第49話 神爪勇人VSキュリロス・アディソン
風が強く吹き荒ぶ橋の上に存在するは6つの影。
先程の怪我などまるで存在しなかったかのように、無傷で不敵に佇む"極東の魔神"・・・神爪 勇人。
魔神の雰囲気に気圧され顔を引き攣らせる、聖神教会の追放者・・・キュリロス・アディソン。
立て続けの乱入者により状況が変化し様子を見る、四季島への亡命者・・・吸血鬼。
狂信者に害され、吸血鬼に庇われた状態で道路に横たわる絶命者・・・竜道寺 流浪。
勇人が来た辺りで興味を無くしたのか、欠伸をしている目の切り傷が目立つ大型犬・・・プルート。
「てゆーか・・・・・・何?」
そしてそんな彼らを困惑気に見やる一般人・・・天使 縁寿。
「これどういう状況? あんたらどういう関係?」
「俺様からすれば、お前の方が『何でここにいんの?』って感じなんだが・・・・・・」
「・・・・・・急に走り出したプルート追いかけてたらこーなったとしか」
「ほーん?」
成り行きが過ぎる縁寿は何となく気まずくなり目を逸らし、勇人は縁寿の横にいるプルートに目をやる。
視線には気付いているだろうに反応せず、敢えて無視しているように見える。
天使縁寿という一般人を連れてきて何のつもりか分からないが、佇まいから何かあったら動く気ではいるみたいで「まぁ、いいか」と勝手に納得し、縁寿とプルートを下がらせる意味で勇人は前へ出た。
「俺様の自己紹介は必要か?」
「・・・・・・いいえ、必要ありませんよ」
勇人の言葉に、街灯の上で肩を竦めるキュリロス。
道路上にいる混沌獣血鬼は元々四季島へ向かうつもりだった故か動かず静観し、その様と魔神登場の状況からもう狩るのは無理かと諦めの色を出しながら溜息を吐いた。
「もうこのまま帰るんで、見逃しちゃくれませんかねぇ?」
「あん? 何だ、戦っていかねーのか?」
「私としても命は惜しいんでねぇ」
街灯から軽く飛び降りて、着地したキュリロスは抵抗する意思はありませんとばかりに両手を挙げて勇人に近づいていく。
「神爪勇人・・・・・・『極東の魔神』『千の魔術の使い手』『略奪者』『不死身の漢』『超勇者』『アイツ殺しても死なないんだけどマジ何なん?』と、数々の異名を持つ貴方の存在は表裏問わず魔法社会の中ではあまりにも有名だ」
「最後の異名か? 誰かの感想じゃね?」
「そんな貴方と戦うだなんてとてもとても・・・・・・」
「無視かよ」
だから私は戦わないので命ばかりはお助けをーと、そんな雰囲気を出しながらキュリロスは、一歩一歩と両手を上げつつ少しずつ歩を進めて勇人に近づいていく。
(あと少し・・・・・・)
ちらりと自分と勇人の間合いを目線で確認し、
「・・・・・・ま、戦る気のねぇやつと無理に戦んのは興が乗らねーわな。俺様はそっちの吸血鬼の保護を依頼で受けただけだ。お前を抹殺する仕事は受けてねーし、指名手配犯って訳でもねーなら捕まえる理由もねーから、逃げんなら好きにしな」
「おお! 本当ですか!?」
やる気をなくして気だるげな雰囲気を見せる勇人に、キュリロスはパッと明るい顔をする。
命は助かった、貴方はなんて優しいんだ!と明るい雰囲気を隠すこともなく前面に押し出して、
「でしたら——————《お前の罪を数えろ》‼」
瞬間、キュリロスは手を翳し勝利を確信した。
翳したその手に突如現れるは、一冊の分厚い本。
魔力光を発しているその本が開き、パラパラとページが捲れていく。
「お?」
そして勇人の身体も光りだす。
(本の具現化・・・・・・一定範囲内の対象に接続? 妨害系か? 剣とか分かりやすい類のもんじゃねぇし、どういう魔法だ?)
興味深気に観察する勇人に対して、キュリロスは怪訝に眉を寄せた。
明らかに何かをやろうとしてくるキュリロスに対して、勇人は止めに入るわけでもなく不敵な笑みを浮かべたまま動く気配がない。
(不死身故の余裕か・・・・・・まぁ、仕掛けてこないなら遠慮なくやらせてもらいますが!)
途中で仕掛けてきた時に備えていた迎撃の構えを解いて、魔法の行使を実行する。
キュリロスが構える本の光が、更に強く輝き出す。
「【判決執行】――――――――――――」
パラパラと捲れていた本のページが止まり、キュリロスは笑みを浮かべた。
「——————【死刑】‼‼‼」
キュリロスが発するその言葉に呼応して、勇人の身体が眩く発光し——————




