ラビネア制圧-4
「……つまり、黒華鉄を裏切ってアベルという男達の一味になったわけか?」
「それで合ってるわ。まぁ、人質を取られていたから仕方なかったのよ。幸い、これで殺されずに済んだわけだし。あそこで裏切らなかったら簡単に殺されていたわね。」
現状確認という事でこれまでの事情を話した大橋を黒木はため息を付きながらも肯定していた。実際この領主になってからやたらと面倒な事に成っていたのは事実なのだ。特定の迷宮の中に長居できなくなってしまった為、彼等は数日に1回は泊まる迷宮を替えなければならなかったのである。
「ただ、黒華鉄達を圧倒した事を考えると傘下に入っておく方が良いだろうな。少なくとも敵対する意志は無いと伝えれば良い。」
「……まさか魔王の子供の配下に入るおつもりで?」
「少なくとも敵対する意志を出した瞬間に殺される事は分かっている。師匠の弟が何も手を出せなかった事も含めれば配下の者達も俺達が束になっても勝てないと思っておいた方が良い。」
黒木はアリアマリンを説得していた。配下の弟子的なポジションの大橋達には余裕で勝てるものの、それよりも遙かに強い者達には勝てない事を悟ったのだろう。少年漫画ならば無謀にも挑んで敗北するという事になっても問題ないかもしれないが、現実で考えると配下に下るのは悪くなく、過干渉で無いならばむしろ得策と言えた。
「だが俺達は直接配下になる訳では無い。どうせお前達は前にいた場所に戻るんだろう?それに新顔がデカい顔する事は出来ないだろう。後、磔になってる奴等もな……。」
「じゃあ誰が領主……管理人になるのよ?」
「取り敢えず後継者が出来るまでは俺が引き継ごうと思っている。転生してから長い時間いた分信用はされているしな。」
黒木はそう言いながら大橋達が集めていた資料からある冊子を手に取った。それは管理人が変わる前の規則が書かれた物であり、管理人にばかり利が出る規則を壊すのには打って付けの一冊だった。
「……まぁ、お前達の所属している組織には従うつもりだが……お前達には罪を償って貰おうと思う。クズと呼ばれ続けたとはいえ、一応は管理人をしていた奴を殺したんだからな……。」
黒木は往復ビンタで瑪瑙とドラッヘナー姉妹を起こした後、魔強木の伐採と回収を言い渡された。まぁ、余っていた革袋タイプのアイテムBOXを渡していたので持ち帰ることは可能なのだろう。
「ちなみに切り株残しているとよりデカくなるからちゃんと引っこ抜くんだぞ。」
そう告げられた彼女達は暗い顔をしていたが取り敢えず命は助かったと安堵するのだった。助かっているのはあくまで命だけなのだけど。