近くて遠い人
茶色い瞳が、まっすぐに僕を見つめる
彼女は僕が愛した人
今日も、彼女は鏡の中にいる
昔は手を繋いだ
抱きしめた
愛し合った
でも、僕らはもう二度と触れ合えない
いや、ある意味ではすべてが触れ合っているのか
僕が鏡の前に立つと、彼女はいつも微笑んでくれる
彼女に会いたくなったら、手鏡を覗き込む
いつだって僕らは一緒にいる
世界で一番近い人
けれど、世界で一番遠い人
やあ、と君に挨拶
君も手を振ってほほ笑んでくれる
こんな日常がいつも
いつまでも続いてほしいと願いながら
一方で、やっぱり君に触れたくて、何かが変わってほしいとも思う
でも、君がもし鏡から出てきてしまったら
君は僕を置き去りにして、きっとどこかへ行ってしまうんだろう
そう思うと、やっぱりこのままでいいやなんて
このままがいいやなんて、思うんだ
茶色い瞳が、まっすぐに僕を見つめる
彼女は僕が愛した人
今日も、彼女は鏡の中にいる
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