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転生したら玉虫色の球体でした  作者: 枝節 白草
第2章:港町に住まうモノ
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ダゴン

僕は妖精のチェルシーを呼び出すと、アリサと一緒に居るように指示を出す。

チェルシーを完全に信用しても良いものかどうかは分からない。

それでもアリサを一人にしておくよりは良いだろう。


「アリサは隅に居て」

「…はい、クオンくんも気を付けてください」

「僕が気を付ける事なんて、うっかりアリサを発狂させないかどうかだけだよ」


僕がチェルシーを呼び出したのもそれが目的だった。

チェルシーを見つめ、釘を刺しておく。


「チェルシー、分かってるよね。ヤバイと思ったらアリサの視界を塞ぐなりして精神状況に気を使ってあげてほしい」

「うん。でもさでもさ、もし頑張ってもアリサが発狂した場合私のせいじゃないよね?」

「そうだね、しょうがない事もあるよね」

「あー、良かった。うん、一応頑張ってみるよ」

「アリサが発狂したら僕がチェルシーを発狂させるけどね。しょうがないことだよね」

「ひゃああああ!アリサは絶対守るますですよーぅ!…うぅ、鬼だぁ」

「いや、邪神だよ?…さて、そろそろ狩るかな、ぞろぞろと増えだした」


洞窟に流れ込む海水の中から次々と魚面の混ざりもの達が上がってくる。

十、二十、三十。いったいどれだけ居るというのだろうか。

流石に苦笑いするしか無かった。どれだけ増えても脅威にはなり得ないというのに。


「だいぶ増えたね、そろそろ消さないと次が来れないんじゃないかい?」


僕の体が玉虫色に泡立つ。泡は無数の球体となって僕の回りを浮遊する。

本体の具現にもだいぶ慣れてきた、この玉虫色の球体も手足の様に動かせる。

そう思った自分に少し笑ってしまった、これは元々僕の体なのだから。


作り出した球体を飛ばして混ざりもの達をこの世から蒸発させていく。

僕の本体である玉虫色の球体に触れると次元がズレる。次元のズレが生む途方もない摩擦熱は化物であろうと耐える事が出来ずに次々と蒸発して消えていく。

現れては消し、消しては現れる。


「なんか、少しだけ元の世界を思い出すな。まるでシューティングゲームだ。これじゃあベリーイージーにも程があるけどね」


シューティングゲームに例えたが残弾数は無限だ。僕は本体の欠片を飛ばして混ざりもの達に軽くタッチしているだけで何も消費していない。

しばらくの間、混ざりもの達の体液が沸騰し蒸発して消えていく音だけが洞窟の中で静かに鳴り続ける。後からくる混ざりもの達は何が起きてるのか理解できていない。

同胞達の遺体は痕跡も残さずに静かに消滅しているのだから気付くはずも無い。


それでも混ざりもの達は次々と海水の中から這い上がってくる。

いい加減面倒臭いなと思い始めた時だった。

這い上がってきた混ざりもの達は急に潰れて息絶えた。

僕では無い。僕はまだ何もしていない。

潰したのは巨大な手の平だった。海水から出てきた巨大な手、指の間には水掻きがある。

その巨大な手が洞窟の中に手をつくと、更に巨大な上半身が現れる。

その顔は不細工としか言いようが無い程に魚のような顔をしていた。

混ざりもの達よりも更に魚感がアップした顔が笑いを誘う。


「ぷっ、あはははは。おまえがダゴン?間抜けな顔してるなあ」


その不細工で巨大な魚面は僕をジロジロと見つめる。

しかし魚みたいな目をしており焦点があってるのかは甚だ疑問である。

その魚の様な顔に付いた魚の様な口がパクパクと動き出した。


「ワシの顔を見ても正気だとはなぁ、それどころか笑いよるとは」

「喋れるんだね、なら自己紹介しておこうか。僕の名前はクオン、本当の姿は副王ヨグソトースと呼ばれる邪神らしい」

「なんとなんと、それはそれは、副王様であったか。人の魂が濃いゆえ気付かなかったわい。これは失礼した」

「僕の事知ってるの?」


殺す前に情報を聞き出す方が良いかもしれない。

僕は僕の事が分からないのだから。


「ああ、知ってるとも。むしろ何故あなたがワシを知らぬのだ」

「おまえみたいな魚人間知らないよ」

「ふむ、そうか、そういう事か。人の魂が混ざったうえに未熟体のようだな。いや、混ざったがゆえに未熟体なのか」

「人の…魂?」

「そう、我々は他の世界に召喚される際に贄が必要となる。どこかで拾った魂の中に副王様と馴染む者がおったのだろうて」

「贄。おまえは…もしかしてリヴァイアサンを?」

「ふむ、なかなかに鋭い。そうだ、この町に我々の信者が居たのだ。そして差し出してきた、自分達の町の守り神をな」

「それなら町の人達まで贄にする必要無かったんじゃないのか?」

「…、ふむ、そうもいかなくてな。リヴァイアサンが意外と胃にもたれるのだ。完全に取り込むためにまた力が必要になってしまった」

「ずいぶんと親切に教えてくれるんだね。これから僕に殺されるのに」

「ふむ、ふむふむ。上位の者に対する最低限の敬意は払わねばなるまいて。そしてあなた様がヨグソトースだと言うのなら万に一つもワシに勝ち目は無い。…だが、足掻くくらいはさせてもらおうか」


ダゴンは言い終わると同時に拳を振りかぶる。

しかしその矛先はクオンでは無くアリサに向かっていた。




実際に戦うのは次になりますね。

投稿遅くて申し訳ないです。読んでくださり感謝!

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