この世界のホテル事情-3
最初にこの世界の宿のクオリティが低い理由は食料の確保が難しいからである。現在のホテルでは朝食をバイキング形式にする所も多い。これはビジネスホテル等でもよく見られる為、朝食が出てくる事=ホテルの常識となっている事も少なくない。
また、この世界の住民達の朝は早い。これに関しては24時間フル稼働に近いファイズや朝昼晩に疎いマツリカやトキトウ等の長寿する種族の者達は微妙に当てはまらないが……基本的に宿を出るのが朝の5時等になり得る事も少なくないのだ。
この事からサービスが悪いと言われている事が多いのである。まぁ、モンスターという存在がいるこの世界といない世界である日本の事情は全く違うのである。その為普通なら時間いっぱい滞在しそうな商人等もモンスターがまだ寝ている早朝を狙って出発するのである。
また、この世界は日本の様な車や電車、飛行機や自家用ジェット等があったとしても広すぎる世界である。それに殆どの国で道が舗装されていない、道が狭い等の問題点がある事からホテルはあまり喜ばれないかもしれない。その事に先に気付いたのはマルフの方である。
部下の宿泊用の為にホテルを作る事を思いついたファイズ達と違い、ビジネスとして考え出したマルフはホテルを必要とする理由に関して旅人や行商人、冒険者にどうアピールすべきかについて考えていた。その結果、最初に作り出したのはバイクである。
これに関しては剣城とのギャンブルで手に入れた事で手に入れたガチャでバイクを出した後、それを参考に試作品を作成していた。このバイクの動力源は魔除けに使われるアイテムであり、排出するガスにより移動が楽になっている。また、サイドカー付きの物も改造したりしている為、狭い道を移動しやすくしている。
これを使う事によって行商人達の出発時間を遅くする事が出来ると考えていた。というのは冒険者達との兼ね合いである。魔除けの排気ガスで冒険者達の討伐するモンスターが逃げてしまう可能性があるからである。
「……しかしこれ、燃料が手に入りやすいのは良いけどメンテナンスが大変ね……。」
「無理矢理燃料にして排気ガスとして出してますからね。大気汚染という物にはなりそうに無いですが、内部がかなり汚れやすいです。これで故障したりとかもあるので……」
技術者と話をしながらマルフは次の課題について考えていた。ただ、これに関してまだ競争する者を認識していなかった為、のんびりと話している。それが後にあんな風にぶつかる事になるとは誰も予想しなかったのだった。




