二人の関係
僕とクロ、そして妖精のチェルシーは黒山羊の描かれた教会にいた。
以前アリサが襲われ、そして逃げ出した場所の建物の中。
「ねぇ、クロ。前の黒フード達がいないようだけど、僕が殺したので全部だったの?」
以前アリサを襲い、僕がこの世から蒸発させた黒フードの男たち。
良い印象は無いが居ないと居ないで気になるのだ。
「まだいるわよ、指示があるまでは動かないわ」
「あいつらって人間なの?」
「そう、人間よ。邪神にすがる狂信者ども。私をこの世界に召喚したのも奴らよ」
「黒フードがクロを呼んで、クロが僕を呼んだって事か」
「そうなるわね」
「黒フード達がクロを呼ぶのは分かるんだ。でも、クロは何で僕を?」
「…それ…は。あなたがヨグソトースに転生した事を…知っていたから」
それはつまり、黒山羊の邪神であるクロは、同じく邪神の福王ヨグソトースでは無く、ただの人間だった僕の魂の方に用があったという事になる。
僕というちっぽけな人間の魂に固執した元人間のクロ。
そこから導き出される答えは僕だって容易に想像できた。
「クロは…、僕と同じ世界にいたの?しかも近しい存在だったの?」
「やっぱり覚えて無いのね。とは言っても私も完璧に元の記憶があるわけじゃ無いわ。具体的に言うと名前ね、自分の名前もあなたの名前も家族の名前も友達の名前も何もかも、何故か人名だけが抜け落ちている」
「名前だけ?僕の記憶なんて虫食いだらけだよ。食われてない記憶を見つける方が難しいくらい。…でも、確かに僕も人の名前だけは全くだ」
「クオンは元の世界に、元の家に帰る為に鍵が必要だと言っていたわね?」
「うん、鍵さえあれば家に入れると、何故かそう思った。それがどうしたの?」
「名前には存在を肯定する魔力があるのよ。名前が、鍵なのかもしれない」
「え?なんか簡単だね?」
「じゃあ、思い出してみなさいよ」
名前を思い出そうと記憶を辿る。
しかし思い出そうとすればするほどに酷い頭痛に襲われた。
頭が割れそうな程に、潰れそうな程に、それは耐えれる限界を超えた痛みだった。
「く、くおおぉぉおああ!これは…」
「ね、無理でしょ?」
「しかし、クロは元人間なのに色々知ってるんだね」
「人間だった時もオカルトとか好きだったけど…そうね、転生してからシュブニグラスの知識が少し流れ込んできたせいね。同時に人間らしさもだいぶ失われた気がするわ」
「僕にはヨグソトースの知識とか無いよ?」
「ヨグソトースよりも元のあなたの割合の方が多いのね。良い事だわ」
「その割には元の記憶もほぼ無いんだけど?」
「きっと…、元の世界のあなたの状況が要因だと思う…」
「元の世界の僕の事…、教えて」
「…ええ、そうね」
クロが語りだそうとしたが、その前にどうしても気になっている事があった。
世界を越えてまで僕に会おうとしたのだ、クロと僕の関係が気になって仕方ない。
「あ、その前に一つ良い?僕とクロってさ…、その、恋人だったの?」
「な、何急に。えー、えーーと。うん?いや…、えー?違う…わ?」
手をパタパタと動かし狼狽えるクロが少し可笑しくて可愛く見えた。
そして、だいたい理解した。友達以上恋人未満ってとこだろう。
「あはは、ごめんね」
「なんか不意討ち喰らった気分だわ…。まぁ、幼馴染みよ」
そして…仕切り直したクロが喋り出す。
元の世界で起きた事、二人の事。
読んでくれた人はチェルシーを可愛いと言ってくれます。
クロの可愛さもアピールしていきますよー!
そして次回は過去編になります。




