トランプマンカラべー-1
結局の所、ファイズは手札に恵まれずに負けてしまっていた。最初は人知れずイカサマをしている事を何度も考えたが、毎回新しいトランプで全く違う並びの物を使っている為、漫画等で出てくるような形で合法的にカードを理解する事も出来ない。なぜ負けてしまうのかが分からないまま、ファイズは負けを認めるしか無かった。
「……やっぱり機械と戦ったとしても勝てる物だねぇ。演算の先を行く事くらいやれないといけないのはつらいんだけどねぇ……。」
『……まさか、演算のさらに向こう側を見通すのですか……。ただ、負けたまま帰りたくありませんね……。』
半分本気半分冗談のマルフの言葉を真に受けながらも、ファイズはマルフが新たに出してきたゲームを確認していた。そのゲームをする為に用意されたのは横6×縦2の窪みと両端に大きめの穴がついた箱と、48のおはじきが入った袋、1~6まで構成されたトランプだった。
「元々このゲームは何通りものゲームがあるんだけど、本物のルールよりも簡易版のルールの方で慣れちゃってね……。」
『……どんな……ゲームですか?』
「簡単に言えば自分の陣地からおはじきを全て無くした奴が負けってゲームかな?」
『……なるほど。』
「そのルールはベーシックって感じで表現されていたし、本来のルールじゃないからマンカラべーって呼んでるんだよ。本来の名前、マンカラにベーシックのべーをつけてね。で、トランプを使うのはギャンブル性を上げる為かな?」
マルフはそう言いながら準備を始めていた。ただ、ファイズはマルフという人間の底知れなさに少しだけ恐怖を感じていた。実際、ファイズには優れた演算能力がある為にデータの許容範囲を超えた者には弱い。アベルにも同じ様な理由で敗北し配下に付いている為、その事実は覆らない。
ただ、ギャンブルというのは純粋な戦闘と比べればパターンは非常に少ない物だけに限られている。だが、これは理屈であって真実では無い事をファイズは理解しつつ、改めて席に座っていた。ちなみに、周りにいる人間達は新しいギャンブルというエキビションマッチを見ている感覚の為に誰も何も言ってこない。
『……貴方は、イカサマを仕掛けている事なんて無いですよね?』
「こんな観客がいる中で出来る訳ないじゃないかねぇ。なんせ私は手品師じゃない。どちらかというと詐欺師や商人といった方が良いからね。」
マルフはそう不適に笑いながら、オリジナルとも言えるルールを追加したマンカラこと、トランプマンカラべーの説明を始めたのだった。




