから「聞けば多くの者が知っているが、公に語る者はいない」という理想的な状況が作り上げられていた。


 なお、訓練場の兵士達がこの話をニックにしなかったのは、大臣が狡猾に噂の広まる範囲を操作していたからだ。


 無論完全に意のままにすることなど出来はしないのでもう数日あれば訓練兵達、ひいてはニックの耳にも件の噂が届いた可能性はあるが、自身である程度謁見の日取りを調整できるハラガであればこそ、その辺も計算ずくであった。


「なあハラガよ。余はどうすればいい? キレーナをここに呼び話を聞けばいいのか?」


 娘の恩人に報奨を渡すだけかと思っていたら、まさかの娘の不貞疑惑に発展してすっかり意気消沈しているジョバンノ王の言葉に、ハラガは表向き苦渋の表情を作って答える。


「そうですな。確実なところとしましては、王女殿下に純潔審問を受けていただくか……」


「ふざけるな! そのような屈辱あり得ん!」


 ハラガの言葉に、今日一番の怒声でジョバンノ王が叫ぶ。教会の修道女三人と司教以上の聖職者による純潔審問は、そもそも受けること自体がとてつもない不名誉な行為だ。王族の、自分の娘がそんなものを受けるなど到底容認できることではない。


 無論、そんなことはハラガにも理解できている。だからこそ次の要求こそが本命。


「であれば、王女殿下がこの男に肩入れする必要が無いことを証明するのがいいかと」


「証明? 何をすればいいのだ?」


「簡単なことです。このニックという男が本当に五〇ものワイバーンを退けられたのか、その強さを確かめればよいのです」


 大臣の目が、獲物を捕らえた蛇のように怪しく輝く。


「ワイバーン五〇と釣り合うだけの戦力……我が国の精鋭騎士五〇人とこの男との決闘を具申致します」

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[気になる点] 大臣の発言は不敬罪にあたります。そもそも成り立たないシチュエーションですね。残念です。
[良い点] >『自分を助けてくれた男に寄り添われ、手取り足取り初めてのことを教えられた』 『ぷつりと衝撃を感じると奥から血が流れてきた』 『ヌルヌルして生臭い』 『でも上手くできると気持ちいい』 一…
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