妹が消えた日
ピピピピッ、ピピピピッ……。
目覚まし音が鳴り響く。
目覚ましをかけた主・近藤佑治は、目覚ましを手で探している。
ようやく、めざましが見つかったらしい。
…………………カチッ。
停止ボタンを押し、再度寝ようとした……その時。
ガラッ……!!
「お兄ちゃーん!!観念して起きろぉー!もう、7時だよぉー!」
長い黒髪を一つで結った、制服を身にまとった少女が布団に乗っかってきた。
「起きろぉー!お兄ちゃん〜!!お腹すいたぁー!」
「んー。あと二分寝かせてくれ………」
「いやだ!早く起きてご飯作ってくれよぉー!」
どんだけ腹が減ってるんだ……?
内心、クスッと笑いながら、起き上がった。
「お兄ちゃん。おはよう!」
「おう。おはよう、花奈」
妹の花奈と兄の佑治は、そう言い二人でリビングへと向かった。
リビングに着き、すぐさま花奈はソファーに倒れた。
「お腹がすいたぁ~」
花奈の口から魂らしきものが出ていたのを発見したが、佑治は無視し、エプロンを身に着けた。
そして、冷蔵庫の中身を確認して今日の朝食の献立を考える。
「んー。卵があるから目玉焼きにするか。あと、ウィンナー焼いて……」
「お兄ちゃん!」
「何だ?」
「デザートに、ぜひチョコ菓子を作って!!」
「そんな暇はねえよ!板チョコでもデザートに食っとけ」
「ちぇー。お兄ちゃんのいけず……!そんなんだから……(以下略)」
「お前、今何を略した……?」
佑治は妹が略した内容の意味を、怖いオーラを漂わせながら問いただした。
「そんなんだから、いつまで経っても彼女がいないんだよ(笑)」
「ほお、ほお………。お前、今日は朝メシも板チョコも無しな!」
「ヒドイ!お兄ちゃん!」
「お前もひどいだろっ!」
「ちぇっ……。謝ればいいんでしょ。ごめんなさい」
「お前…………」
プチ、プチ、プチ、プチ、プチ……。
「ずいぶん前に流行した物で遊んで言われると、説得力ねぇぞ?」
「あ、バレた」
「バレるわ!アホ!」
カチッ………。
時計の針が微妙にずれていることに気づき、慌てて朝食の仕度へと取りかかる。
ポチッ………。
花奈がテレビをつけ、ニュースを見ていた。
最近、物騒な事件が多くなり、辛くなった。
「次のニュースです。今朝、行われたチョコ裁判ですが……」
_______ん?"チョコ裁判”?そんなのあったのか?
「お兄ちゃーん、テレビが壊れたかも。急にノイズが入ったー」
「はぁっ?!最近、やっと買えたテレビが壊れただと?!」
俺は妹の言葉に驚き、コンロの火を消してテレビの方へと向かった。
「本当だ………。おいおい、砂嵐まで起き始めたぞ……?!」
「えー、最悪ー!」
「とりあえず、これ買った所に、後で電話しとく……」
何かがおかしい…………。
そう思った瞬間………………!
「お兄ちゃん!!」
「花奈!!」
妹が、テレビに吸い込まれてしまっていた!!
「花奈!手を伸ばせ!!」
「助けて………。お兄ちゃん!!!」
「花奈ぁぁぁぁっ!!!」
俺の意識は、突如、暗転した。