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MAGINIGHT~魔神とその環境を取り巻く者達のお話~  作者: U-1
序章 運命の出会いの日~The Wizard God AND The Funny Guys~
45/54

第45話 竜道寺 流浪&???VSキュリロス

――――――やっちまった。

それが、竜道寺流浪がまず最初に思った事だ。

そして疑問が頭を過ぎる。

何でこんなことをやってしまったのか。

あの白銀髪の女が、白髪男に襲われている所を見て、思わず魔法を放ってしまった。

こんな橋の上で魔術をぶっ放し、更には剣で襲い掛かる様な、どう見てもヤバイ現場に首を突っ込むほどの正義感は流浪にはない。

だが、この現場を目撃して身体が勝手に動いてしまったのだ。

自分がこんな安い正義感で動いた事に首を傾げながらも、やっちまったもんはしょうがねぇと気持ちを切り替えて、流浪は白髪男を見据える。


「何やってんだよ、アンタ?」

「・・・・・・聞いてるのは此方なんですがねぇ」


剣という目に見えて分かりやすい凶器を手に握る相手に油断なく構える流浪に、白髪男は舌打ちしつつも聖職者として性分なのか、流浪の問いかけに答える。


「私は祓魔師(エクソシスト)のキュリロス・アディソン。そこの女・・・・・・吸血鬼(ヴァンパイア)を滅する活動中でしてねぇ」

「吸血鬼・・・・・・?」


キュリロスと名乗った怪しげな神父の視線の先・・・・・・自分へと視線を向ける白銀髪の女を流浪は一瞥する。

テレビか何かで視た【幻銀輝鉱(ミスリル)】を思わせる煌びやかな長髪、雪の様な白い肌、紅玉(ルビー)が如き赤く輝く瞳、そして元はおそらく豪奢だったと思われるボロボロになった白いドレス。

美人だとは思う。

だが、見た目はどう見ても普通の人間だ。

吸血鬼というものが(デモニオ)の一種であることは小学校で習う程度の知識である為、当然流浪も知ってはいるが、それでも教科書の挿絵にはいかにもな鬼の絵が載せられていたが描かれている感じとは随分違う。


「本当に吸血鬼か?」

「ええ。というより、普通気配で(デモニオ)かどうかくらいは分かるものなのですが・・・・・・」


キュリロスは怪訝な顔を流浪に向け、今度は逆に問いかける。


「で、貴方は一体何なんですかねぇ?」

「何って・・・・・・何だよ?」

「此方は素性を明かして事情を説明までしたのですから、貴方の方も話すのが筋というものでしょう。急に此方に魔法をぶっ放してきた貴方は一体何なんですか?」


言われて流浪は、ようやく自分がかなり危険な事を仕出かした自覚をする。

いくら見た目的には男が凶器を振り回して襲っているように見えたとはいえ、有無を言わさずに魔法を放ったのは問題だった。

女の方は流浪とキュリロスの両方に視線を行き来させるが、流浪に何かを説明する事も助けを求めることもしていない為、この凶悪犯っぽい目付きをする神父然とした男の言う通り吸血鬼なのかもしれない。

だとしたら自分がやったことは業務妨害の類でしかなく、祓魔師を名乗るこの男が不機嫌になるのも無理はない。


「俺は竜道寺 流浪です。その・・・アンタが何かヤバそうっつーか、見た目的にそっちの女を襲ってる様にしか見えなかったっつーか、勘違いしたみたいで・・・・・・その、なんだ? あー・・・すんません」

「・・・・・・・・・・・・で?」

「え?」


頭を下げて詫びを入れた流浪は、キュリロスの言葉に頭を上げる。

あまり言葉遣いが良いとは言えないが、それでも大事には至っていない為、詫びの言葉を入れる以上の事は必要ないようにも感じるが、何がお気に召さなかったのだろうか。

そんな流浪の疑問が顔に出ていたのか、キュリロスは不機嫌さを隠さずに舌打ちする。


「そういうことを聞いてんじゃないんですよ。貴方が誰なのかは分かりましたが、それはそこまで重要じゃないんですよ。私が聞きたいのは貴方が何処の所属の者かと聞いているんです」

「所属? いや、まぁ・・・鳳凰学園って事になんのか・・・・・・?」


何処に所属しているかなんて何の意味があるのかと流浪は首を傾げ、一応所属していると思われる通っている学校の名を上げた。

部活等にはまだ入ってなく、別に何処かで働いている訳でもなく、他に答えられそうな所属が無い為だが、その返答はキュリロスが求めたものではなかった。


「ふざけてる・・・・・・訳じゃなさそうですねぇ。一般人ですか、困りましたねぇ・・・・・・この結界を使っても偶に貴方の様な人がいるから面倒なんですよねぇ」

「結界?」

「気づきませんでしたか? まぁ、気付きませんよねぇ。四季島と結ぶこの連絡道路に全く車が来ない事に」


確かに先程、車が全く通らなくなったことに疑問を感じた流浪だが、それはこのキュリロスが結界を張ったが故だった。

結界なんてものが張られた事に全く気付けなかった流浪だが、それはキュリロスが張った結界が『人の認識を一定の場所へ向けないようにする』といった人払いの類であり、強制力や持続時間があまり長くない代わりに気配が薄く気付かれにくいという利点がある。


「魔神や他の魔法使い達に気付かれて急行されても面倒なのでこんな手段を取ったのですが、あまり意味なかったですねぇ。ホンット、面倒な・・・・・・」


人が多くても広い街中等ならまだ効果はあるが、こんな島と結ぶ橋の上の様な移動手段や経路が限られた場所だと効果は薄くなる。

それでも橋を通りたくなくなったり、橋を渡ることに忌避感を抱いたりと、橋から意識を一時的に遠ざける事は出来、その間に吸血鬼をさっさと討伐してしまおうと軽い考えで使った結界だったのだが、強力な結界ではない故に今回の流浪の様に偶に何かが紛れ込んだりしてしまう。

自分の運の悪さと流浪の魔の悪さに舌打ちが止まらないキュリロスはガシガシと頭を掻き乱し、唐突にピタリと動きを止める。

苛立ちに満ちた表情が抜け落ちて、天啓を得たかのように悟った顔になる。


「そうです、そうですね、そうですよねぇ・・・・・・吸血鬼と戦ってる場に遭遇しちゃったんなら、()()()()()()()()()()()()()()私が殺したのか吸血鬼が殺したのかなんて分からないですよねぇ」

「・・・・・・は?」


何か不吉な言葉を口にしやがったキュリロスへ、言葉の意味を問おうと流浪は口を開こうとして――――――視界からキュリロスが消えた。

瞬間、目の前で火花と衝撃が弾けた。

ガキンッ‼と甲高い音を立てながら、流浪の目の前に白銀髪の女が割り込んで、流浪に一瞬で迫ったキュリロスを蹴り飛ばす。

キュリロスは一瞬で流浪へと距離を詰めてその首を落とそうと剣を振るい、その一閃を割り込んで入った吸血鬼が爪で弾いてキュリロスを蹴り飛ばしたのだ。

そんな攻防が目の前で繰り広げられたのだが、流浪の目にはロクに見えなかった。

だが、自分がキュリロスに殺されかけて、吸血鬼に助けられた事は察した。


「アンタ――――――」

「――――――ゴメン! 何か巻き込んじゃったみたい‼」


流浪と吸血鬼の言葉が被るが、そんな事を気にしていられる様な状況でもなく、吸血鬼はキュリロスから目を離さない。

キュリロスは突然割って入った吸血鬼を、変なものを視たかの様な顔をする。


「意外ですねぇ・・・てっきり私が彼を斬りに行った瞬間に逃げるかと思ったんですが」


だから即座に追撃に移る事を前提で動いていた為、少々虚を突かれてしまった。

そして吸血鬼は、そんなキュリロスの似非神父っぷりにご立腹だった。


「貴方、聖職者なんでしょ? 一般人を巻き込んで殺しに行く方が意外なのだけれど!?」

「仕方が無いじゃないですか。こんな場面を視られて長々と説明するのも億劫ですし、何より時間が掛かるんですから。まぁ、運が悪かったと思って諦めて死んでくれませんかねぇ?」

「嫌に決まってんだろ!?」

「じゃあ吸血鬼、大人しく貴女が殺されてくれませんかねぇ? そうすれば私も彼を殺さずに済みますが」

「ゴメンッ! 無理ッ‼」

「あー・・・・・・じゃあもうさっさと2人纏めて殺すしかないじゃないですか」


何をとんでもないことサラッと言ってやがるのか、狂気染みた笑みを浮かべる2人の目の前に立つ神父はやはり似非のようで、目が完全にイっていた。


「・・・・・・アレが聖職者ってマジなのか?」

「気持ちは分かるけどマジよ・・・・・・頭に"元"が付くかもしれないけれど」


流石にあんな瞳孔が開き切ったような目をして刀身を舌舐めずりするような神父を聖職者とは思えないというか思いたくなかったが現実は非情なようで、何でこんなヤバイ奴の相手をする事になってしまったのか記憶を掘り起こす流浪は「あ、オレが首突っ込んだった」と頭抱えて少し後悔してきた。


「貴方、戦える?」

「あー・・・・・・たぶん――――――」


存在更新(アップデート)で人として能力が全体的に上昇し、空手をやっていたが故に近接戦をこなせ、魔法戦競技に参加したこともありスポーツとはいえ戦闘経験もあり、魔法も発現した。

それらを加味して「たぶん、いける」と口にしようとしたところで、キュリロスが再び流浪の視界から消え、気付いた時には背後から金属音が聞こえてきて。

振り返れば、いつの間に前方にいた筈の吸血鬼が流浪の背後に回り込んでいて、キュリロスの剣を爪で弾いていた。

さっきは会話に入ろうとして油断していたから反応出来なかったと思っていたが、今度も吸血鬼と会話中とはいえ目の前のイカレ神父から視線を外さず警戒していたにも拘らず、また反応出来ない所か動きを見る事さえ出来なかった。


「――――――すまん、無理だ!」

「みたいね!」


吸血鬼が力づくでキュリロスを弾き飛ばすが、直様キュリロスは身体を宙で翻し、()()()()()()再び流浪へ斬りかかる。

それを阻止せんと吸血鬼が立ち塞がり爪で迎撃と、そんな攻防が何度も繰り返された。

流浪はどうにかして援護に動こうとするが、2人の動きが早過ぎて魔法で援護射撃しようと狙いをつけることも、挟み撃ちなどで連携を組むことも出来ない。

そしてキュリロスは吸血鬼ではなく、完全に狙いを流浪に定めていた。

目的は吸血鬼の抹殺であり、ただの遭遇者である流浪を強く狙う理由はないが、吸血鬼が偶々この場に居合わせただけの流浪を護ろうと動いたことは、キュリロスにとっては思いがけない幸運である。

四季島に逃げるのを流浪を狙うだけで妨害出来、更には勝手に割り込んでくるのだからより殺し易くなっている。

縦横無尽に地上と虚空を駆け回り、流浪に斬撃を繰り出す度に、少しずつ攻撃を捌き切れなくなってきて吸血鬼の身体を徐々に傷をつけていく。

血を撒き散らしていく吸血鬼の姿に、流浪は歯噛みする。


(完ッ全に足手まといじゃねーか!)


何かヤバそうな状況だったからか反射的に助けに入ってしまったが、結果的にはただ邪魔に入っただけ。

恐らく流浪が魔法を放って割り込んでこなければ、吸血鬼も神父も流浪を一瞥もせずに通り過ぎていったであろう。

余計な事をしてしまった。

これで流浪が危険な目に遭うだけなら自分の自業自得だと割り切る事も出来たのだろうが、見ず知らずであるはずの自分を守ろうと吸血鬼の姿を見ると焦燥感が募る。

このままではダメだと。

何かをやらねばならない、動かねばならない、じゃないと後悔する。

そんな衝動が内から湧いてきて、遂に大きな隙が出来て吸血鬼が神父に斬り裂かれ、鮮血が飛び散り自身の頬に付着し、膝を着いた吸血鬼に止めを刺そうと神父が剣を振り下ろす。


――――――血に濡れた吸血鬼の後ろ姿に流浪は何故か、幼き頃の藤森花凛の姿を視た。


◆◆◆


ザシュッ‼と、刃が肉を突き刺す音が聞こえた。

刺したのは量産型(プロデュースド)祓魔剣(アスカロン)を握る神父・・・キュリロス・アディソン。

刺されたのは吸血鬼・・・・・・ではなく。


吸血鬼を庇うように立ち塞がった、竜道寺 流浪の胸を、剣が貫いていた。

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