魔法の杖を作るために拉致された人-1
「……まぁ、たまには圧倒的な負けを味わえんからのぉ……。死んでたら文句を言っておったが生きておるんじゃったら文句は言わん。しかも質の良い魔強木を持ち帰ったのは褒めてやるのじゃ。ちゅーわけで暫くここを空けるからの、ダンジョンで訓練しておくのじゃ。」
ラビネアから帰ってからすぐにマツリカは魔強木を入れたアイテムボックスを片手に何処かへ出かけていった。ちなみにそれから数日はファイズとバルボアの2人で大橋達5人の訓練を行っていた。ダンジョンの試運転に近い物も終了し、ファイズ作の鬼畜コースをプレイさせようという話が出たところでマツリカがエルフの様に長い耳の男性を連れて帰ってきた。
「……エルダーエルフのトキトウだ。何故ここに連れて来られたかは分からんがよろしく頼む。」
「ちなみにお主等の新しい教官でもあるのじゃ。折角質の良い魔強木を手に入れたのじゃ、ここは魔法の杖作成の神として有名な奴を連れてくるのは普通じゃろう?」
「普通の奴は管理している世界樹の分木を爆破しねーよ。まぁ、枯れかけていたから深い影響は無いがな……せめて枯れきるまでは待たせろ!心の準備が出来ていない奴等の心臓何分か止まってたぞ!普通に蘇生したけどな!」
やや苛つきながらマツリカから視線を外したトキトウはエストを見るとヘラッと笑って返していた。森の中で暮らす者であるのにも関わらず花粉症を患った私の過去を知っているのか?とエストが突っかかると、トキトウは笑いを堪えようとして逆に笑みを浮かべている様に見える顔でこう言ったのだ。
「あぁ、すまんなパンドラ。昔の事を思い出したらのぉ……」
「私の名前はエストだ。パンドラなんて名前では無い!」
「……そうか。すまんな……いや、花粉症という事だけしか覚えておらんかったからのぉ……。薔薇の花粉はもう平気なのかの?」
「私の花粉症は木の花粉だ!花の花粉では無い!」
「……調子狂うのぉ。まぁ、顔を覚えておらんのが悪いんじゃがの。」
トキトウはそう言った後、5人にある問いをしていた。
「ところでお主等、魔法の杖とは何武器だと思う?」
「普通に魔法攻撃系でしょ!?」
「そうですね。物理には使いませんよ。」
「魔法メインの!」
「遠距離ウェポン!」
「それが普通の答えであろう?」
5人の回答を聞いたトキトウはハァ……とため息をついた後、自分の愛用している杖を取り出した。イメージ的にはご老公が持っている様なタイプの杖と思って貰うと良いだろう。トキトウはその杖を軽く一振りして大橋達5人の足下をすくって転ばせていた。
「何を言っておる。魔法の杖という物は……物理特化型の武器じゃろーが!」
魔法の杖という単語をまるで無視した様な言葉に大橋達は驚愕していた。しかし後の訓練でこれが本当である事を知る彼女達は、あの頃は若かったとこのシーンを思い出すことになる。だが、それはまだ遠い先の話なので割愛しておく事としよう。