第23話 部活動見学
シャワー室で身体を洗い流しスッキリとしたはずなのだが騒動のせいで妙に疲れた感じのする縁寿達たが、本日の授業という名の学校案内は終了である。
全ての施設を回ったわけではないが、一年生が利用する主な施設は見学出来た。
そんな学校案内が終わって、本日は解散する。
だが直ぐに帰れる、という訳ではない。
何故なら、午後からは入学式を終えた新入生最初のイベントがあるからだ。
『部活動見学』
今日の午後はソレを見学するために午前上がりであり、内部生以外の生徒・・・つまり新入生は遅くまで見学する事が毎年多い。
何故ならば、この鳳凰学園に通う生徒は必ず何処かの委員会か部活に所属しなければならないからだ。
今日中に決める必要はないが、それでも新入生部活勧誘週間の1週間後までには、何処かの委員会か部活動に入るか決めなければいけない。
そしてこの学園は、部の数が運動部、文化部を問わずに多い。
その数は裕に100を超える。
だからみんな結構な期間、悩んでしまうのだ。
期限ギリギリまで悩む生徒なんてザラにいるが、逆に今日中に即決する者もいる。
掛け持ちもOKという事で、入りたい部に全部入部するなんて生徒もいる。
部活に興味が無く、学業に専念したい生徒なら『勉強部』なんて部に入ったりするし、あまり大して活動していない部活に入って幽霊部員と化したりすることも珍しくは無い。
けれども一生の内の僅かな期間しかない学校生活。
やはり充実した生活を送りたいが為に、真剣に悩む生徒は多い。
天使縁寿もその一人だ。
青春を謳歌する気満々な縁寿は、部活を見学しようと校舎の出入り口を出た瞬間、呆気に取られる。
「なんか、色々と凄い・・・・・・・・・」
見渡す限り、人、人、人。
教室の窓から見た時から分かってはいたのだが、こうして近くで観てみると迫力が違う。
まるでお祭りだ。
別に出店をやっている訳ではないはずなのに、そう錯覚させる程の人の密度、人の声、人の熱気が溢れている。
野球、サッカー、バスケ、テニス、バレー、アメフト等々のユニフォームを着た運動部に、碁盤や将棋盤、パソコン等を持ち出している文化部。
茶道具や書道具、美術に漫画、剣道着や柔道着、様々な道具を持ち出したり、衣服を着た生徒達が大きな声を出し、またはその場で部活内容を説明、実演してみせたりと、中等部高等部の新入生達を積極的に勧誘している。
この鳳凰学園は、中等部は1クラス辺りに20人の生徒が所属し、高等部には1クラス辺り30人の生徒が所属している。
中等部も高等部も、クラスの数は同じでAクラス~Zクラスまでの26クラス存在している。
中等部の生徒が一学年で520人、高等部の生徒が一学年780人。
新入生だけでも1300人。
鳳凰学園は、総勢3900人もの生徒数が存在する超マンモス校。
地球だけでなく『異世界連合』に属している各異世界から入学者を募い、集まったのが此処にいる生徒達だ。
地球上でこれだけの生徒が存在している学校は、魔法や魔術で空間を拡張して人数を問題なく収容出来る鳳凰学園だけだろう。
そして全員という訳ではないが、殆どの生徒が今、この校舎前に集っているのだ。
人が多くて当然である。
縁寿の視線に映る先には、自分と同じ外部生の新入生であろうと思われる生徒達が、出会い頭に次々と色んな部に引っ張られたり、人波に飲まれて姿が見えなくなったりと穏やかじゃない景色が観えていた。
正直、あの人混みの中を通るのは勇気がいる。
「てか、人が通れるスペースあるの?」
「うーん・・・・・・何も考えずに行くと、行きたい所に行けずに一日終わっちゃうからねぇ。無理に通ろうとすれば、何時の間にか何処かの部へ誘導されちゃってたりするから」
校舎の外へ出るのを躊躇う縁寿の呟きに、都古は中等部に入学した時の記憶を掘り起こしながら苦笑した。
都古は中等部からこの学園に通っている内部生で、今年で4回目の部活勧誘をその目にするのだが、毎年見てる4回目でもこの部活勧誘週間は凄まじいと思わざるを得ない。
「都古ちゃんは図書委員会だっけ?」
「うん。クラブには入ってないんだ」
委員会か部活、どちらかに所属していれば良い。
別に両方入らなければいけない訳ではないし、ダメな訳でもない。
ただし、部活は良いが、委員会の掛け持ちは禁止されている。
委員会は部活と違って忙しい事が多く、掛け持ちしない事は珍しい事ではない。
「縁寿ちゃんは、もうどこの部に入るか決めてるの? あ、もしかして委員会だったりする?」
「色々観てから決めるのもいいかなぁって思ってたんだけど・・・この状況を観てたらねぇ・・・・・」
敷地は充分過ぎるほどに広い鳳凰学園だが、校舎から出て来た新入生を片っ端から勧誘しようと大抵の人達は校舎の出入り口を陣取っており、出入り口を通ったが最後、あの人の群れに潰されてしまうだろう。
そう確信する縁寿は、元々入ろうと決めていた部に入部しようと、その部へ真っ直ぐに向かうことを決めた。
「何処に入部するの?」
中等部からこの学園に通っているだけあって、都古は学校の敷地にはそれなりに詳しい。
校舎の抜け道なども、色々と知っている。
場所によっては難しいかもしれないが、だいたいの場所へなら人が少ないルートを通れるはずだ。
自分を安全に案内する役を買って出てくれた都古に感謝しつつ、縁寿は入部する部を口にした。
「魔法戦競技部! そこに入部しようと思ってるの‼」




