第48話 魔神降臨!
その男の存在感は、その場にいた者達の目を引き付けた。
夜でも目立ち輝く太陽のような金髪、赤色が目立つ鳳凰学園の制服、抑えていても尚漏れ出す圧倒的な氣力や魔力。
そんな目立つ男、神爪勇人の立ち姿は威風堂々。
存在感を隠す気もなく前面に押し出した強気な雰囲気は、その姿を目にしたキュリロスは息を吞んだ。
「あれが・・・・・・極東の魔神!?」
大型の貨物自動車の上でキメにキメていた神爪勇人は、構えを正し仁王立ち。
大胆不敵、強気に素敵、向かうところ敵なしにして敵う者など存在しないと言わんばかりのその自信に満ちたキリっとイケメン鋭い目付きに脂汗が徐々にあふれ出て顔色は見る見るうちに青褪めていきプルプルと全身が痙攣して震えだして猛スピードで踵を返して貨物上を後方リターンで走り蹲って大型車の後ろから「オロロロロロロロロ――――――」とモザイクが口から漏れ出して。
「おいコラクソガキィッ!? テメェ、俺の愛車にゲロぶちまけやがったらぶっ殺すぞ‼」
「ちょ、待っておやっさん揺らさないで! マジ揺らすのタイム‼ 今出てってから! マジで出てっから‼ 俺様の口から形容し難き流体物がオボロロロロロロロ・・・・・・ッ!?」
運転手の親父が頭上の神爪勇人にマジ切れしつつ振り落とそうと蛇行運転、そんな大型貨物車の上で揺られる神爪勇人の口からは悍ましき流体物Xが右往左往で縦横無尽に飛び散って橋の上を汚していく。
「ハァ・・・ハァ・・・オェ・・・」
一頻り吐いて落ち着いたのかヨロヨロと車の上で立ち上がる神爪勇人。
その足取りはダウン寸前のボクサーに見えないこともないが、運転手は気にもせずに車を走らせ続ける。
そんな気遣い皆無の運転手なんかに負けないと、神爪勇人はキリリと雰囲気を整えなおし、
「フッ・・・待たせたな。楽園へと誘われた鬼姫に、招かれざる狂信者よ。俺様が来たからには・・・・・・」
クルっとターンで振り返りつつキメポーズをしっかりと決めた――――――
「・・・・・・万事解決だぜ‼」
――――――瞬間、眼前に迫った道路標識が。
バゴチンッッ‼‼‼‼‼
人が鉄製の鈍器で撲殺されたかのような異音が轟き、神爪勇人は宙を舞った。
方面及び方向の予告が記された案内標識に擦れ違い様に撲殺された神爪勇人はクルクルと大型貨物自動車から放り出され、ゴスッと脳天からコンクリートで舗装された道路に落下、ビタンッとうつ伏せに倒れて動かなくなった。
そんな神爪勇人の姿を運転手の親父は車のミラー越しにアホを視る様に一瞥。
そして何事も無かったかのように、動きを止めたキュリロスと混沌獣血鬼の横を素通りしていった。
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
思わず車を見送った吸血鬼と狂信者は、視線をぶっ倒れたままの神爪勇人に移す。
(アレが・・・・・・極東の魔神?)
ただの頭のおかしい奴にしか見えなくてキュリロスの顔が引きつるが、頭を振って考えを改める。
(いや、溢れ出るエネルギーは本物。それに異世界帰還者は総じて頭のオカシイ者が多いと聞く。ならばアレが正常と見るべきか・・・・・・?)
そんな失礼なことを考えているキュリロスを余所に、天使縁寿はぶっ倒れた神爪勇人に駆け寄った。
「えーと・・・・・・大丈夫?」
未だに状況が全く分からない縁寿だったが、取り合えず見知った顔の勇人の元に駆け寄ることにした。
勇人は「問題ないー―――――」と言ってフラフラと立ち上がる。
「――――――眼鏡は無傷だ」
「鼻血鼻血」
足取りに比べて無駄にキリッとしている顔面にツッコむ縁寿。
何で眼鏡は無傷なのに顔面はケガしてんだよっつーかよくあれで鼻血だけで済んだなと叫びたくなるが、この男ひいては鳳凰学園の生徒の奇行はもう数日にして慣れたもので、縁寿はツッコミを控えめにした。
ツッコんでいたらキリがないことを知ったからである。
そんなジト目の縁寿を横に、勇人はキュリロスに向き直りつつ、右手で顔を覆い、
「改めて・・・・・・待たせたな」
そのまま髪を掻き上げた。
顕わになった顔面は、右手が離れた瞬間に傷も鼻血も消えていた。
・・・・・・縁寿はツッコまなかった。




