第19話 授業見学
ちょっと半端だけど長らく更新してなかったので投稿。
*2019/04/18
各話全体を見直し、単語や名称、台詞等の一部を変更しました。
ストーリーそのものに変化はありません。
『身体検査』を終えた後も、各施設の案内に時間を割く。
日本国内にある通常の高等学校と違いの無い施設が大半だが、中には魔法や魔術を扱うが故に専用の施設も存在する。
『魔法道具』の制作室、魔法や魔術を使った教科での耐魔処理が施された実技室、昨日食堂を使っていない外部生の為に食堂も案内され、更に現在授業中の高等部2年と3年の授業を見学した。
中等部全学年と高等部1年は基本的に普通科しか存在せず、魔法などを学べる学校と言っても必修科目は他の一般的な学校と差はない。
高等部の2年に進級すれば普通科以外にも学科が存在し、3年になれば更に細分化された学科を選ぶことになる。
それ故、鳳凰学園で生活を送ってきた内部生でも、此処で上級生の授業を見学出来るのは非常に有意義であった。
普通科以外にも、魔法や魔術をより専門的に学ぶ授業や、魔法道具の制作風景。
そして今現在、縁寿達高等部1年A組は、3年の実習風景を見学している。
魔法や魔術に耐える為の防護処理を施された専用部屋で、体操服姿の2人の生徒が激闘を繰り広げていた。
廊下からは隣の部屋まで通常の教室と同じ程度の広さしか感じなかったが、高度な魔術によって空間が拡張されており、約10m四方程度の教室が体育館並みに広がっている。
高さもある為壁側には観覧席も用意されており、授業中の上級生に混じる形で縁寿達は見学していた。
行われているのは、魔術を使った決闘形式の模擬試合。
室内を縦横無尽で高速に駆け抜け、相手が放つ【魔弾の射手】を舞う様に回避し、お返しとばかりに同じ魔術で攻撃する女子生徒。
その女子生徒の攻撃を部屋の中央付近で、仁王立ちの姿勢を崩さずに魔術で防御壁を展開し攻撃を防ぐ男子生徒。
雨霰と魔弾を降り注ぐ女子生徒と、微動だにせずに防ぎ続ける男子生徒は、この学園だけでなく学外でも名の知れた人物である。
「今、魔弾を撃ち続けて駆けまわってるのが、四葉 うさぎ先輩。真ん中で防壁張ってるのが、十一塚 戌雄先輩よね」
「うん。今まで見たこと無かったっけ?」
「テレビとか雑誌ではね。直接見るのは初めて」
都古に確認する縁寿は、過去に見た雑誌などの情報を思い返す。
『四葉』と『十一塚』。
この二つの家は、日本で最も有名な魔法使いの家系。
十二家存在する家系の内の二つが、『四葉』と『十一塚』だ。
『日本十二師』と呼ばれるその十二の家系は、日本で最強と呼ばれる魔法使いの集団で、古くから存在する魔術師の家系でもある。
元は存在を秘匿する形で生きていた魔術師の家系の中で、世界が異世界と繋がった約20年前に表舞台へと現れた魔法使い達。
魔術師が表社会に出た先駆者であり、今の日本の魔法社会を築き上げる一端を担った家系。
その家の出が、今模擬戦を行っている2人。
フワッとした背中程まで伸びた白色の髪を靡かせながら、飛来してくる魔弾を舞い踊る様に避け、それ以上の数の魔弾を射出しながら高速機動で駆けまわる女子生徒・・・・・・四葉うさぎ。
豪雨の様に降り注ぐ魔弾を、眉一つ動かさずに両手を組んだ姿勢を崩さず憮然とした姿で障壁魔術で防ぎ続ける、2mを越える背丈に横幅や胸板の厚い体躯を誇る短髪の男子生徒・・・・・・十一塚戌雄。
実力ある日本の若手魔法使いの中で、真っ先に名の上がる人物が、この2人だ。
日本で最も力のある魔法使いの家系の生まれであり、様々な魔法競技で記録を残し、顔と名前を出している2人。
魔法や魔術に興味ある人なら、知らぬ者はいない。
特に魔法や魔術に関する授業を行える、此処鳳凰学園に入学した生徒なら尚更だ。
現に今も、縁寿達高等部1年A組は模擬戦を行う2人の上級生の姿に色めきだっている。
「四葉先輩・・・いいっすね・・・・・・」
「小柄なあの体型であの胸・・・俺の推定だと上から84/52/88・・・カップサイズはF・・・つまり『きょぬー』だ」
「トランジスタグラマーってやつか・・・・・・」
移動や回避行動を行う度に揺れるその胸部に、見学している1年A組と3年の男子生徒が生唾を飲む。
その『ゴクリ・・・』という音にゴミを視るような目を向ける女子生徒達だったが、彼女達も黄色い声を上げる。
「十一塚先輩って良いよねぇ」
「あの筋肉・・・・・・」
「ちょっと強面だけど、そこがまた男らしいっていうかぁ・・・・・・」
「いぶし銀って感じゃんねー!」
キャーキャー声を上げる女子生徒に舌打ちする男子生徒だが、その向けるべき対象は女子生徒ではなく、変わらず憮然とした表情で障壁魔術を展開する十一塚戌雄である。
その嫉妬からくる負の念を感じ取った十一塚戌雄が「む?」と、視線を観覧席の男子生徒達に目を向けた時、
「隙ありぃっ‼」
今まで【魔弾の射手】の雨を撃ち続けていた四葉うさぎが魔弾を射出するのを止め、手を振った。
瞬間、自身の周囲を障壁魔術で囲う十一塚戌雄の足下から、床を突き抜けるように植物の蔦の様なモノが伸びて来て彼の右足を絡め捕り、蔦は十一塚戌雄を宙へと持ち上げそのまま振り回そうとしている。
障壁魔術が展開されていない足下という穴を突かれた攻撃だったが、十一塚戌雄はやや眉を寄せるだけで冷静かつ容易に対処してみせる。
十一塚戌雄自身を中心に、彼の内側から膨大な魔力が球状に放出され身を護るかのように展開される。
その魔力が足に絡みつく蔦に触れた瞬間、蔦は押しのけられ引き千切られる様に床に落ちた。
空中での支えを失った十一塚戌雄だが、それでも表情を変える事は無く、球状に展開した魔力を抑えて何事もなかったかのように着地する。
「四葉、この模擬戦は魔術限定だ。魔法の使用は反則だろう」
「ごっめーん、隙を突こうと思ったら思わず」
嘆息する十一塚戌雄に、四葉うさぎはチロリと舌を出して『テヘペロ』とでも言うように軽い感じで謝罪した。
反省の色などなく、どう見ても形だけの謝罪をする四葉うさぎだが、彼女の性格をよく知っている十一塚戌雄はそれ以上は何も言わず、この模擬戦の審判を務めている教師に顔を向けた。
「先生」
「ああ」
気だるげに反応する、目つきの悪い長身痩躯の銀髪の教師が適当な感じに腕を上げて、模擬戦の終了を宣言する。
「勝者、3年C組。十一塚戌雄。四葉うさぎ、お前は後で説教だ」
「えぇー・・・・・・」
不満そうな顔をする四葉うさぎに銀髪教師はジロッと睨みを利かせ、目を逸らす彼女を「負けたんならさっさと引っ込め」と観覧席に追い立てる。
「次、四葉が負けたから3年A組から出ろ」
観覧席で見学する上級生の男子生徒の1人が「おーっしっ‼」と気合を入れて観覧席から降りて行った所で、担任の山吹桔梗教師が「よし、次の設備に回るぞ」と、見学している1年A組を纏め始める。
不満の声を上げる生徒が多かったが、「他のクラスが閊えてるんだ、早くしろ」と拒否を許さぬ威圧感のある眼力を飛ばすと、生徒達は渋々従い担任に従い、この教室を後にした。
ちょいちょい微妙に言い回しなどを加筆修正してるので全く更新してない訳では無いと言い訳してみたり。