VSアルティメットゴブリン エスト編-1
トキトウの訓練が始まってから1週間が経過した頃、ファイズがダンジョン産の新種モンスターとしてアルティメットゴブリンというゴブリンを作成していた。このゴブリンは普通のゴブリンの進化過程を無視させながら強化する事で産まれるゴブリンであり、より高い知性と身体能力、戦闘技術を持っていた。残念な事に声帯は強さの犠牲となり、グギャゲギャとしか喋られないので戦闘面以外での知性は低く見られがちになってしまっている。
そんな新種モンスターの試運転も兼ねてトキトウは彼女達にアルティメットゴブリンと闘わせる事にした。ここまでトキトウは彼女達の経験の乏しさが目立つ事が気になっていた為、ファイズの試運転の頼みを軽く引き受けたのであった。
大橋達はこれまでの間、何も出来ないまま敗北するか、圧倒的な力で勝利するという事ばかりであり、あと一歩の所で敗北という様な強さが無い為、酷く苛立つことがあった。勝てる相手なら兎を追う様に常に全力で、勝てない相手なら全力を出し切らぬまま諦めると言ったパターンが非常に多かったのである。
この結果、彼女達のペース配分というか燃費効率は酷い。R以上確定としか書かれていない10連ガチャを課金で回し続けるレベルで悪いのである。R以上と書かれたガチャは基本的にR以上に当てはまるRばかり出てきてSRが1個出る確率すら低いのである。こう例えればトキトウの怒りも理解して貰えるだろう。
ちなみに、トキトウはスマホもといガチャの存在を知らない。武器などは何年前かは忘れているが父親から貰った事だけは確定しているアイテムBOXの中に入れていただけである。まぁ、この訓練が終わればトキトウも貰えるだろう。だが、それを知らないトキトウは訓練を開始するために「どれにしようかな」という形で最初の挑戦者を選んだ。
そんなこんなでダンジョン最初に放り出されたのはエストである。彼女はトキトウが作ったヨーヨーを合計20程持ってダンジョンの床に転がっていく。というのも本来は階段であった筈のダンジョンの入口は、脱出不可能とする為に坂と化していた。元々つるつるな床の上に油等の滑りやすくなるタイプの液体が流れている為にアルティメットゴブリンをなんとかしなければ戻れないと悟ったエストは早速アルティメットゴブリンのいる広間へと向かった。
ちなみに、アルティメットゴブリンのスキルには彼が究極という名を持つに相応しい能力を持っているのだが……それはエスト達が倒せるようになるべき相手の力を模倣した物である為、トキトウは残った4人に文句を言わせないのであった。