魔獣ジビエを手に入れろ-4
日本でも度々問題視される竹害は竹の繁殖能力の強さと笹の葉等にある他の植物を枯らしてしまう様な力が原因となる。しかし、この世界の竹は繁殖力は同じかそれ以上であるが、他の植物を寄せ付けない為の力が劣っているのである。この為マツリカが言うには竹を保護しながら別の植物を駆逐するという宗教がある程尊い植物らしい。まぁ、マツリカは馬鹿馬鹿しいと言っているのだが。
さて、そんな竹槍罠の材料となる竹と薬の材料として使われる笹の葉をこの辺りで手に入れるのは非常に難しい為、代案を考えた結果、鉄パイプの様な物が採用される事となる。だがそれはこの先に存在する鉄製の罠を鍛冶で作る物が一つ増えるという結果となったのだった。
「……しかしお主等の世界は便利なのかそうでないのか分かり難いのぉ。竹は繁殖して使い放題じゃが、若者が鍛冶を行う習慣も無いとは。鍛冶をやる事は幼子には危険な事じゃが慣れれば自分好みの物も作れるのじゃぞ?」
「いや、元の世界でもやりたくないわ。大体、なんで鍛冶ってこんなに暑いのよ……。」
「情けないのぉ。この位の暑さでヒィヒィ言っておるとまたボーボアに吹き飛ばされるわい。」
大橋達は滝の様に流れる汗を拭いながら熱した鉄を叩く。エストとの訓練により熱さには慣れているため恐る恐る叩く事は無いが、暑さには体が追いついていなかった。というのも自作ダンジョンでアルティメットゴブリンと対峙している際は日の当たらない場所だった為、大橋達は久しぶりに真夏の暑い日の感覚を味わっていた。
「昔体験学習で入ったビニールハウスの中よりも暑い……。」
「まぁあの時はまだ六月でしたからね。本格的な夏に入るのと夏の様に暑いときに入るのとはまた違いますからね。……しかし鍛冶ってただ叩いていれば出来る訳じゃ無いんですね。」
「最近は鍛冶の工程なんて漫画や一部の小説でも軽くカットされるし、仕方ないんじゃ無い?なんで料理をするムービーが現存しているのに鍛冶は1回叩いてホレッて感じなのかしら……?」
「ビニールハウスとは何の事かえ?なんとなく便利そうな響きなのじゃが……」
『確かに気になりますね。これを量産できれば……。』
「「せめて冬用の物でお願いします夏のアレは地獄ですから!」」
一応慣れるとそうでも無いのだが、その辺りは1回経験しただけの物には分からないのだろう。ただ、ビニールハウスは規模を大きくする毎に張り替えなどが大変になるので最初は小型の物をおすすめされると思う。
『取り敢えず自給自足でも目指しますか?どうせ暫くはあの者達の足下にも及ばないそうですし。鍛えている間の副業としてやっておきましょう。』
ファイズはそう言った後、鉄パイプ作りと狩りの授業を同時にやらされる大橋達に同情すらせず、ビニールハウスの為の骨組みを作り始めるのだった。




