魔法の杖を作るために拉致された人-2
「そもそもこの世界では魔法を使うのに杖が必須では無い事は分かっていただろう?なぜ物理武器として見ないんだ?」
トキトウは足をすくわれて盛大に転んだ大橋達5人組を見下ろしながらそう言っていた。実際に彼女達は杖を触媒に魔法を使った事が無かった。アベルはクロスボウから氷の矢という形の魔法を使っており、自分達もこれまで魔法の杖を使わずに魔法を使っていた事を思い出していた。
トキトウが言いたいのはか〇はめ波を撃つ際にキャラ達は杖を使っているか?いや、違うだろうという事となる。
「そんなわけでこれからは徒手空拳だけでなく、ある程度の武器も使用できるように訓練していく事になるのじゃ。まぁ、杖が無くとも強くなれるが、お主等には魔法以外の戦い方も必要じゃろう。特に大橋。お主は武器による物理攻撃がより重要となる立場じゃからな。」
魔法主体過ぎてこれまで戦闘用の体術の訓練をあまりやっていないエストとドラッヘナー姉妹、徒手空拳がメインの瑪瑙と比べると、最初はひたすら体術系の訓練を行っていた大橋が重要な立場にいる事になるのは決定事項だろう。
ただ、大橋は魔法の杖で無く、魔法その物を武器として維持させる方が良いのでは?とトキトウに問いていた。実際、彼女が暫くの間供に旅をした相手である剣城は武器を取り出すよりは武器を創り出す方が多かった様にも感じていた。
「お主の言う人間の実力は……お主と格が違いすぎるな。」
「それは分かってるわよ。でもこっちのやり方ならより応用性が……。」
「無理じゃよ。お主は理解しておるのか?イメージする事の難しさを。少なくともこの世界の事も、これまで生きてきた世界のことも、深淵まで調べ尽くそうとは思っとらんじゃろ?どんな理由であれ、好奇心と知識が無ければお主の言う奴が出した武器1つの持ち手すら作れんじゃろうて。」
「……それは、そうかもしれないけど……。」
「何より、イメージだけで作られた物は脆い。イメージした武器で相手の攻撃を受け止めると思ったよりも簡単に砕け散るぞ。見かけ倒しの攻撃であっても武器が破壊されたと思い込まされれば武器は消えるのだからな。」
これまで負けや圧倒的な実力の差を何度も経験した事のある大橋にとって、攻撃を受けた後のイメージはネガティブになる事が多かった。ダンジョンを攻略していた際には勝ち星を着々と増やしていたが……図星を突かれた大橋は素直に魔法の杖を使うことを了承していた。
ただ、この時から彼女達は自分の使える武器という物を探すための訓練をトキトウと行うのだが、それは思う以上にハードである事をまだ知らなかったのだった。