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転生したら玉虫色の球体でした  作者: 枝節 白草
第1章:森の黒山羊
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次元の摩擦熱

今回はSANチェック無しです

僕は山賊のねぐらであろう洞穴に近づいた。

クロには離れた場所で待機してもらっている。

僕は男の子なのだから女の子に任せきりでは良くない、良いところを見せなくてはいけない。


僕は自分が何をできるのか分からなかった。

それでも最終的には元の姿に戻れば良いだけの話、玉虫色の球体の集合体に。

でもそれをやってしまったら人間の姿に体を再構築できる自信が無い。

とりあえず人の姿で戦ってみる事にした。


僕の手には剣がある、山賊が落とした質素なロングソード。

剣の使い方なんて分からないけど素手よりは良いはずだ。

しかしそれは間違いだった。重い、ただ重い。

人化してる間は筋力も人並みの様だった、こんな細い腕では大きな剣など振れない。

剣を引きずり山賊のねぐらに近づく僕は明らかに不審者だった。


「おい、ガキ!何しにきた!」

見張りの男が僕を睨んできた。

僕はそんな事よりどうやって剣を振れば良いのか分からず悩んでいた。

「えーと、あなたを殺しに来たんだけど、剣が重くて、どうしたら良いの?」

「はぁ!?何寝ぼけた事言ってんだ、剣はこうやって振るんだよ!」


見張りの男は剣を大きく振りかぶると僕に振り下ろす。

それをなんとか自分の剣で受けたが、いともたやすく剣は弾き飛ばされてしまう。

「あー、ちょっと拾ってきて良い?」

「アホか!死ね!」


男がもう一度剣を振ると僕の体を引き裂いた。

だが僕の体が小さいから目測を誤ったのか、そこまで深い怪我では無いようだ。

それでも僕の体からは血がボタボタと流れ落ちていく。


しかし斬られたのは僕の方なのに、なにやら山賊の男が驚いていた。

「・・・おまっ!なんだその血の色!」

血?色?血と言えば赤でしょう?

僕は自分の体から流れる血の様な物を見て、なるほどなと納得した。


緑とも紫とも言えない、玉虫色の体液が僕から流れていた。

その体液は明らかに普通の体液とは違っていた。

落ちた体液はウネウネと動き、泡立ち、浮上して球体になる。


そして、その玉虫色の球体は僕の思い通りに動いている事に気づいたのだ。

「これは、僕の欠片?・・・確か、・・・クロが」

僕の体に触れた生き物は体内から沸騰?みたいな事を言っていた事を思い出した。


僕は、その球体を・・・、山賊に向けて放った。

「なんだぁ?気色わりぃ・・いいいいぃぃぃぃはぁ!ぁぁぁぁ」

玉虫色の球体に触れた山賊は全身が赤く腫れあがり蒸発して消滅した。

一瞬の事でよく分からなかった。



「お疲れさま、初めてにしては上出来じゃない?」

クロが隣まで来ていた。

「今のは?僕の元の体ってめちゃくちゃ高温なのかな?」

「うふふ、ただの摩擦熱よ。あなたに触れたモノは次元をほんの僅かにズラされるの。次元の摩擦熱。それは途方もない熱量なの」

「・・・よく分からないけど、うん、分かったよ。僕の体そのものが僕の武器なんだね」

「あら、それだと加減ができないわよ?」

「加減が必要な時ってあるの?」

「無いかもね。ふふ」


玉虫色の球体は僕のところに戻ると体の中へと消えていく。

「これって出す時わざわざ自傷しないとダメなのかな?」

「あら?自分の体の一部を呼び出すだけよ。慣れれば手足を動かす事と同じ様に自然に出せるわ、私が触手だけ出すのと同じ事だもの」

「そっか、僕の知らない事だらけだね」

何も知らない僕はクロだけが味方だった。

クロの期待している僕になりたかった、なるしかなかった。




僕とクロは洞穴の中に隠してあった山賊のお宝を物色する。

中にまだ数人いたがクロが触手でしとめていく。


どうやら山賊というものは身ぐるみ剥ぐのがお決まりらしい、服もかなりの量だ。

僕は自分のサイズに合う服を探すがファッションなんて分からない。

頑丈で長く使える物を、そして革製の服を見つけるに至った。

「あら、良いじゃない、素敵よ。うーん、たぶん馬ね。上物だわ」

「そっかじゃあこれにしようかな。じゃあもう行こうか」

「え?服だけで良いの?お金もらっていきましょ」

「それもそうか、今は人なんだからお金必要だね」


適当な袋を見つけると金貨などを詰めていく。

色々と物色していると物置の奥から呻き声がするのに気付いた。

耳を澄ませる。どうやら山賊ではないようだ。

若い女の子の声、酷く衰弱した声。


「・・・誰?誰かいるの?助けて・・・助けてよ。もう嫌、嫌だよ」


そこに居たのは裸で手足を縛られた女の子。

体中アザだらけでその目は光を失っていた。


「君は誰?こんなとこで何してるの?・・・あ、紐ほどいてあげようか?」

「え・・・、本当に?・・・私、助かるの?」

「助かりたいなら助けるよ?」

「・・・助けて、ほしい。・・・ありがとう・・・ございます」


落ちてたナイフで紐を切ると女の子は自由となった。

「じゃ、そういう事で、僕たちもう行くね」

「待って!私、もう・・・怖くて。お願い、人里までで良い、連れて行ってください」

「うーん、クロー!この子連れて行って良い?」

僕はクロに声をかける。

「だめー」

クロから返ってきた返事はたった二文字だった。

「だめだって」


女の子はその場に泣き崩れてしまう。

クロも近くまでやってきた。

「どうしてダメなの?」

「私より胸が大きい」

「・・・それじゃあしょうがないね、諦めてもらおうか」

「こればっかりはやむを得ない事情よ」



僕とクロは山賊のねぐらを後にした。

その後ろから距離を置いて付いて来る女の子。とうぜん服は着ていた。

しかし慌てて探したのかだいぶ質素な布きれの様な服だった。





実は一人SAN値減り続けてます。

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